配偶者控除や扶養控除は、対象者の所得金額が38万円以下(令和2年以降は48万円以下)の場合に適用できる控除です。
所得税で使用する「所得金額」には、「総所得金額等」と「合計所得金額」の2種類あり、配偶者控除・扶養控除の判断基準となるのは「合計所得金額」です。
所得を合計するのは双方とも同じですが、1点大きな違いがありますので解説します。

目次
「総所得金額等」とは繰越控除後の金額
「総所得金額等」とは、繰越控除を適用した後の金額を合計したものです。
繰越控除とは、昨年以前に発生した損失金額を繰り越している場合に適用できる控除で、株の売却損を繰り越した場合に利用できる制度などがあります。
繰越控除の種類
・ 純損失や雑損失の繰越控除
・ 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除
・ 特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除
・ 上場株式等にかかわる譲渡損失の繰越控除
・ 特定中小会社が発行した株式にかかわる譲渡損失の繰越控除
・ 先物取引の差金等決済にかかわる損失の繰越控除
「合計所得金額」とは繰越控除前の金額
「合計所得金額」とは、繰越控除を適用する前の金額を合計したものです。
たとえば、
となります。
また、不動産売却時の3,000万円特別控除などの特例を適用する申告では、合計所得金額は特例適用前の金額で判断します。
配偶者控除や扶養控除の所得は「合計所得金額」で判断する
配偶者控除や扶養控除の判断基準となる所得金額は、対象者(配偶者や扶養親族)の「合計所得金額」です。
たとえば、配偶者が「上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除」(株の売却損の繰越控除)を適用している場合、繰越控除適用前の金額(本年の株の売却益)で配偶者控除の判定を行います。
そのため、
※ 配偶者控除は、合計所得金額は38万円(令和2年以降は48万円)以下が要件
配偶者や扶養親族が株式投資をしている場合には要注意
株の売買を証券会社の特定口座(源泉徴収有)で取引している場合、利益や損失の計算は証券会社がしてくれますので、原則として税務署への申告は必要ありません。
ただし、株の売却損を翌年に繰り越したい場合には、確定申告による手続きが必要です。
株の売却損の繰越制度は、翌年の利益を相殺し所得税の支払いを少なくする節税制度です。
しかし、合計所得金額は繰越控除前の金額で判断しますので、配偶者や扶養親族が繰越控除を利用する申告をする際には注意しましょう。(執筆者:平井 拓)