日本の高齢化率は上がり続け、それに伴い介護サービスの利用者数も増加しています。
加齢や疾病等により日常生活を送ることが困難になった際に、介護サービスの利用を検討する人は多いのではないでしょうか。
介護サービスの利用料金は事業所によって多少異なりますが、同じ内容のサービスを利用するのであれば少しでも料金が安い方がよいと考えるのが人情です。
そこで今回は、社会福祉法人が実施する介護サービスを利用する際に活用できる利用料の負担軽減制度を紹介していきたいと思います。

目次
介護サービス提供事業所について
介護サービスの提供事業所といっても、昔ながらの介護福祉法人から株式会社が運営する介護事業所までいろいろあることにお気づきでしょうか。
介護保険法が成立する前は、介護サービスは利用する事業所を行政が決めていました。
そのサービスを利用者が利用する「措置」という形で実施されており、国から認められた社会福祉法人や自治体によって提供されるものでした。
しかし、2000年に介護保険法が開始になると制度が変わり、利用者は自分の利用したい事業所を選べるようになりました。
この時から介護サービスの提供が民間の企業でも可能となり、現在では社会福祉法人はもちろんのこと、株式会社や有限会社なども規定を満たせば介護サービスの提供ができるようになりました。
その結果、介護サービスを提供する事業所が広がりをみせています。
民間企業が提供する介護サービスは事業所によって特色はあるものの、基本料金やサービス内容は社会福祉法人が行うサービスと同じ内容を提供できる規定になっているので、安心して利用できます。
一方で、社会福祉法人が運営している介護サービスにはちょっとお得な制度が用意されています。
社会福祉法人等には利用者負担軽減制度事業がある

社会福祉法人等を利用する場合には、利用料の一部が軽減される「利用者負担軽減制度事業」があります。
社会福祉法人とは、社会福祉事業を行うことを目的として設立された団体であり、公益性が非常に高いものであるとされています。
が整備されています。
その内の1つが、社会福祉法人等による利用者負担軽減制度です。
利用者負担軽減制度の利用条件
この制度を利用するための条件は次の通りです。
・世帯員の預貯金額が一定以下であること(1人世帯では350万円以下、世帯員が1人増えるごとに100万円増加)
・それら以外に生活に資する財産がないこと
これらの条件に該当することが認められた場合には証書が発行されます。

発行された
してもらえます。
減額される料金は、いったん支払ってから還付を受けるものではないので金銭負担感の軽減になります。
ただし、こちらの利用者負担軽減制度事業を市町村に対してこの制度の活用の届け出を行っていない事業所もあります。
社会福祉法人が行っている多くの事業所がこの制度の対象ですが、利用契約の前に担当ケアマネジャー、もしくはその事業所に直接確認することをおすすめします。

制度を利用する際の注意事項
最後にこの制度を利用するうえでの注意事項がいくつかありますので、お知らせしておきます。
注意1:所得の確認をする
前項で示した通りこの制度を利用するためには所得制限があり、一定額以上の所得がある方は対象外です。
「所得は年金収入しかない」という方であっても、保険金の受取りや相続等によって一時的に収入が増えたり、預貯金額が増えたりすることがあるかもしれません。
そのため、この制度を利用するには更新が必要であり、その申請は自分で行わなければなりません。
注意2:更新を忘れずに
更新を忘れてしまい、そのまま介護サービスを利用した場合にはこの制度の活用はできません。
証書の有効期限は毎年7月末と決まっています。更新の通知はその1~2か月前に届きます。
その通知を受け取ったら忘れずに申請するようにしましょう。
注意3:過去に介護保険料の滞納がないか
また、過去に介護保険料の滞納があった場合には、この制度を利用できないことがあります。
もし、介護保険料の滞納をしたことがある場合には、あらかじめ住所地のある市町村の担当者に制度を利用できるかを確認しましょう。
制度の活用が不安や負担を軽減する
介護サービスを利用するにはお金がかかり、しかもそれがいつまで続くかは分かりません。
金銭的な不安や負担を少しでも減らしていく努力も必要かもしれません。
そのお手伝いをするのもケアマネージャーの役割の1つです。安心して介護が続けられるように活用できる制度は活用していくことです。
忙しいそうにみえるかもしれませんが、悩みや困りごとがあったらケアマネージャーだけではなく、身近にいる介護スタッフに気軽に声をかけてみてくださいね。(執筆者:老人ホーム施設長 佐々木 政子)