もし、相続人が1人もいない場合や、相続人全員が相続放棄した場合、被相続人の財産はどうなるのでしょうか。
自動的に国庫に帰属する訳ではもちろんありません。

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相続財産法人が設立される
被相続人の財産を相続できるのは一定範囲の親族に限られており、おじやおばは一見近い関係にありそうですが法定相続人にはなれません。
したがって独身で子供がおらず、親兄弟もいない人は、
このような人が亡くなると、その財産は
何の手続きも要らず、法律上、自動的に法人化されます(民法第951条)。
こうすることで、財産の存在が一塊のまま持続できます。

法人の財産管理人が選任される
相続財産法人に対し、相続財産管理人(以下「管理人」)が家庭裁判所により選任されます(同952条)。
もちろん裁判所が勝手に選任する訳ではなく、然るべき利害関係人などからの選任請求が必要です。
利害関係人とは、例えば亡くなった人の債権者や、内縁の妻など、故人と「特別の縁故にあった」者などがあたります。
管理人は財産法人の「法定代理人」として以後諸手続きを行います。
財産管理人選任後の手続き
もし相続人がいれば、それを見て申し出を行えるようにするため
です。
公告後2か月経っても申し出がなければ、今度は
同時に既に分かっている債権者などにも連絡(催告)します。
公告後2か月経てば、請求のあった債権者や受遺者に支払いがされます。
まだ財産が残っていれば、
この期間に申し出がなければようやく相続人の不存在が確定します。
この後、家庭裁判所が特別の縁故者と認めた者がいればその者に財産が分与され、もしなお財産が残れば国庫帰属の手続きを取り、ようやく管理人の任務終了です。
財産管理人になれる人は
長ければ1年以上携わることになる管理人は、弁護士や司法書士などの専門職しかなれないと思うかもしれませんが、家庭裁判所は被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して、相続財産を管理するのに最も適任と認められる人を選びます。
必ずしも何らかの資格が必要ではありません。

報酬は誰が払うのか
上記のような業務を担うので、もちろんその仕事量に応じた報酬が遺産から支払われます。
なお、もし相続財産額が報酬に足りないと思われる場合は、管理人選任の申立人に報酬相当額を予納してもらいます。
相続財産で賄えなければ当然予納金は返ってこないので、利害関係人は、
誰からも選任請求がされなければ、財産法人はずっとそのまま
です。
財産と呼べるものが、処分ができそうにない不動産などであれば、あえて放っておく場合もありそうです。
空き家問題の一因はこういうところにあるのかもしれません。(執筆者:行政書士 橋本 玲子)