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老後資金ゼロが約4割もいるのに、生活保護を批判するのが日本の問題点

シニア 退職金
老後資金ゼロが約4割もいるのに、生活保護を批判するのが日本の問題点

Yahoo! JAPANニュースなどで年金に関する記事を読んでいると、年金と生活保護を比較したうえで、生活保護という制度や、生活保護の受給者を批判するコメントを、よく見かけます。


例えば年金の保険料をきちんと納付した方より、生活保護の受給者の方が豊かな生活を送るのは、納得できないというものです。


また年金の保険料を未納にして、無年金になってしまった方を、税金で助けるのは納得できないというコメントもあります。


厚生労働省(pdf)が20222月に発表した、「生活保護の被保護者調査(令和3年11月分概数)」によると、202111月時点で生活保護を受給していたのは、1636,040世帯でした。


この中で高齢者世帯は907,945世帯だったため、全体の55.5%を占めております。


また高齢者世帯の内訳を見てみると、単身世帯は51.2%2人以上の世帯は4.3%だったため、生活保護を受給する世帯の半分くらいは、高齢者の単身世帯のようです。


年金受給者も高齢者の方が多いため、年金と生活保護は比較されやすいのかもしれません。


ただ所定の要件を満たすと、年金受給者でも生活保護を受給できるため、年金と生活保護を対立的に捉えない方が良いと思います。


また20歳から60歳までの40年間に渡り、一度も未納にしないで国民年金の保険料を納付しても、原則65歳から受給できる老齢基礎年金(2021年度額)は、78万900円(月額だと6万5,075円)にしかなりません。


こういった点から考えると生活保護の受給者は、年金の保険料の未納者ばかりではないと思うのです。

生活保護を批判する


政府が貧しい人々の面倒を見ることに同意しない日本人が多い

ピュー・リサーチ・センターというアメリカのシンクタンクが、日本を含めた世界47か国を対象にして、2007年にアンケート調査を実施しました。


この調査の中には「政府は貧しい人々の面倒を見るべき」という意見に、同意するか否かという質問があったのです。


同意するという回答がもっとも多かったのは、96%のスペインになりますが、他の国でも8090%くらいが同意すると回答しておりました。


一方で日本においては、同意すると回答した方が59%しかおらず、世界47か国の中で最下位でした。


かなり昔の調査にもかかわらず、ずっと頭に残っていたのは、調査結果が意外に思えたからですが、冒頭で紹介したような生活保護に対する批判を見ていると、あながち間違いではないのかもしれません。


政府が貧しい人々の面倒を見ることに、同意しない日本人が多いということは、政府は生活保護にかける予算を、他の国より削減しやすいと思うのです。


実際のところ安倍元総理は、生活保護費の1割削減を公約に掲げ、2012年に政権交代を実現しました。


これ以降は生活保護にかける予算の、大幅な削減が続いておりますが、もし安倍元総理が年金額の1割削減を公約に掲げていたら、国民からの大きな反発を招いたため、選挙に勝てなかったかもしれません。


予算の削減がこれからも続くとしたら、将来において経済的に困った時に、生活保護を受給するのが更に難しくなります。


そのため老後資金の準備などの、各人の自助努力を強化して、老後の生活を乗り切っていく必要があるのです。


退職準備額が0円の割合は40%程度で推移している

フィデリティ・インスティテュート退職・投資教育研究所は、2050代の1万人程度のサラリーマンを対象にして、退職準備や年金制度に関するアンケート調査を、2010年から継続的に実施しております。


この中で個人的に注目しているのは、「あなたは退職後の生活のための資産(退職準備額)をいくら保有していますか」という質問に対して、0円と回答した方の割合になります。


退職準備額と老後資金は同じ意味だと思うので、この質問に対する調査結果を見れば、老後資金ゼロの割合がわかるはずです。


また20102020年までの8回のアンケート調査で、退職準備額が0円と回答した方の割合は、次のようになっております。

退職準備額の比較

≪画像元:フィデリティ投信(pdf)≫

これを見ると退職準備額が0円と回答した方の割合は、直近の2020年の調査では改善しておりますが、それでも36.7%になるため、老後資金ゼロの方は現在でも、約4割はいると推測されるのです。


日本人の42.7%は老後の生活費に対する備えをしていない

フィデリティ・インスティテュート退職・投資教育研究所のような、金融系の民間機関が実施したアンケート調査は、金融商品を購入したくなるような調査結果を出すため、信じることができないと主張する方がいるようです。


そこで内閣府という公的機関が、日本、アメリカ、ドイツ、スウェーデンの、60歳以上の男女1,000人程度を対象にして、2015年に実施したアンケート調査についても紹介しておきます。


このアンケート調査の中には、50代までに行った「老後の生活費に対する備え」という質問がありますが、調査結果は次のようになっております。

老後の生活費に対する備え

≪画像元:内閣府(pdf)≫

日本は「特に何もしていない」と回答した方の割合が、42.7%になっているため、アメリカの20.9%、ドイツの26.1%、スウェーデンの25.4%と比較すると、かなり高くなっているのです。


また42.7%という調査結果は、退職準備額が0円と回答した方と数字が近いため、日本人の約4割は老後資金ゼロというのは、あり得ない話ではないと思うのです。


投資や職業能力を高めるなどの老後対策を実施する

年金だけで生活するのは難しいので、老後資金ゼロという約4割の方は、将来に生活保護を受給する可能性があると思います。


これだけ生活保護を受給する可能性のある方が存在しているのに、多くの国民が生活保護を批判するため、これに関する予算を政府が削減しやすいというのが、日本の問題点だと考えているのです。


また予算の削減が続けば、生活保護を受給するのが更に難しくなるため、自助努力を強化しないといけないのに、老後資金ゼロの割合が依然として高いというのも、日本の問題点だと考えているのです。


これに加えて内閣府のアンケート調査によると、「債券・株式の保有、投資信託」と回答した日本人は7.1%しかおらず、アメリカの33.2%、ドイツの13.5%、スウェーデンの40.5%と比較すると、かなり低い点も問題だと思います。


その理由としては周知のように、日本は金利が低いため、預貯金だけは老後資金が増えないからです。


現在はインターネット証券であれば、月々100円から投資信託の積立ができるため、「債券・株式の保有、投資信託」と回答する日本人は、もっと増えても良いと思います。


また投資信託を積立する時に、つみたてNISAなどの利益に対して課税されない制度を利用すれば、税金として徴収される分を手元に残せるため、老後資金が貯まりやすくなるのです。


それでも投資したくない方、または金銭的な余裕がまったくない方は、内閣府のアンケート調査では6.4%だった「老後のために職業能力を高める」を、強化すれば良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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