このような話をよく聞きます。
年とともに衰えるのは仕方ないのですが、家族としては親の生活が気になることでしょう。
特に気を付けるべきことはお金の管理です。
高齢者は詐欺や悪徳商法のターゲットになりやすく、「いつの間にか高額商品を多数購入していた」などということも起こりかねません。
親の金銭管理に不安を持ったら、トラブル予防のためにも誰かが何らかの関わりを持っておくのが安心です。
そこで今回は、高齢者の金銭管理を支援する「日常生活自立支援事業」を紹介します。

目次
金銭管理をサポートしてくれる日常生活自立支援事業
この制度は、判断能力が不十分な方を支援するための制度です。
法律に基いて、地域の社会福祉協議会が行っています。
日常生活自立支援事業の概要
【主な内容】
・ 福祉サービスの相談や利用の手続き支援
・ 公共料金の支払いや年金の出し入れ
・ 通帳や印鑑の預かり(※生活全般の管理ではないことに注意)
【利用対象者】
・ 高齢などで、日常生活の判断が困難な人
・ 制度の内容について理解できる人
【利用料】
1回の訪問で1,200円程度。
生活保護を受けている場合には無料です。
個人の金銭管理をサポートする制度には、成年後見人や任意後見人、他にも銀行が独自に行っているものもあります。
判断能力のない高齢者の資産の管理まで行ってほしい場合には、成年後見人のほうが適任かもしれません。
ただし、契約(選任)の時間と労力を考えれば、日常生活自立支援事業の方が圧倒的に早く進みます。
実際に使ってみた感想
筆者が過去に関わった高齢者で、日常生活自立支援事業を利用した方がいました。
その経験から、使い勝手を説明します。
【安心できる点】
・ 日常生活でのお金の管理や通帳印鑑を預かってくれる。
・ 利用料が任意後見人や金銭管理契約と比べてかなり安い。
一般的に、お金の管理を支援してくれるサービスは少なく、あったとしても高額です。
ヘルパーやケアマネも基本的に金銭管理を手伝うことはありません。
そのため、家族による金銭管理の支援を得られない場合には、日常生活自立支援事業を検討することが最も多いと言えます。
【役割の限界】
・ 日常の金銭管理に関わる支援以外はできない。
・ 家計の管理をするわけではない。
・ あくまで「支援」が役割
役割は支援のため、それ以外の対応はできません。
家族が楽をするためではなく、高齢者のための制度なのです。
したがって、金銭管理の補助は任せられても、家族の役割は変わりません。

【こんな方におすすめ】
日常生活総合支援事業に合うのは次のような方です。
・ 家族が頻回に関わることが難しい。
・ 金銭管理の最低限の部分にだけ関わってもらえれば大丈夫。
総合的に考えて、
「今の生活を維持するための手段のひとつ」
と考えればとても良い制度だと思います。
高齢者の課題解決サービスは地域包括支援センターに相談
しかし、支援制度全般に言えることですが、制度がどれほど優れていても、利用する高齢者が納得しないと利用はできません。
制度を利用する前には、なぜ必要なのか、何が目的なのかを話して本人が納得してから利用を開始しましょう。
高齢者の課題があれば、それを多少なりとも解決できるサービスはいろいろとあります。
お近くの地域包括支援センターに相談してみてください。(執筆者:介護業界15年で複数の介護施設を統括 小原 しろう)