ビットコインの取引価格は、2016年3月1日時点で4万9,772円でしたが、5年後の2021年3月10日には120倍の600万円を超えるほどに価格は高騰しています。
将来的な値上がりを考えて今から仮想通貨を贈与する場合や相続によって仮想通貨を取得した場合に、相続税・贈与税の問題は避けて通れませんので課税関係の概要は押さえておきましょう。

目次
仮想通貨は相続税・贈与税の課税対象になる財産
相続税は亡くなった人の財産に対して課される税金であり、贈与税は無償で財産をもらった人に対して課される税金です。
相続税と贈与税の対象となる財産とは、お金として見積もることのできる経済的価値のある財産のことを言い、現金預金はもちろんのこと株式や不動産など課税対象です。
仮想通貨が経済的な財産に該当するかについてですが、仮想通貨(暗号資産)は資産決済法という法律で、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と規定されているため、仮想通貨は経済的な価値がある財産に該当します。
したがって、仮想通貨を相続や贈与で取得した際には相続税・贈与税の対象なのです。
仮想通貨を相続・贈与で取得した場合の評価方法
仮想通貨には、ビットコインやリップルなど数多くの種類が存在し、相続税・贈与税の評価方法は仮想通貨の種類によって異なります。
活発な市場がある仮想通貨は、相続人等の納税義務者が取引を行っている仮想通貨交換業者が公表する課税時期においての取引価格で評価します。
相続税の課税時期は亡くなった人の相続開始時点であり、贈与税の課税時期は贈与により財産をもらった日です。
「活発な市場」とは、暗号資産取引所または暗号資産販売所において十分な数量および頻度で取引が行われていて、継続的に価格情報が提供されている市場のことを言います。
一方で、活発な市場が存在しない仮想通貨は、客観的な交換価値を示す一定の相場が成立していないため、課税対象の仮想通貨の内容や性質、取引実態等を踏まえて個別に評価を算出する必要があるのです。
相続・贈与後に仮想通貨を売却する場合の取得価額
相続・贈与によって取得した仮想通貨の取得価額は、次の方法で評価します。
相続・贈与により取得した仮想通貨の取得価額の算出方法

(1) 死因贈与、相続または包括(特定)遺贈により取得した場合
被相続人が亡くなった際に、その被相続人が仮想通貨について選択していた方法により評価した金額(被相続人が死亡時に保有する仮想通貨の評価額)
(2) 贈与または遺贈により取得した場合((1)の場合を除く)
贈与または遺贈の時の価額(時価)
参照:国税庁「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)(pdf)」
なお、仮想通貨を売却した際にその仮想通貨の取得価額がわからない場合には、売却価額の5%を取得価額として計算することも可能です。
仮想通貨の申告漏れには要注意
税務署は仮想通貨の売却利益の申告漏れを摘発するために、情報収集に力を入れています。
仮想通貨の保有状況が確認できれば、贈与や相続により仮想通貨の所有者が移動することも把握できるため、贈与税・相続税の申告をしないと税務調査を受ける可能性があります。
税務署に対して「知らなかった」は通用しませんので、申告が必要になる場合には速やかに手続きしてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)