ねんきん定期便などで度々目にする合算対象期間とは老後の年金生活においてどのような影響を及ぼすものなのでしょうか。
今回は合算対象期間(書籍などではカラ期間と表示されることもあり)について解説してまいります。
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目次
合算対象期間とは
老後の年金受給資格は原則として保険料を10年以上納付していることで65歳から終身にわたって年金を受給できます。
老後の年金は障害年金や遺族年金のように死亡以外の失権事由がなく、民間保険のように事務費の負担もありません。
また、物価の変動等も加味した年金額を受給できます。
しかし、なかには10年の保険料納付済期間を満たすことができない方もいらっしゃいます。
その場合、受給資格要件として「期間」に限って算入されるものを合算対象期間といいます。
よって「年金額」には反映しないということです。
早速どのような期間があるのかを確認しましょう。
合算対象期間自体は10パターン以上あります。
今回は比較的多くの方が当てはまり得る代表的な例のみをご紹介いたします。
60歳未満の間で平成3年4月1日前の学生の期間
このままでは一部語弊があるため、詳しく解説いたします。
学生が国民年金へ強制加入とされたのは平成3年4月1日以降であり、その前日である平成3年3月31日までは任意加入とされていました。
現在は学生納付特例制度の対象として、夜間の定時性や通信制の学生も対象となっています。
平成3年3月31日以前に任意加入の対象とされていたのは昼間学生のみであり、夜間の定時性や通信制の学生は対象外となっています。
よって、平成3年3月31日以前に夜間の定時性や通信制の学生であった場合は合算対象期間とはなりません。
第2号被保険者としての期間のうち20歳の期間未満および60歳以後の期間
老齢基礎年金はフルペンション減額方式であり、20歳~60歳までの間に漏れなく保険料を納付している場合は満額支給とします。
しかし、納付漏れがある場合はその月分だけ年金額が減額されていくという考え方です。
しかし、高卒で間を空けずに働く場合や60歳定年後に働くビジネスパーソンはむしろ一般的です。
いくら法律で老齢基礎年金の年金額の計算は20歳~60歳までの期間しか反映しないと決めていたとしても会社で働く間は原則として65歳に達するまでは「国民年金の第2号被保険者」であり、保険料自体も徴収(形式的には厚生年金の保険料として労使折半で支払い、各実施機関から基礎年金拠出金として国民年金側へ支払われている)されていることから「経過的加算額」として厚生年金側から支給される仕組みとなっています。
任意加入者が任意加入しなかった期間および任意加入者が保険料をおさめなかった期間
国民年金法は昭和36年4月1日施行され、昭和61年4月1日に大幅な改正がなされました。
昭和61年4月1日を境に新法と旧法と呼ばれますが、昭和61年4月1日前に強制加入ではなく任意加入の対象とされていた方々(例えば夫は厚生年金に加入中でありその妻)はあくまで任意であったために加入しなかったとも考えられます。
よって、その期間を新法後においても全く考慮しないとするのはいかがなものかと考えられ「合算対象期間」とされました。
しかし、実際に任意加入してはいたものの保険料を納めていなかった期間(未納期間)は合算対象期間とは扱われていませんでした。
しかし、平成26年4月1日以降は改正により、任意加入していなかった期間も任意加入してはいたものの保険料を納めていなかった期間(未納期間)も実質的には同じであると考えられ、後者の未納期間も合算対象期間に含まれることとなりました。
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合算対象期間は難解な論点の1つ
合算対象期間は法律改正に伴うさまざまな変革を遂げ現在の建付けとなっています。
ねんきん定期便をご覧になられ疑問に思われた方の解決の一助になれば幸いですが、今回はご紹介できなかった部分の方が多く、合算対象期間は難解な論点の1つです。
疑問に思われた方は年金事務所や専門家を活用するなどしていただければと考えます。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)