収益物件を販売する不動産会社の営業マンのセールストークには、
「団信加入で生命保険の代わりになりますよ」
「節税ができますよ」
といったものがあります。
どれもウソではありませんが、その言葉を鵜呑みにして何も検証せずに購入してしまうと、
・ 思ったように収益が上がらない
などと、後悔することになります。
なかでも、節税目的で不動産投資をするのは、特に危険です。
目次
不動産会社の営業マンが言う節税とは

不動産投資における節税と言えば、
・ 所得税
・ 住民税
といった節税がありますが、不動産会社の営業マンが言う節税とは「所得税・住民税」の節税です。
ここでは法人ではなく、個人で給与収入がある人を例にあげてお話します。
個人で収益物件を購入し、家賃収入が発生すると、
となり、所得を申告することになります。
マイナスの場合は、損失として申告することができます。
不動産賃貸業を個人で行う場合は、その不動産所得と給与所得を合算することができます。
また、損失も同様に給与所得と合算することができます。
これを「損益通算」と言います。
損失が出た場合
損失が出た場合は、給与所得から損失分がマイナスとなります。
そのため確定申告すれば、年末調整で支払った所得税・住民税が還付され、節税ができるという訳です。
節税してお金が戻ってくるのは嬉しいものです。
特に収入が多く、所得税・住民税の支払いを高額だと思っている人に、この節税というキーワードは効くわけです。
節税は最初の1年だけ

この節税スキーム、実は1年目だけしか効果はありません。
例えば、1,800万の新築ワンルームを金利2%・フルローン・35年で物件を購入したとして考えてみましょう。
・ 家賃収入 … 月7.0万
・ 管理費・修繕積立金 … 月1.2万
・ 賃貸管理費 … 0.3万
購入諸経費として、
・ 不動産取得税15万
・ 減価償却20万
程度とします。
新築ワンルームの場合は、デベロッパーから直接購入するので仲介手数料などはありませんが、仲介手数料は経費には参入できません。
初年度と2年目以降の節税効果
初年度の収支は、
1年目は給与所得より、不動産賃貸業の損失-66万を引くことができたので、大きな節税効果がありました。
しかし、2年目は同じ条件だと、損失6万と減価償却20万の-26万だけとなります。
初年度は大きな節税効果がありますが、2年目以降は節税効果が減ってしまいます。
節税目的の不動産投資が危険な理由

年間数万円の節税のために、不動産投資で損を出すという考え方は実は非常に危険な考え方です。
本来は、不動産投資ではきちんと利益を出し、出た利益に対して節税を行うべきです。
損を出して節税するということは、不動産投資自体に失敗している可能性が高いと言えるのです。
せっかく不動産投資をするのに、節税できても最終的に損をすることになれば本末転倒です。
今回例にあげた新築ワンルームの場合、新築プレミアムで物件価格も賃料も高い状態にあります。
最初は空室率も少なく、賃料も高い状態をキープできると思いますが、築年数が経てば家賃は下がり、周りに新築でもできようものなら空室期間も長くなります。
年間家賃が毎年1%下落した場合
例えば、年間家賃が毎年1%下落すると考えると、10年後の年間収益は大幅に減ることになります。
1年目は不動産の損失は-6万でしたが、10年後の家賃は6.3万まで下がり、年間の収入は-14.4万。
このときの物件価格は、収益還元法で利回り7.0%で売れるとすると、年間75.6万÷0.07=1,080万と10年で720万も下がってしまいます。
30年後には、5万くらいになると考えると利回り8.0%で売れるとしても750万。
最終的に利息を含めて2,500万程度返済して、750万の物件を手に入れたということです。
年間数万円の節税のために「1,750万」も損をする
年間数万円の節税を行うために、1,750万も損をすることになります。
こういった物件を買ってしまうと資産を増やすどころか、資産を減らすことになってしまいます。
やはり、不動産投資では、節税目的で物件を購入するのではなく、まずは利益の出せる物件を購入することが大事だと言えます。
利益を出した上で節税を

税金を払うということは、不動産投資で利益を上げているということです。
節税目的の不動産投資は、損をして少ない還付金を得ているだけで、資産は目減りしていると考えるべきです。
やはり、不動産投資では利益がきちんと出る物件を購入し、資産を積み上げていくべきであり、その上で経費を計上したり、節税を検討すれば良いと思います。
これから不動産投資を始める方は、節税ではなく、まずは利益を上げて納税することを目標に物件選びをしてください。
それが不動産投資で成功するための近道です。(執筆者:山口 智也)