葬儀を執り行ううえで、多くが悩むのが費用面です。
たいせつな家族をきちんと見送りたいとはいえ、すぐに用意できるまとまったお金には限度があります。
故人が生前、簡素な葬儀を希望するケースも増え、葬儀の規模や形式も多様化した現代では、豪華な葬儀だから故人も遺族も参列者もうれしいというわけではありません。
そこでこの記事では、節約ポイントを見極めながら葬儀費用を抑える5つの方法と、費用を抑える際の2つの注意点を紹介します。

目次
葬儀費用の相場と内訳
まずは葬儀費用の内訳と相場を確認しておきましょう。
葬儀社のプランは主に以下の2つです。
・ 付随する柩代・霊柩車代・火葬費用などがセットになったプラン
プランにより費用が異なりますが、相場は30万円~200万円程度です。
葬儀社ごとに幅広い価格設定になっています。
主な内訳の相場は以下の通りです。
(利用する葬儀場によって異なる)
・ 会食接待費:25万円~70万円程度
(通夜・告別式の供養膳や飲み物など。飲食内容・通夜会葬の人数・親族の人数によって異なる)
・ 宗教者への謝礼(お布施):30万円~100万円程度
(通夜と告別式の読経・戒名・初七日法要・車代など)
参考:よりそう
上記の通り、葬儀費用にはかなりの幅があるため、選ぶプランや内訳でコストを下げることができます。
葬儀費用を抑えるための5つの方法
葬儀費用を抑えるために一般的に取り入れやすいのが、以下の5つの方法です。
(2) 葬儀プランを見直す
(3) 葬儀規模をコンパクトにする
(4) 市民葬(区民葬)を利用する
(5) 葬儀形態を変更する
【方法1】複数の葬儀社から相見積りをとる
なるべく安く、かつ満足できる葬儀を執り行うためにやっておきたいのが、複数の葬儀社への見積り依頼です。
相見積りをとり、葬儀プランの内容と合わせて比較検討しながら、安く抑えられる業者を選びましょう。
複数社へ見積依頼を行うメリットは、葬儀にかかる総額と、その内訳が正確に把握できることです。
「どの程度の価格なら希望の葬儀ができるか」という相場感がわかり、「どこの部分を削っても大丈夫か」の見極め材料にもなります。
なお、相見積りをとる際は、必ずすべての葬儀社に対して同条件を提示してください。
葬儀社ごとに条件が異なると、比較対象が曖昧になり相見積りの意味がありません。
【方法2】葬儀プランを見直す
葬儀費用のうち、心づけと称されるお布施を除き、それ以外を見直せば費用を抑えることができます。
葬儀社から提案されたプランの明細で、不要なサービスや数量が多いものがないか確認しましょう。
式場利用料・祭壇の種類・接待の料理などは選んだプランで変わってくるため、プランのグレードを下げることも含めて検討してください。
なお、祭壇など料金設定が幅広いものは最後に調整します。
通夜・葬儀で必要なものから決めていき、予算内の余った分で選択しましょう。
【方法3】葬儀規模をコンパクトにする
葬儀規模をコンパクトにすれば、コストをぐっと下げられます。
葬儀会場の大きさや料理のグレードは、葬儀費用にもっとも反映されやすい要素です。
ただし、あまり規模を抑えすぎると、親族や参列者から不満が出るケースもあります。
葬儀社や身近な経験者に相談しながら決めましょう。
【方法4】市民葬(区民葬)を利用する
自治体が行っている市民葬(区民葬)の利用を検討してみましょう。
市民葬(区民葬)とは、市や区の自治体と葬儀社が連携して行う葬儀で、葬儀社に直接依頼するより安くなる制度です。
自治体に市民葬を申し込むと、提携する葬儀社がすべて執り行ってくれます。
自治体の基準を満たした葬儀社が担当するので安心感があるのもポイントです。
ただし、原則的にその自治体の住民しか利用できません。
また、葬儀費用自体は低額ですが、プラン内容は自治体によって異なります。
