コロナ禍で苦しむ事業者を救う持続化給付金制度が開始して約5か月が経過しましたが、全国各地で不正受給の問題が顕在化し始めています。
沖縄県では5億円規模の不正受給事例が見つかっていますが、これでもまだまだ氷山の一角でしょう。
今回は不正受給の検挙による「自主返納希望者の増加」と、それに伴う「新たな詐欺手口の可能性」について解説したいと思います。

目次
不正受給の手口とは
まずは代表的な不正受給者の手口を確認していきましょう。
不正受給には、本来受給資格を持たない会社員や大学生が関与するケースも多いと考えられています。
それらの不正受給者は指南役の「指導」の下、個人事業主として偽って昨年度の確定申告を提出し、今年の売上がコロナ禍によって大きく減少したものとして虚偽の内容で申請を行います。
そして指南役の人間に対しては、不正受給により受け取った給付金額の2~5割近くを手数料として支払うことが多いようです。
そのように多額の手数料を支払ったとしても自分自身の手元にも数十万円単位の現金が残ることから、甘い誘惑にそそのかされる人間も少なくなく、SNSなどで堂々と不正受給の勧誘が横行する事態にまで発展したのです。
また不正受給により給付金を受け取った人物が周りの人間に不正受給を勧めることも多く、こうして不正受給の規模は一層拡大していったことが伺えます。
相次ぐ自主返納希望者
不正受給者の相次ぐ検挙が報道されるようになり、コトの重大さに気づいた不正受給者が自主返納を申し出るケースが相次いでいるようです。
中小企業庁でも持続化給付金の返還方法に関する案内を掲載しており、不正受給を行った人々に対して返還を促しています。
当然ではありますが、自主返納する場合でも手数料控除前の給付金額で返納しなければならないため、手数料相当額は自腹で返済を行う必要があります。
しかしながら自主返納せずに検挙された場合には、20%のペナルティや氏名等の公表も行われるため、そのようなリスクを少しでも軽減したいのであれば、自主返納すべきであると考えられます。
新たな詐欺被害の恐れあり

不正受給者の検挙がニュースで取り上げられることが増えるにつれて、懸念されているのが「新たな詐欺手口が生まれるリスク」です。
例えば以下のような手口が今後発生する可能性があると考えられます。
政府も新たな詐欺被害の発生を懸念しており、先述した中小企業庁の持続化給付金の返還方法に関する案内ページでも注意喚起を行っています。
不正受給をしてしまった場合において自主返納を希望する方は、SNSなどの媒体で知り合った人間を通じて手続きを行うのではなく、自ら持続化給付金事務局へ連絡を取るようにしてください。
不正受給の検挙に関する報道が増加すると、正規の受給資格を持つ受給者でも、自分が受け取った給付金が正しかったのか不安を覚える方も少なくないと思われます。
そのような「もしかして自分も…?」という迷いが詐欺グループに狙われ、【手口2】のように不正受給者でない方まで被害に遭うケースも今後発生することが懸念されています。
現状では新たな詐欺の手口は報告されていませんが、万が一不審な連絡があった場合には、持続化給付金コールセンターなどに相談するようにしましょう。
正確な判断を
今回は持続化給付金に関する不正受給を受けて増加する自主返納希望者と、今後発生しうる詐欺手口についてお話ししました。
世間をにぎわせている内容であるがゆえ、さらなる詐欺被害が発生する可能性も十分に考えられます。
正確な知識・理解に基づく「正しい行動」で、コロナ禍を乗り越えていきましょう。(執筆者:税理士 服部 大)