老齢を支給事由とする代表的な年金は国民年金から支給される老齢基礎年金と厚生年金から支給される老齢厚生年金があります。
いずれも65歳に達した日の属する月の翌月から支給されますが、同一月内の誕生日による損得は発生するのでしょうか。

目次
年金の支給単位
年金は支給すべき事由の生じた日の属する月の翌月から支給を始め、支給すべき事由が消滅した月までの支給です。
そして、実際に支給されるのは偶数月の15日に前月までの2か月分が支給されます。
また、15日が土日祝日の場合は直前の平日に支給されます。
支給すべき事由が生じた日とは
65歳に到達した日を指します。
例えば10月15日が誕生日の場合、65歳に到達した場合は翌月である11月分から年金が支給されます。
「年齢計算ニ関スル法律」では、「年齢が加算されるのは誕生日の前日の午後12時」と定められており、先の例で言うと10月15日の前日である10月14日に年齢が加算されます。
すなわち、その翌月である11月分から年金が支給されるとの理解です。
しかし、10月1日が誕生日の場合はその前日である9月30日に年齢が加算されることから10月分の年金から支給されるとの理解です。
この点のみに着目すると同じ月の生まれであっても1日生まれに限っては1か月早く年金を受給できることから、損得が発生するのではないかとの指摘を受けます。
年金加入
年金の支給に関しては同じ誕生月であっても損得が発生するとの見方もできます。
しかし、わが国の年金制度は学生であっても国内に居住する場合、20歳到達をもって国民年金の第1号被保険者として保険料の納付義務が生じます。
先の年金受給の例で示した10月15日生まれと10月1日生まれの例では年金加入時においては損得の立場が逆転すると言えます。
10月15日生まれの場合は10月14日に20歳に到達することから10月分から保険料納付義務が生じます。
反対に10月1日生まれの場合は9月30日に20歳に到達することから9月分から保険料の納付義務が生じることから年金受給前に死亡する場合を除いて年齢による損得は生じないと言えます。

保険料納付月数
国民年金に限っては保険料納付月数の上限は480月です。
480月とは20歳から60歳までの40年間保険料を漏れなく納付した場合の月数です。
何らかの理由で60歳までの間に480月に到達できなかった場合は任意加入制度として65歳までの間に限り納付月数を最大480月まで増やすことが可能です。
任意加入制度の趣旨としては受給資格を得ること、受給額を増額させることが挙げられます。
なお、65歳を過ぎてもなお老齢基礎年金の受給資格を得ていない場合は昭和40年4月1日以前生まれの方を対象として「特例任意加入制度」があります。
老齢基礎年金の受給資格を得られるまで加入することができますが、最長で70歳までとなります。
厚生年金については、国民年金の保険料のように一律の保険料ではなく、報酬によって保険料が異なります。(その分年金額も異なる)
被保険者としての加入可能期間も70歳までとなり、「挽回」できる選択肢は多いと言えます。
漏れなく受給しましょう
年金制度は世代間扶養といい、現役世代の支えにより年金受給世代を支える制度です。
しかし、手続きなどを失念してしまうと時効により消滅してしまう年金も発生します。
制度の複雑さゆえに本質の理解に時間を要することも珍しくありません。
手続きに関しては脱ハンコ化が進み、旧来よりも簡素化が図られ、かかる労力も少なくなっている点はメリットと言えるでしょう。
それでも理解に難渋する場合は相談窓口や専門家を活用して本来受けられる給付は漏れなく受給できる準備を整えたいところです。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)