離婚時の子どもの養育費の取り決めについてはこちらでも何度か記事にしました。
協議に時間がかかるケースの大きな要因となっていることが多いのです。
国や自治体の取り組みを紹介します。

目次
養育費算定表の改正
この記事を書いた半年後の2019年12月23日に家庭裁判所で参考とされる養育費の算定基準が改正され、これまでより月額1~2万円ほど増額されることになりました。
この表は離婚調停や訴訟の際の基準として裁判所が用いるもので、以前の記事にも書いたようにこの額でなければならないということではありません。
筆者が業務として関係した離婚協議において養育費は最高30万円近く(月額・子供1人当たり)になるケースもありましたが、最低額は皆算定表が示す該当額でした。
つまり、支払い側が「算定表の額しか払わない」という場合が少なくないのです。
今回の改正により実質的に養育費の最低ラインは上がったと言えるのではないかと思います。
自治体が養育費を立て替える
兵庫県明石市がこの7月に養育費の支払い義務者が支払わない場合に「市が立て替える」という制度を導入しました。

もちろん、市が立て替えっぱなしでは逃げ得になってしまいます。
この制度の画期的なところは、
行政(明石市)がまず支払義務者に催促し、
それでも支払わなければ市が立て替える、
その後、市が立て替えた額を義務者に請求する
というところです。
いったん決めた養育費支払いがなされなくなるというだけでも大きなストレスなのに、元配偶者に対して支払うように求めるというのは非常に気の重い作業です。
それを行政が代行してくれるのですから、受け取る側の負担は精神的にも金銭的にも非常に軽くなるはずです。
たとえ義務者の住所が分からなくとも、自治体であれば戸籍の附票により確認できるというのも強みです。
今回の制度は8月末までの期間限定であり、立て替え額も5万円を上限に一度のみです。
子供が明石市に住んでおり、養育費の取り決めを公正証書等の債務名義となり得る書類でしていることが条件です。
制度利用のハードルも高いが後続の自治体に期待も
コロナ禍への対策としての制度だとは言え、既に立替制度を実施している国もあることから、あらためての運用と同時に他の自治体が同じような取り組みを始める試金石になることが期待されます。
ただし、養育費額の取り決めを証明するためやむを得ないとはいえ、公正証書等がなければ制度利用できないというのはハードルが高いと言えます。
既に子供を連れて別居している場合、正式に離婚しないと児童手当などを受けられないため、相手が養育費取り決めに応じなくとも離婚してしまうことが少なくありません。
難しい課題ですが、そのような家庭も助けられるような制度の議論が待たれます。(執筆者:行政書士 橋本 玲子)