職場を退職する際には退職後の健康保険を決めなければなりません。
その中に「任意継続被保険者制度」があります。
任意継続被保険者とは端的には健康保険に限り、前職で加入していた健康保険に継続して加入できる制度です。
2022年1月1日の法改正で任意継続被保険者について改正が行われますので、改正内容を確認していきましょう。
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目次
任意継続被保険者とは
一般的なケースとしては職場を退職した場合に資格喪失日の前日(退職日)まで継続して2か月以上健康保険に加入していた場合に、申し出ることにより継続して健康保険のみ加入し続けることができる制度です(厚生年金にはこのような制度はありません)。
申し出の期間は退職日の翌日から20日以内です。
任意継続被保険者でいられる期間は2年間が上限となります。
また、以下の事実が確認されたときはその翌日に資格喪失となります。
・ 死亡した場合
・ 保険料を納付期日までに納めなかった場合(正当な理由がある場合を除く)
そして以下の事実が確認されたときはその日に資格喪失となります。
・ 他の健康保険に加入した時(例えば再就職しその会社で健康保険に加入した)
・ 後期高齢者医療制度の被保険者となった
任意継続被保険者は保険料全額負担となります(在職中は会社と折半)。
改正内容
【資格喪失事由】
任意継続被保険者になり、資格を喪失させる場合には以下の要件にあてはまった場合とされていました。
・ 死亡したとき
・ 保険料を納付期日まで納付しなかったとき
・ 他の健康保険へ加入したとき
改正後は上記の要件に加えて、任意脱退が可能となります。
背景には再就職するような場合を除き、原則2年間喪失できない、保険料が変わらないなどの窮屈さがあったことから、改正されるものと考えます。
健康保険組合の改正については割愛します。
任意継続被保険者のメリット
退職後であっても在職中と同様の保険給付が受けられるなどが挙げられます。
また、任意継続被保険者となり、初めて傷病手当金を受給でき得る状態になった場合は対象外となります。
退職日まで1年以上会社の健康保険に加入しており、資格喪失の際に傷病手当金を受けている場合は任意継続被保険者となった後も資格喪失後の継続給付として給付の対象となります。
これは出産手当金も同様です。
資格喪失後の傷病手当金の注意点としては、資格喪失の際、単に病院にかかっているだけでは傷病手当金を受けているとは判断されないことから、医師の診断にもとづき、労務不能の状態であることを証明(診断書など)できることが求められます。
また、イレギュラーなケースにはなりますが、たまたま保険証を紛失しており、資格喪失の際、自費で療養を受け、労務不能のため、傷病手当金を受けていた場合であっても傷病手当金は継続給付されます。
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任意継続被保険者に加入するか否かの判断に迷う場合
配偶者が働いているような場合であれば、失業保険の受給中(日額で3.612円(60歳以上は5,000円)以上であることが前提)を除き、扶養に入るのが多く取られる選択肢です。
任意継続被保険者の特徴として、退職日の翌日から20日以内に申し出をしなければそもそも加入できません。
多くの場合、退職後一定期間再就職しない場合でかつ、扶養に入らないという場合は国民健康保険と任意継続被保険者で判断に迷うことになるでしょう。
考慮する際には保険料額(任意継続被保険者であれば職場やご自身で確認し、国民健康保険であれば市区町村で確認可能)を比較し判断することになるのが一般的です。
あらかじめどのような選択肢が自身にとって望ましいのかは検討しておくことが適切でしょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)