給与計算では月途中退職や月途中入社の場合、月給での契約であっても日割り計算をして給与が支給されることが多いでしょう。
年金制度の場合、多くの方は月途中で65歳になることがほとんどであり、また、死亡のケースであっても月途中であることは何ら不思議ではありません。
そこで、「月途中」は年金制度ではどのような形で定義されているのでしょうか。
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目次
年金に日割り計算という概念はなし
年金制度は権利を発生した日の属する月の翌月から年金の支給対象です。
例えば10月10日に65歳に到達した場合は翌月の11月から老後の年金が支給されます。
また、年金は偶数月の15日に「前月までの2か月分」が支給されます。
また、15日が土日祝日にあたる場合は直前の平日に支給されます。
未支給年金とは
未支給年金とは支給すべき年金であるにも関わらずまだ支給されていない年金のことを指します。
年金を受けていた方がお亡くなりになられた場合は必ず未支給の年金が発生します。
これは、年金の支給は「前月までの2か月分」が支給される性質上、15日以降に亡くなられても15日の前日以前に亡くなられても必ず未支給分の年金が発生します。
未支給年金の支給対象者
年金の受給権者が死亡した当時、その者と生計を同じくしていた配偶者、子供、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹またはこれらの者以外の3親等内の親族です。
同順位者が2名以上ある場合はそのうちの1名が代表者として請求します。
そして、配偶者については事実婚の配偶者(事実を証明する必要あり)であっても対象です。
なお、生計を同じくしていたとは、端的には世帯をともにする場合や、住民票上は世帯が異なるものの現に起居をともにし、家計を一にしている場合です。
支給対象者については年齢による制限はありません。
例えば10月に死亡した場合
10月(仮に20日)に死亡した場合は10月15日に支給された年金は8月と9月の年金であることから10月分は未支給年金となっています。
手続きの流れ
年金を受給している方が亡くなった場合、年金の受給権は失権します。
その場合「受給権者死亡届(報告書)」の提出が必要ですが、日本年金機構にマイナンバーが収録されている場合は届出を省略できます。
請求書及び添付書類
未支給年金請求書
以下添付書類
・ 亡くなった方の年金証書:年金証書を回収(回収できない場合は理由を記載)
・ 戸籍謄(抄)本:死亡者との身分関係の確認
・ 住民票(除票):受給権者の死亡の事実を確認することと死亡した受給権者と未支給年金請求者の生計同一関係の確認
・ 世帯全員の住民票:死亡した受給権者と請求者との生計同一関係の確認
・ 預貯金通帳(写し可):口座確認
また、代理人が手続きをする場合は委任状、代理人の本人確認ができる書類が必要です。
マイナンバーを記載する場合は住民票(除票)および世帯全員の住民票を省略できます。
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年金一元化以降は
2015年10月1日に年金の一元化が行われました。
そこで複数の年金(例えば厚生年金と共済年金を受けることができる場合)があり、死亡した場合は未支給年金請求書を日本年金機構または共済組合のいずれかに提出することでそれぞれの手続きが可能となります。
年金生活者支援給付金は
2019年10月1日の消費税増税に伴い創設された年金生活者支援給付金は、一定所得以下の年金生活者に対して年金に上乗せして支給される制度として創設されました。
同給付金についても年金同様に未支払分が発生している場合、未支払分を受けることができる遺族の範囲は未支給年金の遺族と同様であり、共済組合等のみから支給される年金のみを受けている場合の未支払分の年金生活者支援給付金請求書の提出先は日本年金機構となります。
時効は5年
年金の時効は5年であり、5年以内であれば時効消滅により請求することができなかったということにはなりません。
反対に年金生活者支援給付金は年金と異なり、「裁定請求」ではなく「認定請求」となります。
これは「裁定請求」と異なり、請求忘れが発覚した場合、過去にさかのぼって請求することができませんので注意が必要です。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)