不動産を売却した場合、譲渡所得税の課税対象となり、確定申告手続きが必要になることもあります。
親族間の不動産売買であっても、譲渡所得税の対象になることはありませんし、逆に親族間売買だからこそ注意すべきポイントがあるので解説します。
目次
譲渡所得の計算は親族間売買でも同じ
譲渡所得税は、不動産を売却して利益が発生した場合に課される税金で、不動産の売主が対象者となります。
購入した金額よりも高い金額で売却した際は、差額利益に対して譲渡所得税が課される一方、赤字になった際は利益が出ていないので譲渡所得税は発生しません。
<譲渡所得の計算式>
収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除=譲渡所得
譲渡所得×税率=譲渡所得税
親族間売買では譲渡所得の特例制度が適用できない場合もある
不動産を売却した場合、3,000万円特別控除などの特例制度を適用できるケースもあります。
ただ特例制度にはそれぞれ要件があり、一定の親族に売却した際には適用できない特例も存在します。
たとえば3,000万円特別控除(租税特別措置法第35条)は、配偶者や子などに対して売却した場合には適用できません。
また生計を一にする親族へ自宅を売却後、売主が引き続きその物件に居住する場合も特例の対象外となります。
売主・買主の関係性が要件に含まれているかどうかは、特例制度ごとに異なるため、特例を受ける際は事前に適用要件を確認してください。
低額譲渡は贈与税の課税対象
親族間で不動産の売買することは認められていますし、売却金額が時価相当であれば問題になることはありません。
しかし時価相場よりも著しく低い金額で不動産を売却(低額譲渡)した場合、売却金額と時価との差額に対して贈与税が課される可能性があるので注意してください。
「時価」は、市場で通常取引される価額をいい、贈与税は経済的利益を受けた買主(受贈者)に対して課されます。
たとえば時価1,000万円の不動産を100万円で売買した場合、買主は不動産を時価よりも900万円安く購入できた(経済的利益を受けた)ことになりますので、900万円に対する贈与税を支払うことになります。
売却金額を設定した根拠を提示できるようにすること
時価は不動産の所在する地域によって違いますし、低額譲渡とみなされる具体的な金額は明示されていません。
そのため税務署から指摘を受けないためにも、親族間での不動産を売買する際は、売却金額が時価相当である根拠を示せるように準備してください。
時価を算定する一例としては、売り出されている対象物件周辺の土地の金額を参考にしたり、路線価図から時価を算出するなどの方法があります。
売却金額が時価相当である根拠を示すことができれば、みなし贈与の対象となる可能性は低いです。
親族だからとの理由で売値をオマケすると、税金面で損をすることもありますので、売却金額を決める際は十分気を付けください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)