iDeCo(個人型の確定拠出年金)の加入資格が、2017年1月から大幅に拡大されました。
これにより20歳以上60歳未満の、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の加入者であれば、国民年金の保険料の納付を免除されている方などの一部を除いて、誰でもiDeCoに加入できるようになりました。
この改正を受けて、2016年12月末時点で30.6万人だったiDeCoの加入者は、2017年12月末時点で74.5万人に達しているので、1年間で約2.4倍に増えました。
ただ企業型の確定拠出年金に加入している会社員の場合、規約の中に同時加入を認める定めがないと、iDeCoに加入できないので、この点が改善されたら、さらに加入者が増える可能性があります。
また近年は65歳くらいまで働く方が増えているため、iDeCoに加入できる年齢の上限を引き上げすれば、さらに加入者が増える可能性があります。
目次
iDeCoに加入できる年齢の上限が引き上げ
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2020年3月3日に国会に提出された年金制度改革関連法案は、同年5月29日に参議院本会議で可決・成立しました。
この中にはiDeCoの改正案も含まれていますが、主なものを紹介すると次のようになります。
1. 老齢給付金の受給開始年齢の引き上げ
iDeCoから支給されるものは、
・ 障害給付金
・ 死亡一時金
・ 脱退一時金
の、4種類に分かれています。
この中の老齢給付金は、iDeCoの加入期間が10年以上ある場合、60歳から70歳までの希望する時期から、「5年以上20年以下の年金」で受給を始めるという選択肢があります。
また60歳から70歳までの希望する時期に、「一時金」で受給するという選択肢もあります。
もし70歳になるまでに、いずれかを選択しなかった場合、すべてが一時金で支給されるため、受給開始年齢の上限は70歳になります。
これが2022年4月からの予定で、現在の70歳から75歳に引き上げされます。
2. 企業型の確定拠出年金の加入者に対する加入資格の拡大
企業型の確定拠出年金に加入している会社員の場合、上記のように規約の内容によっては、iDeCoに加入できません。
しかし2022年10月からの予定で、規約の内容にかかわらず、iDeCoに加入できるようになります。
またこういった方がiDeCoに拠出できる掛金の上限は、月2万円(確定給付型の企業年金に加入している場合は月1万2,000円)になります。
ただそれぞれが拠出する掛金は、次のような金額の範囲内に、抑える必要があります。
月5万5,000円(確定給付型の企業年金を実施している場合は月2万7,500円)となる、
つまり事業主が掛金を拠出した後の余った部分に、それぞれが掛金を拠出できるため、事業主が拠出した掛金が多い場合には、
上限の月2万円(月1万2,000円)まで、掛金を拠出できない場合があります。
3. iDeCoに加入できる年齢の引き上げ
iDeCoに加入できる年齢の上限は、現在は60歳になりますが、2022年5月からの予定で、65歳に引き上げされます。
ただ60歳以降に厚生年金保険に加入している、または国民年金に任意加入していることが、iDeCoの加入要件になるため、いずれの要件も満たしていない場合には、65歳まで加入できません。
年金を増やし、受給資格期間を満たす方法
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20歳から国民年金に加入し、60歳まで1度も欠かすことなく保険料を納付すると、原則65歳から満額の老齢基礎年金(2020年度は78万1,700円)を受給できます。
なお厚生年金保険の保険料の一部は、国民年金の保険料として使われているため、厚生年金保険の保険料を納付した期間のうち、20歳から60歳までの期間は、国民年金の保険料を納付したものとして取り扱われます。
このように40年(480月)に渡って保険料を納付すると、満額の老齢基礎年金を受給できるため、例えば1か月の未納期間がある場合には、
くらい、老齢基礎年金が減ってしまいます。
また未納期間が長くなり、公的年金の保険料を納付した期間や、各種の免除を受けた期間などの合計が、原則10年に達しなくなると、受給資格期間を満たせなくなるため、老齢基礎年金を受給できなくなってしまいます。
これらに該当する方が、60歳から65歳までの間に、国民年金に任意加入して、この保険料を納付すると、受給できる老齢基礎年金の金額を増やせたり、受給資格期間を満たすことができます。
任意加入の壁
60歳以降に厚生年金保険に加入していない場合、上記のように国民年金に任意加入して、この保険料を納付することが、iDeCoの加入要件になります。
これを個人的には「任意加入の壁」と呼んでおりますが、次のような2つの問題があると思います。
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問題点1:65歳までiDeCoに加入できない場合がある
国民年金の保険料を40年に渡って納付すると、老齢基礎年金は満額に達するため、例えば未納期間が2年で、残りの38年は保険料を納付していた場合、2年しか任意加入できません。
そうなるとiDeCoにも2年しか加入できないため、保険料の未納期間が少ないと、65歳まで加入できない場合があります。
問題点2:任意加入の保険料が負担になる場合がある
iDeCoに拠出できる掛金の上限は、人によって違いがありますが、下限は共通して月5,000円になるため、最低でもこれだけの金額を準備する必要があります。
また60歳以降にiDeCoに加入するには、国民年金に任意加入して、この保険料(2020年度額で月1万6,540円)を、納付する必要があります。
この両者を合わせると、
になるため、収入によっては負担を感じると思います。
そのため経済的な理由により、iDeCoに加入するのを止めてしまう方が、出てくるかもしれません。
こういった方が65歳から受給できる年金を、少しでも増やしたい場合には、iDeCoの掛金を拠出する代わりに、付加保険料を納付します。
付加保険料は月400円ですから、国民年金の保険料と合わせても、
の負担で済みます。
また付加保険料を納付すると、老齢基礎年金に上乗せして、「200円 × 付加保険料の納付月数」で算出される、付加年金を受給できます。
この金額は少ないかもしれませんが、原則65歳の受給開始から、わずか2年で元が取れるため、意外にお得な制度です。
なお付加保険料を納付している方でも、iDeCoに加入できるので、金銭的な余裕がある方は、2つの制度を併用すれば良いと思います。
また国民年金に任意加入している場合には、国民年金基金にも加入できるので、さらに金銭的な余裕がある方は、これとiDeCoを併用すれば良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)