加齢に伴って増すリスクの1つに、認知症があります。
さまざまな契約において契約者本人にしかできない手続きがありますので、それに備えて代理人が手続できるように然るべき手続きをしておくことが大切です。
銀行預金も例外ではありません。
本人にしかできない手続きがありますので、認知症になった親の介護のために「家族が親本人の銀行口座から預金を引出したいのに、それができない」となっては、全く意味がありません。
ここでは、親の認知症によって銀行預金を動かせなくなるリスクへの備えについてまとめます。
目次
加齢に伴って増える認知症のリスク
以下の資料をご覧ください。銀行預金に対する認知症への備えの必要性を現実的に感じて頂けるのではないでしょうか。
表1、2は、厚生労働省の資料をもとに三菱UFJ信託銀行がまとめたものです。
2025年には認知症患者は730万人を超え、高齢者(65才以上)の5人に1人が認知症になると推計されています。
また、認知症になる人の割合は加齢によって急増しています。
【表1】日本における認知症の人の将来推計

【表2】認知症にかかっている人の割合(年齢別)

厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」によると、95才まで生きる人は男性では10人に1人弱、女性では4人に1人強です(表3)。
【表3】生命表上の特定年齢まで生存する者の割合の年次推移

口座名義人の認知症の備えとなるもの
夫婦や親子で活用している人もいると思いますが、「代理人キャッシュカード」や「代理人指名手続」が口座名義人認知症の備えになります。
銀行によって代理人の数や費用が異なりますので、以下にまとめます。
三井住友銀行
まずは、三井住友銀行の例を見ていきましょう。
代理人キャッシュカード
1つの口座につき2名まで、代理人を指定できます。
つまり、1つの口座で発行できるキャッシュカードは、口座名義人1枚、代理人2枚の計3枚までです。
代理人指名手続
この手続きをすることによって、預金の引出しはもちろんのこと、預金を動かすために窓口でしかできない手続き、つまり解約が可能です。
上記のいずれも費用はかかりません。
ゆうちょ銀行、その他の銀行の例
ゆうちょ銀行、その他の銀行の例を見ていきましょう。
代理人キャッシュカード
1つの口座につき代理人は1名です。
つまり、1つの口座で発行できるキャッシュカードは、口座名義人1枚、代理人1枚の計2枚までです。
発行料は多くの銀行で不要ですが、みずほマイレージクラブに未加入の口座名義人が代理人キャッシュカードを発行する場合には1,100円必要というみずほ銀行の例もありますので、ご確認ください。
その他の方法
三井住友銀行の例のような「代理人指名手続」のない銀行が多いようです。
こういった銀行の口座を解約する場合には成年後見制度を利用することになりますが、そうでなければ相続が発生するまで置いておくことになります。
手続き
上記の手続きは、口座名義人本人が行います。
代理人に指定される人がこの手続きをすることはできませんので、
キャッシュカードは、後日、口座名義人に郵送されますので、代理人キャッシュカード申込み時に住所の間違いがないかを確認しましょう。
万一紛失した場合の再発行手続きも、口座名義人にしかできません。
費用
代理人キャッシュカードの発行が有料となる場合がある銀行を除いて、必要な費用はありません。
口座名義人が行えば無料の手続きなのに代理人が行ったがために有料になるというものもありません。
親が元気なうちに手続きしておく
現実には高齢の親のキャッシュカードを預かって預金を動かしている人がいると思いますが、口座名義人である親御さんが元気なうちに、今回紹介した手続きすることをおすすめします。(執筆者:金澤 けい子)