基本メニュー以外は追加料金が発生するので、あらかじめ確認しましょう。
【方法5】葬儀形態を変更する
一般的なお通夜・告別式を執り行う葬儀は一般葬ですが、この葬儀形態を変更すれば費用を大幅に抑えることができます。
・ 一般葬:149万3,624円
・ 家族葬:96万4,133円
・ 一日葬:85万1,461円
・ 直葬(火葬式):44万5,376円
参考:鎌倉新書
上記の通り、一般葬と直葬では約100万円もの差があります。
特に新型コロナウイルス以降、一般葬以外が増え、抵抗が少なくなったという傾向も見逃せません。
家族葬
葬儀規模は小さいながら一般葬と変わらず、通夜・告別式も行う形態です。
現在では家族に加え、親戚や親しい友人知人を交えて行う小規模の葬儀をさします。
接待や返礼品の費用が抑えられるのがメリットです。
一日葬
通夜を行わず、葬儀・告別式・火葬のみ行う形態です。
通夜料理の節約や、遠方から参列する親族の宿泊費の負担も抑えられます。
通夜での弔問客の対応が不要になり、遺族の心身の負担を軽減できるのもメリットです。
直葬(火葬式)
もっともシンプルな葬儀で、火葬場に集合・解散のみで終了する形態です。
希望により宗教者に読経してもらうこともできます。
葬儀費用は施設利用料とお布施のみです。
ただし、後述するデメリットをよく理解し検討しましょう。
葬儀費用を抑える際の2つの注意点

葬儀費用を抑えるにあたって、以下の2つの注意点も確認しましょう。
(1) 直葬はデメリットをよく理解する
(2) 安価な定額プランは細かく確認する
【注意1】直葬はデメリットをよく理解する
直葬を検討する際には、必ず以下のデメリットをよく理解しましょう。
・ 故人の友人・知人とトラブルになることもある
・ 葬儀社から満足な対応を受けられないケースもある
直葬は通夜や告別式を行わず、臨終から24時間以上安置した後、納棺して火葬場へ出発します。
1~2時間で火葬が終わった後に骨上げし解散のため、高齢者や妊婦などの負担軽減ができる反面、故人を見送った実感が持ちにくい葬儀形態です。
参列者は家族親族のみが大半なので、故人の友人知人から苦情が発生する可能性もあります。
こうした点については、あらかじめ家族親族で話し合い、故人の友人知人にはきちんと事情を説明し理解してもらうようにしましょう。
また、葬儀社にとって利益が薄いため、簡略化やコストダウンが多く、結果としてずさんな対応をされるケースもあります。
なるべく評判のよい葬儀社を選び、直葬でも気持ちよく行えるようにしましょう。
なお、一日葬と同様、比較的新しい葬儀形態なので、菩提寺の許可が必要になることもあります。
相談せずに直葬を行った場合、納骨を断られることもあるので注意してください。
【注意2】安価な定額プランは細かく確認する
昨今、インターネット上で相場より安い金額を掲示する葬儀社が多く出回っており、追加料金が発生しない定額プランを打ち出す業者も増えています。
この安価な定額プランを検討する場合は、必ず内容を細かく確認しましょう。
・ 会食接待費や僧侶へのお布施などが含まれておらず、追加料金がかかるプランが多い
・ 霊柩車の走行距離など多くに制限があり、制限を超えると都度追加料金を払うプランが多い
上記は、安価な定額プランで特に気をつけたい注意点です。
結果として想定以上の葬儀料になってしまうケースも多いため、よく確認しましょう。
安さだけで決めず後悔のない選択を
葬儀は故人との最後の場とはいえ、なるべく費用を抑えたいのが本音です。
まずは相場と内訳を把握したうえで、抑えても大丈夫な方法で検討してみてください。
「安いから」だけで直葬や安価な定額プランに決めるのではなく、内容をすべて確認し、誰もが気持ちよく故人を送れると判断できてから利用しましょう。(執筆者:田中 佐江子)