ペットの治療費に備えた「ペット保険」をご存じですか。
かかりつけの動物病院窓口などで、パンフレットを見たことがあるかもしれません。
現在、ペット保険を扱っているところは10社を超えています。
パンフレットのうたい文句は似ていますが、実は受け取れる金額に大きな差があるんです。
今回は、ペット保険を選ぶ際に特に注意すべき点、受け取る金額が大きく変わる点について解説します。
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目次
ペット保険とは
ペットが、病気やケガの治療費補償が主な内容です。
定期健診や爪切り・トリミング・予防接種などは、補償対象外です。
健康やしつけに関する相談サービスや、迷子捜索サービスなどをおこなっている保険会社もあります。
対象は、犬・猫がほとんどで、その他の小動物保険はごくわずか
ペット保険の対象動物は、ほとんどが「犬・猫」のみです。
一般的に、犬は「大型犬・中型犬・小型犬」の3コースに分かれており、猫は種類や大きさにかかわらず1コースです。
ごく一部、「鳥」や「うさぎ・フェレット・ハムスターなどの小動物」「は虫類」に対応している保険もあります。
本来、保険は複数社を見比べて、自分の希望する補償があるかどうかを選ぶことが失敗しないコツですが、「鳥・小動物・は虫類」の保険は競合相手がいないため比較ができません。
もし、犬猫以外のペット保険加入を考えている場合は、見つけたものの内容に納得できるかどうかで判断するといいでしょう。
ペット保険は、「医療保険」ではなく「損害保険」
生命保険会社は人に関わる保険しか扱えないため、ペット保険は「損害保険会社」あるいは「少額短期保険会社」などで扱っています。
そのため、仕組みは「損害保険」に似ており、「保障」ではなく「補償」と呼んでいます。
人間の医療保険のつもりで考えていると、「思っていた内容と違う」ことがあるでしょう。
加入条件は、「加入できるか」だけではなく、「続けられるか」が重要
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加入条件の1つに、「年齢・月齢」があり、年齢ごとに保険料が異なります。
保険会社によって「生後0か月~8歳11か月まで」「生後6か月~11歳まで」など、幅があります。
あえて「シニア向け」と表記がない場合、ほとんどの保険が10歳前後までとされています。
その年齢が、「加入年齢」なのか「更新年齢」なのかによって、保険期間に大きな差が生じます。
加入年齢と更新年齢が異なる場合
【例】A社「加入年齢:10歳・更新年齢:終身」
新規加入ができる年齢は10歳ですが、加入後は飼い主の意思で辞めるまで更新可能です。
「原則終身」に注意
【例】B社「加入年齢:10歳・更新年齢:原則終身 ※やむを得ず更新できない場合もあります」
保険会社によっては、「ケガや病気で一定額以上保険を利用した場合に、更新制限や補償制限(削減)を受ける」といった更新条件を設けているところもあります。
ケガや病気での治療中は、一般的に新しい保険の加入ができません。
また、新規引き受けができない年齢になっている可能性もあります。
途中で保障がなくなってしまわないために、更新条件の有無をしっかりと確認しておきましょう。
加入年齢と更新年齢が同じ場合
【例】C社「加入年齢・更新年齢:10歳まで」
新規契約は10歳まで、更新も10歳まで、つまり11歳以降は保険がなくなるということです。
同じように「加入年齢10歳まで」と表記されていても、「10歳で終わってしまう保険」か「加入は10歳まで、その後は生きている限り継続できる保険」両方の可能性があるということを知っておいてください。
もらえる金額に差がつく4つのチェックポイントと2つの盲点
ペット保険は、主に「通院」「入院」「手術」の費用補償だと述べました。
ただし、この3点がセットになっているとは限りません。
「通院保障あり/なし」や「入院・通院は手術を伴うもののみ/入院を伴う手術のみ」など、別途条件が細かく決められている場合もあります。
また、人間の保険では、あらかじめ「1日5,000円 × 入院日数」など日額型で支払われるものが多いですが、ペット保険は実際にかかった金額を補う「実費補填型」がほとんどです。
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補償割合に注意が必要
補償割合は、保険会社やプランによって、50~100%の間であらかじめ設定されています。
A社:補償割合50% 受取金額5万円
B社:補償割合70% 受取金額7万円
C社:補償割合100% 受取金額 10万円
同じ保険会社であれば、70%プランと100%プランでは、単純に100%プランのほうが保険料は高くなります。
