相続や遺言の大幅な改正がなされた民法ですが、法務局による自筆証書遺言の保管制度(以下「補完制度」)がそれらと歩調を合わせ、令和2年7月10日から始まります。
詳細が決まりましたのであらためて説明します。

目次
保管のための手続き
自分で遺言を書きあげたら、まずはどの法務局に預けるか
・ 原則自分の住所地
もしくは
・ 本籍地を管轄する法務局
のどちらかを決めます。
住所地が便利ですが、相続時に遺言書を受け取る人の便を考え、本籍地を選ぶこともあるでしょう。
また、所有不動産の所在地を管轄する法務局を選ぶことも可能です。
ちなみにすべての法務局(支局・出張所)で保管できるわけではありません。
こちらで管轄を確認できます。(遺言書保管所管轄一覧(pdf))
次に保管制度利用の申請書を作成し、預ける法務局で申請の予約をします。
予約した日時に該当法務局に行って申請を終え、保管番号名地が記された保管証を受け取れば手続きは終了です。
必要書類と費用
申請書は法務局のHPでダウンロード(6月17日現在は準備中)できるほか、管轄法務局にも備え付けられます。
遺言書は法務局で確認しますので、封をせずに持って行きます。
他に、本籍の記載のある住民票と、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類が必要です。
保管費用(手数料)は1通につき3,900円です。
保管維持費などは不要です。
注意点
注意点1:法務局には遺言者が行かなければならない
遺言は、最も代理にそぐわない法律行為です。
本人が自分の意思で作成したことを明らかにするため、法務局には必ず遺言者が出向かなければなりません。
公正証書遺言で遺言者が公証役場に出向くことが難しい場合は公証人の出張制度が利用できます。
しかし、保管制度には(少なくとも現時点では)そのようなシステムがないことを覚えておきましょう。
注意点2:法務局では遺言内容についてチェックしない
法務局で申請時にチェックするのは遺言書の形式に関することのみで、書かれている内容について意見することはありません。
したがって、相続時のトラブルの可能性について確実に避けられるとは言えません。
これらが心配であれば、専門家のサポートを受けた上で、公正証書遺言を作成する従来の方法をとることをお勧めします。

保管制度のメリット
申請時、公的機関である法務局で形式のチェックを済ませているので、家庭裁判所で検認を受けずに相続手続きに入れます。
検認は申立てをしてから2週間ほどたたないと行われないため、保管制度を利用することでスピードアップできるのです。
遺言者が自ら申請して保管された遺言書ですから、自筆と言えども信頼性がかなり担保できます。
作成後改ざんされたり紛失したりする心配もありません。
にもかかわらず、公正証書遺言より費用が格段に抑えられるのはかなりのメリットと言えるでしょう。
相談には対応していないので注意が必要
保管制度の予約は令和2年7月1日から受付予定です。
ただ、法務局では保管制度や遺言作成に関する相談には対応していません。
利用を検討している方も急ぎでなければ、しばらくは様子見をした方が良いかもしれません。(執筆者:行政書士 橋本 玲子)