5月29日、パートなど短時間労働者への厚生年金の加入拡大を柱とした年金制度改革関連法が参院本会議で、与党や立憲民主党などの賛成多数により可決、成立しました。
法案が成立したことにより、パート労働者らが将来受け取る年金額の底上げを図るとともに、制度の支え手を増やす狙いがあります。
そのため、厚生年金の適用となる企業規模を段階的に引き下げることになりました。
「103万円の壁」や「130万円の壁」など呼ばれる収入を調整して働いているパートにとって、かなり重要なポイントになります。
さらに、
・ 受給開始年齢の拡大
も成立しました。
目次
パート・アルバイトの厚生年金保険

パート・アルバイトなどが厚生年金保険の被保険者の対象になるか否かの判断は、同じ事業所で同様の業務に従事する一般社員の所定労働時間および所定労働日数を基準に判断します。
・ 1週の所定労働時間および1か月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上
であれば、企業規模に関係なく被保険者となります。
さらに、
・ 平成29年4月からは、従業員500人以下の会社で働く方も、労使で合意すれば社会保険に加入できる
など、より多くの方が、これまでより厚い保障を受けることができるようになりました。
企業規模要件を2段階で引き下げ
今回成立した法案では、企業規模要件を、
・ 令和4年10月に「101人以上」
・ 令和6年10月に「51人以上」
と2段階で引き下げます。
政府の試算では、
・「51人以上」にした場合、65万人
が適用対象となると見込まれています。
加入するメリットは

厚生年金保険の適用を受けると、毎月保険料を徴収されることになりますが、以下のようなメリットがあります。
・ 障害がある状態になり、日常生活を送ることが困難になった場合なども、より多くの年金がもらえる
・ 医療保険(健康保険)の給付も充実
・ 国民年金保険料、国民健康保険料より保険料が安くなることがある
厚生労働省のシュミレーション例
毎月の手取り収入が減ってしまいますが、例えば、
毎月8,000 円(年額9万6,000 円)の保険料で、40 年間加入した場合では毎月1万9,000 円(年額22万8,000 円)の年金がもらえる。
また、1年間だけ加入した場合でも毎月500 円(年額6,000 円)の年金が終身でもらえる。
というシミュレーションが厚生労働省から出ています。
在職老齢年金の見直し
「在職老齢年金」とは、老齢厚生年金の受給権者が60歳以降も働き、給料などの報酬を受けている場合に年金額を調整する仕組みです。
現在、年金が減らされる収入の基準額(基本月額 + 総報酬月額相当額)は、
・ 65歳以上70歳未満の人 … 47万円
です。
令和4年4月からは、60歳から64歳の人について、基準額を今の月額28万円から47万円に引き上げます。
60歳以降も働く方にとっては、ある程度収入を気にせず働けるので嬉しい変更になるでしょう。
65歳以上70歳未満の人は、現行と変わらず47万円のままです。
受給開始年齢の幅を75歳まで拡大

現在は、公的年金の受け取り開始時期については65歳が基本ですが、60歳から70歳の間で自由に選ぶことができます。
今回、高齢者の就業機会の拡大にあわせ、令和4年4月から受給開始年齢の幅を75歳まで拡大し、60歳から75歳の間で選べるようになります。
66歳以降に繰り下げ受給すると月0.7%ずつ上乗せされます。
仮に、75歳まで繰り下げた場合は月額で84%増となり、かなりお得ですが、75歳まで年金収入がなくて生活できるかなども考えないといけません。
2024年からの働き方を考えて豊な老後を
今回成立した法案は、2024年(令和4年)から変わっていくものになります。
2年後ですので、これからの働き方について考える時間はたっぷりあります。
自身にとって最適な働き方や年金の受け取り開始時期をいろいろシミュレーションしながら見つけてください。(執筆者:社会保険労務士、国家資格キャリアコンサルタント 望月 葵)