70%プランは、人間の健康保険(自己負担額3割)感覚で選択する人が多いようです。
4つの「上限」をチェック
補償割合以外に、受取金額を大きく左右するのが4つの「上限」です。
保険会社によって、名称・金額・回数などが異なります。
何が「いくらまで」もらえるのか、十分に確認しておきましょう。
【その1】1日あたりの支払上限
A社:1日あたりの支払上限1万5,000円(70%実費型)
受取金額 2万円 × 70% = 1万4,000円 (自己負担額 6,000円)
B社:1日あたりの支払上限なし(50%実費型)
受取金額 2万円 × 50% = 1万円(自己負担額 1万円)
一般的に、「支払上限」よりも「補償割合」が優先されることが多いです。
また、上限がなくても、補償割合によっては受取金額が少なくなります。
通院・入院補償に設けられていることがある条件です。
【その2】1年あたりの日数上限
A社:1年間の入院治療日数上限20日・1日あたりの支払上限1万5,000円(70%実費型)
受取金額 3万円 × 70% = 2万1,000円>1万5,000円
1万5,000円 × 20日 = 30万円(自己負担額 60万円)
B社:1年間の入院日数上限なし・1日あたりの支払上限なし(50%実費型)
受取金額 3万円 × 50% × 30日 = 45万円(自己負担額 45万円)
入院・通院補償に設けられていることがある条件です。
【その3】1年あたりの回数上限
A社:1年間の手術回数上限2回・手術支払上限各50万円(70%実費型)
受取金額 30万 × 70% × 2回 = 42万円 (自己負担額 48万円)
B社:1年間の手術回数上限なし・手術支払上限なし(50%実費型)
受取金額 30万 × 50% × 3回 = 45万円 (自己負担額 45万円)
回数か金額のどちらか一方が限度に達した時点で、「補償上限」と見なされ、はみ出した分は補償対象外です。
【その4】年間補償限度額
2万円・入院治療日額3万円 × 年間合計30日・1回30万円の手術 × 年間3回
合計182万円
A社:年間補償限度額なし・1日あたりの支払上限(通院・入院)1万5,000円・1年間の治療日数上限(通院・入院)各20日・1年間の手術回数上限2回・手術支払上限50万円(70%実費型)
受取金額 2万 + 30万 + 42万 = 74万円(自己負担額108万円)
B社:年間補償限度額120万円・その他支払上限、回数上限なし(50%実費型)
受取金額 182万円 × 50% = 91万円(自己負担額91万円)
年間補償限度額は、保険会社によって約50~130万円程度の幅があります。
また、A社のように「年間補償限度額なし、日数・回数・支払上限あり」や、B社のように「年間補償限度額あり、その他制限なし」だけでなく、「年間補償限度額あり、日数・回数・支払上限あり」といった保険もあります。
上限における「1年間」は、通常、更新時にリセットされます。
受け取りに関わる2つの盲点
上限金額とは違った視点で、受取金額に影響を与える盲点を確認しましょう。
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盲点1 免責金額
A社:免責金額 3,000円/日(100%実費型)
受取金額 (1万円 – 3,000円)× 2日 = 1万4,000円(自己負担 6,000円)
B社:免責金額 1万円/日(100%実費型)
受取金額 (1万円 – 1万円)× 2日 = 0円
A社は「免責金額 = 自己負担額」パターン、B社は「免責金額 = 補償対象判断」パターンで「最低治療費」といった表記になっていることもあります。
A社のパターンでは、自己負担額が増えてしまうものの保険金自体は支払われます。
しかしながら、B社のパターンでは、そもそも「1万円以下は支払対象外」と同じことになるため、注意が必要です。
盲点2 保険料と補償内容が比例しない
以前、別記事でも書きましたが、人間の保険は「保障の価格水準」が決められています。
そのため、同じような保障なら同じような金額です。
人間の保険は、「支払うタイミングが多いほど、保険料が高い」もので、「安さ」にはきちんとした理由があります。
しかしながら、ペット保険の場合は「同じような保険料」なのに「受取金額が全く違う」ということがおこります。
保険料が高いからといって、受け取りタイミングが多いとも限りません。
だからこそ、いくつかのパンフレットを見比べて、本当に必要な補償を選ぶことが大切です。
ペット保険は、人間の保険よりも慎重に選ぶことが大切
ペットは具合が悪くなっても、言葉で伝えることができません。
ともに暮らす飼い主が、早く気づいてあげることが早期治療につながります。
医療費負担を理由に治療をためらわないためにも、「いざというときにちゃんと使えるペット保険」を見つけましょう。(執筆者:仲村 希)