日本の年金制度には国民年金と厚生年金の2つの年金制度があり、老齢、障害、死亡などの事由が生じたときに所定の要件を満たすことで年金が支給されます。
今回はその中で死亡したことにより受給権が発生する遺族年金について、盲点となりがちな部分に焦点を当て解説してまいります。
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目次
保険料納付要件
以下に該当する場合は保険料納付要件を満たしておくことが求められます。
遺族基礎年金【国民年金から支給】
・ 国民年金の被保険者である間に死亡したとき
・ 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき
遺族厚生年金【厚生年金から支給】
・ 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
・ 厚生年金保険の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
保険料納付要件とは「死亡日の前日」において死亡日の属する月の前々月までの被保険者期間について、2/3以上保険料を納めていることが要件です。
保険料納付要件は、「保険料納付」の一択ではなく、免除期間であっても含めることが可能です。
ポイントとしては「死亡日の前日」においての部分で、死亡後に遺族年金受給のために慌てて保険料を納めた分は反映されないということです。
また、65歳未満の方の場合は直近1年間に保険料未納がなければ特例として保険料納付要件を満たします(2026年3月31日まで)。
すなわち、65歳以降にお亡くなりになった場合は特例の適用はないという理解です。
老齢年金の場合は保険料納付が可能な2年分をまとめて納付することや、60歳や65歳到達時に老齢年金の受給権が発生していない場合に任意加入し、受給資格を得ることができます。
しかし遺族年金は死亡日の前日に保険料納付要件を満たしていない場合は受給資格を得ることができない場合もあり得ます。
生計維持要件
お亡くなりになった方と死亡当時に生計が同一であったこと(例えば住民票上同一世帯であった)、前年の収入が850万円未満(所得にすると655.5万円未満)であったことの双方を満たす場合は生計維持要件を満たしていると考えられます。
しかし、相談事例としてはいずれか満たしていない場合の例外的取り扱いの有無についてです。
例えば単身赴任や就学などの理由で別居しているが定期的に連絡を取り、経済的援助もある場合は申し立てができます。
収入要件についても相続で一時的に所得超過となった場合、その額を差し引いて要件を満たせば認められる場合があります。
参照:日本年金機構(pdf)
年齢要件【遺族基礎年金】
年齢要件は課されませんが、子のある配偶者または子が支給対象です。
子(障害を有さない)が18歳年度末を過ぎると子のある配偶者ではなくなるとみなされ、遺族基礎年金は失権します。
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なお、遺族基礎年金を支給されていた子(障害を有さない)は18歳年度末を過ぎると失権します。
年齢要件【遺族厚生年金】
よくある質問として子のある妻以外について年齢要件はありませんが、以下の遺族は年齢要件があります。
(1) 夫、父母、祖父母:55歳以
(2) 子、孫:18歳年度末まで
子のない妻については、年齢が30歳未満であった場合、5年間の有期年金です。
さらに(1) については、実際に支給されるのは60歳に到達した日の属する月の翌月からとなります。
しかし、夫に限っては「遺族基礎年金」も支給される場合は遺族基礎年金も支給される間に限って遺族厚生年金も支給されます。
遺族年金に限ったことではありませんが年金は請求しなければ自動的に支給されることはありませんので、おさえておきたい部分です。
失権事由
妻、夫が一定期間経過した後の失権事由としては再婚した場合、継続的な所得保障の観点から失権となります。
要件が多いので注意しましょう
遺族年金は受給権者となり得る方の年齢要件や生計維持要件、所得要件など老齢と比べて多くの要件があります。
また、遺された家族のために、保険料を納めておくこと、納付自体が難しい場合は免除制度を活用するなど、滞納期間とならない対応も重要です。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)