インターネットが発達したことで、YouTuberなど海外に居住しながら、日本で収入を得ている人は増えています。
日本で得た収入は日本の所得税の対象となりますが、日本の居住者と非居住者かどうかで、所得税の対象となる範囲が違うことを知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、居住者・非居住者の課税の違いと、判定方法について解説します。

目次
居住者・非居住者の課税の違い
居住者は国内外問わず、その人が得た収入すべてが所得税の課税対象です。
たとえば日本の居住者であるスポーツ選手が、海外で賞金を獲得した場合、日本の所得税も課税されることになります。
非居住者については、日本国内で得た所得のみが所得税の課税対象です。
海外のスポーツ選手が日本国内の大会で優勝して獲得した賞金は、所得税の課税対象となり、日本人であっても非居住者であれば、国外で獲得した賞金に日本の所得税は課されません。
そのため世界を飛び回って活動している人は、居住者と非居住者かどうかで所得税の課税対象範囲がガラリと変わります。
所得税法上の居住者と非居住者の判断方法
日本の所得税法の「居住者」とは、国内に住所を有し、現在まで引き続き1年以上居所を有する個人をいい、居住者以外の個人が「非居住者」です。
住所とは、生活の本拠をいい、客観的事実によって生活の本拠が日本にあるかを判定します。
居所とは、生活の本拠ではないが現実に居住している場所をいい、1年以上日本に居住している場所を有している人は居住者です。
また国内に居住している個人が次のどちらかに該当する場合、日本国内に住所を有する人と推定されます。
国内に住所があると推定されるケース
・ 日本国内に、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること
・ 日本国籍を有し、国内に生計を一にする配偶者、その他の親族を有することおよび、国内での職業や資産の状況から、日本に継続して1年以上居住するものと推測するに足りる事実があること
課税関係は租税条約も大きく関係する

国ごとで税金の課税方法は違うため、租税条約で調整が行われています。
租税条約とは、日本と相手国との二国間で発生する税金についての取り扱いを定めているものであり、2021年7月1日現在、日本は144か国・地域と租税条約のネットワークを形成しています。
租税条約を結んでいない国で収入がある場合、日本とその国の双方で税金が課されることになり、二重に税金を納めることになるケースも珍しくありません。
それに対し租税条約を結んでいる場合、二重課税を防止するために居住者の判定方法が定められていますし、海外で課税された場合には外国税額控除の適用で日本の所得税が減額される制度も存在します。
税金の種類によっても課税対象の範囲は異なる
今回は所得税の居住者・非居住者についてご説明しましたが、税金の種類によって対象となる財産の範囲は異なります。
たとえば相続税の場合、亡くなった人と相続人の国籍や日本の居住年数で課税対象財産の範囲が決まります。
また法律も毎年のように改正されていますので、もし海外に移住したり拠点を変える場合には、最新の法律を確認するようにしてください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)