得体のしれない恐怖から、怯えた声でお電話をいただくことがあります。
「税務調査」という言葉から、「たくさんの税金を追加で持って行かれる」というイメージを連想される方は非常に多いのだろうと思います。
確かに税務調査に入られて仮にお咎めなしだったとしても、ご褒美がもらえるわけでもありません。
納税者からしてみるとまさに「ハイリスク・ノーリターン」と言えるでしょう。
しかし、日頃から正しい会計処理を行っている事業者にとっては、税務調査は決して恐怖を感じるものではありません。
今回は中小企業・個人事業問わず、事業者に対して税務調査が入るときにチェックされやすい頻出論点を3つ、紹介したいと思います。
目次
1. 売上と原価の対応関係は適切か

税務調査に入ったからには、このチェックは、ほぼ100%行われると言っても過言ではありません。
ことは勿論ですが、
も欠かせません。
会計上、その事業年度にて売れなかったものについては在庫として計上しなければなりませんが、在庫の集計漏れが見つかれば利益の増加に直結することになります。
したがって税務署からすれば、
ということを意味するため、多くの税務調査では必ずチェックが行われます。
注意が必要な在庫
ご自身の手元にある在庫は比較的集計がしやすいのですが、
・ 仕入先から売り先へ商品を直送する場合
・ 一部商品のみを倉庫など別の場所に預けている場合
には、集計から漏れてしまいやすいため注意してください。
2. ご家族へのお給料が適切か
中小企業や個人事業では、経営者や事業主の配偶者などご家族に対してお給料を支払っているケースはよく目にします。
そのご家族へのお給料については、必要に応じて届け出を提出し、労働の対価として客観的に適切な金額を支払っているのであれば、何も恐れる理由はありません。
しかし中には、仕事にまったく携わっていないにもかかわらず、正社員並みのお給料を毎月支払っているケースも散見されます。
他人ではない家族だからこそ無茶ができるケースも多いため、事業者のご家族が絡む内容については、税務調査官も「ひょっとして」という気持ちでチェックの対象とすることが多いです。
目を付けられやすい論点だからこそ、謂れのない疑惑の目を向けられることのないよう、ご家族にお給料を支払うときは、
など、「客観性」を意識しましょう。
3. プライベートの経費が混ざっていないか

利益の出ている事業者の場合、ついついやってしまいがちなのは、「節税のためにプライベートの領収書を経費にしてしまおう」という一線を越えた節税対策です。
・ 家族旅行を福利厚生費に入れてみる
・ 自宅のテレビやパソコンを消耗品に入れてみる
あの手この手で経費を水増ししようとする事業者もいます。
税務調査官は過去の決算書の推移をもとに、調査に入る前からある程度チェックすべき項目の目星を付けています。
利益が増加した時におかしな動きを見せる経費があれば、当然目につきやすいことでしょう。
そして税務調査の際には、その怪しい経費について事業者へ根掘り葉掘りヒアリングし、そこでも軽率なウソで逃れようとしようものなら、事業者だけでなく関係者にまでヒアリングを行うケースもあります。
税務調査では、調査官に「ここが怪しい」と疑われてしまえば徹底的に追及されます。
無茶な節税は、バレたときには大きなしっぺ返しとなって自分自身に戻ってくることを心に留めておきましょう。
税務調査で見つかる修正点は、ひとつでも少なく済むよう事前の対策を
税務調査で修正点が見つかれば、延滞税などのペナルティまで支払わなければならないため、修正が少ないに越したことはありません。
昔から「調査官にお土産を持たせる」なんて表現がありますが、そもそも何も修正点を指摘できないのであれば調査官は手ぶらで帰らざるを得ませんし、私自身「修正ゼロ」の税務調査を何度も経験しています。
今回お伝えした3つのポイントを始め、「税務調査で修正を受けないような会計処理」を、ぜひひとつの目標として掲げてください。(執筆者:税理士 服部 大)