2020年6月現在、海外投資家は香港の情勢を注意深く見守る必要がでてきました。
特に米国市場に上場されている中国株ADRに注意が必要です。
アメリカの株式市場では現地の企業だけでなく日本やイギリス、台湾、ブラジル、インドなど世界中の企業の株式が上場されています。
例えば日本でおなじみのゲームメーカーの「任天堂」は「NTDOY」としてナスダック市場に上場されています。
米国には米国以外の国の証券を上場できるADRという仕組みがあります。
そのため米国市場で取引すると米国以外の世界中の大企業の銘柄が買えます。
しかし現在、米国と中国との国際関係が香港を巡り不安定になっています。
その影響で米国が経済制裁の措置として、「中国企業の米国上場を廃止するのでは」という観測が広まっています。
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目次
香港が国家安全法の導入で大混乱
香港の国家安全法の導入は何が問題点は
・ 香港で中国政府を批判したら直接、中国政府に裁かれる恐れがあること
香港は1国2制度で統治されています。
中華人民共和国でありながら高度な自治が認められています。
例えば司法・立法・行政が中国本土から独立しています。
流通している貨幣も中国本土の人民元ではなく香港ドルです。
しかし香港が実質、中国本土に完全に取りこまれることを米国は強く批判しています。
そして米国は民主主義・資本主義だからこそ認めている香港に対するさまざまな優遇措置の撤廃する方針を明らかにしました。
香港が「中国に完全に飲みこまれるのでは」という懸念から香港脱出、資産移転の動きが広がっています。
2019年5月に私が香港に訪れた頃から、少しずつ香港における中国本土の影響力が強くなっているのを感じていました。
約1年の間で香港の自治がここまで危機に立たされていることに私自身も驚いています。
米国に上場している中国株ADRの上場廃止のリスクに注意
米国に上場している中国企業の銘柄(中国株ADR)が上場廃止になってしまうのでは、という不安が市場にでています。
2019年度から米国は中国との国際関係の悪化から、中国企業が米国で資金を調達できないようにする施策を検討していました。
今回の香港の国家安全法は米国と中国本土との関係をさらに悪化させています。
中国株ADRは上場廃止の懸念が投資家の間でも広がっており、いったん様子見して売る方がリスクを回避できるかもしれません。
中国株ADRの代表銘柄
中国株ADRの代表例は
ピンデュオデュオ(PDD):中国のSNSを活用したEコマース企業
アリババ(BABA):中国の大手Eコマース、流通企業
ニオ(NIO):中国の電気自動車メーカー
など一部の投資家に人気の成長株が多めです。
米国では中国株ADRに限らず日本株ADRやブラジル株ADRなど世界中の株が、米国株と同じように注文できます。
そのため中国株ADRを保有している人も多いのではないでしょうか。
これから投資する人、保有している人はますます中国株ADRの動向には慎重になった方が良い時期です。
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海外投資のカントリーリスク対策は分散投資
海外の個別銘柄は政治情勢の悪化などカントリーリスクに左右されてしまうことが多いです。
そんなカントリーリスクに強いのは国際分散投資です。例えば投資信託やETF(上場された投資信託)の
・ eMAXIS 全世界株式インデックス
・ VT バンガード・トータル・ワールドストック
などは中国株ADRに比べ上場廃止などのカントリーリスクに強い投資先です。
個別株の海外投資は大きく利益が出ることもある反面、カントリーリスクに限らずさまざまなリスクがあります。
個別株投資と投資信託やETFはうまく使い分けていきましょう。
個別株と投資信託をうまく使い分けること
香港の国家安全法の制定で米国と中国の国際関係はますます悪化しています。
米国に上場されている中国株ADRは上場廃止になってしまう可能性があり慎重な対応が必要です。
分散投資はカントリーリスクに強いためうまく個別株と投資信託を使い分けることをおすすめします。(執筆者:田守 正彦)