2020年4月8日にコロナ禍による緊急事態宣言が出され、私たちの日常にも大きな影響が出ています。
経済の停滞に伴い、倒産や失業などの問題は今後さらに深刻化すると思われます。
それでは離婚した元配偶者が、経済状況の悪化を理由に養育費の減額を求めることは認められるのでしょうか。
このような予測不能の事態において問題になります。

目次
認めざるを得ないケース
養育費の支払い期間は場合によって20年以上の長期に渡ることがあります。
しかし互いの環境、事情の思いがけない変化による減額の申し入れには、受け入れざるを得ない場合があります。
(支払い側の)失業・廃業
通常であれば問題なかったはずの会社が倒産したり、自粛による経営難で自営業を廃業したりで失業すると、本人の収入が途絶えるのですから払おうにも払えません。
仮に結婚生活が続いていたとしても、収入がなくなるのは同じですからやむを得ません。
収入の減少
これも大いにあり得る事態です。
自分の生活がやっとという状態で養育費まで回せなくなるのです。
全ての人には日本国憲法で「最低限度の文化的生活」をする権利が保障されており、仮に元配偶者の給料債権に強制執行をかけても、正味の収入の1/4までの部分しか対象にならないので、結果として減額となる可能性が大きいのです。
支出の増加
思いがけないケガや病気による出費というのが一般的ですが、今であれば個人事業主が現状の経営を維持するための出費(仕入れ額の高騰や、働き手の賃金を上げるなど)の増加も当てはまるかもしれません。
可能であれば話し合いを

これらは、実際に支払う側の申立てにより、たとえ公正証書で養育費の取り決めをしていたとしても、家庭裁判所がその減額もしくは免除を認めることのあるケースです。
養育費を受け取る側の生活の維持も同じように大切なのはもちろんですが、払いたくても払えないものはどうしようもないからです。
上記のように誰をも責められない状況で相手方が養育費の減額を打診してきた場合、「約束だから今までと同額を払え」と拒絶するのは得策ではありません。
話し合いができず家裁に持ち込まれれば、結局減額になるかもしれませんし、確実に互いの関係も悪化します。
最悪の場合、突然連絡も支払いも途絶えてしまう怖れがあります。
相手が打診するということは、できるだけは支払いたいという意思の表れです。
子供のためにも冷静になって話し合いに応じることです。
その方が、今後状況が好転した際に再びの増額についても切り出しやすくなるでしょう。
なお、自分の都合での退職や廃業、放漫な経営による倒産や収入減少による支払減額は、当然ながら認められません。
失業しても他に十分収入がある場合も同様です。
便乗されないように注意してください。(執筆者:行政書士 橋本 玲子)