「年金担保貸付制度」は、国民年金や厚生年金保険を受給している人がその年金受給権を担保として借り入れできる制度です。
この制度は年金受給権を担保として借り入れをすることが法律で認められた唯一の制度ですが、令和4年3月末で申込受付を終了することが決まっています。
今回は、この「年金担保貸付制度」についての詳細と、なぜ令和4年3月末で申込受付を終了するのかについて詳しく解説していきます。
目次
「年金担保貸付制度」とは

「年金担保貸付制度」とは、老齢年金、老齢基礎年金、障害年金、遺族年金の年金受給権を担保として借り入れができる制度のことです。
保健や医療、介護や福祉、住宅改修、冠婚葬祭、生活必需物品の購入などの小口資金が必要な場合に利用できます。
この制度を利用すると年金から返済されますので、返済が終了するまでは一部の年金を受給できません。
「年金担保貸付制度」の対象者
「年金担保貸付制度」は、次ような年金証書を持っていて、その年金を受給している人が利用できます。
・ 国民年金証書
・ 厚生年金保険証書
・ 船員保険年金証書(平成22年1月以降の事故による船員保険の障害・遺族年金は対象外)
また、以下から支払われる年金については対象外ですので注意が必要です。
・ 厚生年金基金
・ 国民年金基金
・ 確定給付企業年金
・ 確定拠出年金
・ 老齢福祉年金
・ 特別障害給付金 など
「年金担保貸付制度」を利用して借り入れをするためには、上記の条件を満たすことが必要ですが、実施主体である独立行政法人福祉医療機構での審査に通る必要もあります。
他にも、生活保護受給中であったり、融資金の使途が投機性の高い場合や公序良俗に反する場合などには利用できません。
「年金担保貸付制度」の返済方法
「年金担保貸付制度」の返済方法は、年金支給機関から偶数月に支給される年金のうち、借入者が指定した額を独立行政法人福祉医療機構が年金支給機関から直接受け取って返済に充てられます。
借入者の偶数月に支給される年金は、返済剰余金として年金支給額から定額返済額を差し引いた金額が預金口座に振り込まれます。
「年金担保貸付制度」終了の理由
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年金受給者が「年金担保貸付制度」を利用することにより、本来は老後の生活を充実させるための年金が返済に充てられしまって利用者が困窮してしまうことが問題となりました。
そのため、「年金担保貸付制度」は平成22年12月の閣議決定により廃止することとされ、令和2年の年金制度改正にて令和4年3月末で申込受付終了することが決定されたのです。
利用前には十分に検討
このように、「年金担保貸付制度」は令和4年3月末で申込受付終了されますが、それまでの間は今までと同様に利用できます。
この制度を利用する前に、借り入れの必要性や返済期間中の生活が困窮してしまわないかを十分に考慮することが大切てす。(執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦)