生命保険の契約は、長期にわたることが多いです。
契約したときから数年が経過して、生活環境や経済状況が変わったことなどをきっかけに「解約したい」と考えるかもしれません。
保険契約の解約は、実は非常に簡単です。
だからこそ、解約する前にしっかりと考えておかないと取り返しのつかないことになりかねません。
今回は、保険解約のデメリットと、失敗しないための注意点を解説しましょう。
目次
理由が明確でないなら、解約しないほうがよい
解約したい「理由」がはっきりしている場合には、解約する際の注意点や他に解決策があるのかどうかなどが見えてきます。
もし、「なんとなく解約したい」という場合には、解約しないほうが安全だと言えます。
一方、解約理由が決まっている場合の理由別の注意点を以降で説明します。

解約理由1. 他社に切り替えることにした
他社の保険に乗り換えるために解約する場合には、次の点に気をつけましょう。
注意点:新しい保険契約が成立してから解約する
保険の契約は、手続き直後に成立するわけではありません。
一般的には、早くても数日から1週間程度かかります。
健康状態などによっては成立が遅れる場合や、成立できない場合もあります。
新しい保険契約が成立する前に古い保険の解約手続きをしてしまうと、「成立不可」だった場合にどちらともなくなって無保険状態になってしまいます。
必ず、新しい保険の契約成立を待ちましょう。
解約理由2. 使わないからいらない
「元気だから、保険は不要」、「今まで使わなかったから、いらない」と考える人の気持ちは分かります。
しかしながら、一般的には年齢が上がるほど、病気にかかるリスクも上がっていきます。
また、リスクが上昇することで保険料も高くなります。
今と同じ内容のものが、今より安く手に入ることはありません。
注意点:健康状態によっては、二度と入れない
「医療保険があればよかった」と後悔するのは、たいてい「入院が決まった時」や「がんが見つかった時」など、実際に保険を使うことになったタイミングです。
残念ながら病気やケガの治療中は保険に加入できません。
病状や病名によっては治療が終わっても数年間、あるいは二度と契約できない可能性もあります。
「必要になったら、また入る」と思っているのであれば、健康な時こそ加入のタイミングだということを知っておいてください。
対策:保障を見直してみる
保険内容が自分に合っていないと感じるのであれば、保障の見直しをするのも1つの手です。
保険料も審査基準も新規で加入するより軽減されている場合が多いのでお得です。
内容によっては、保険契約から一定の期間が経過していないと見直しできないものもあります。
一度相談してみるとよいことでしょう。
対策:クーリング・オフ制度を利用
もしも、うまく断れないままに契約に進んでしまった場合には、クーリング・オフ制度を利用するのがおすすめです。
ただし、
・ 契約から8日以内である
・ 自分から持ちかけた保険契約ではない
・ 契約のために医師の診断を受けにいっていない
ことなど、いくつかの条件があります。
クーリング・オフが認められれば「契約がなかったこと」になるため、最初に支払った保険料も返金されます。
解約理由3. 急に資金が必要になった

「急に資金が必要になった」あるいは「経済状況の変化で保険料負担が難しくなった」場合も、一度は営業員に相談してみるのがよいと言えます。
保険を解約すれば、確かに支払い保険料分を節約できます。
しかし、もしも「保険を解約することで資金を得ようと思っている」のであれば注意が必要です。
注意点:解約返戻金が必ず出るとは限らない
保険を解約した際に戻ってくるお金を「解約返戻金」と言います。
ただし、解約返戻金はすべての保険にあるわけではありません。
【解約返戻金がある保険】
終身死亡保険・個人年金・生存保険・生存給付金特約など
一般的に「払込期間」が終わって一定期間経過後は、払込保険料総額よりも返戻金額が多くなります。
【解約返戻金が少ない保険】
低解約返戻金型終身保険など
保険料払込期間は、解約返戻金が本来の70%に抑えられています。
【解約返戻金がない保険】
定期死亡保険・医療保険・ガン保険など
いわゆる「掛け捨て」の保険です。
基本的に「お金を積み立てて、将来戻ってくるタイプの保険」以外には解約返戻金はありません。
また、解約返戻金の金額は常に一定でもありません。
どのタイミングでいくらになるのかは保険契約の約款などに記載されています。
契約者が保険会社に連絡することでも確認できます。
解約する前に金額を確認しておきましょう。
ポイント:前払いしている保険料が戻ってくる
全期前納・一部前納などで保険料を前払いしている場合には、解約時に未充当分の保険料が戻ってきます。
「前払い」とは、「半年・1年・全期間」などでまとめた保険料を保険会社が預かっている状態です。
そこから保険料支払日のたびに充当されているため、「まだ使っていない保険料(未払い保険料)」があります。
解約返戻金があるタイプの保険であれば、「解約返戻金 + 未払い保険料」が支払われます。
注意点:「一時払い」の保険料は返還されない
「一時払い」は「保険をまるごと一括購入した」と考えます。
すなわち、未来の分の保険料も既に支払い済みです。
一時払い商品の場合には、解約返戻金は多めに設定されています。
ただし、「低解約返戻金型」で一時払いの商品もあります。
その場合には、一括で支払った金額よりも戻ってくるお金の方が少ないことになります。
もしも、低解約返戻金期間に資金が必要になった際には、他の方法を考えたほうがよいと言えます。
対策:保険を残してお金を受け取る方法もある
契約している保険の「解約返戻金」を前もって借りることを「契約者貸付」と言います。
ある程度の解約返戻金が貯まっている必要がありますが、保険契約は残したままお金だけを受け取れるため、保障はちゃんと残ります。
一時的に資金が必要な場合に有効な手段です。
「解約の理由」と「解約以外の方法」を考える
保険の解約は口頭ではできません。
営業員を呼んで手続きするか、保険会社に連絡をして書類を送ってもらうかです。
保険会社に解約書類が届いた日が解約日です。
保険料の引き落とし日よりも前に解約が成立している場合には、いったん引き落とされた分も戻ってきます。
不備などないかをしっかりと確認しましょう。
保険契約は解約してしまうと元には戻せません。
安易に解約して後悔しないためにも、「なんのために解約するのか」、「解約以外の方法はないのか」を考えてみてください。(執筆者:仲村 希)