脱税は絶対にダメですし、元税務署職員の筆者としてもオススメすることはありません。
しかし知識として、脱税が成功するのに必要な期間は知っておくのも悪くないと思いますので、今回は贈与税の時効が成立するまでの期間について解説します。

目次
税金の時効は通常5年
税金に関する法律は数多く存在しますが、国税についての基本的な事項や共通事項を定めているのが「国税通則法」という法律です。
国税通則法第70条では賦課権について定められており、対象となる国税の法定申告期限から5年を経過すると時効が成立します。
賦課権とは、税務署長が国税債権を確定させる処分・更正・決定・賦課決定を行うことができる権利です。
時効が成立すると国は賦課権を行使できなくなりますので、納税者が納税額を少なく申告していたとしても税金を回収することはできません。

贈与税の時効期間は6年
国税の時効は原則5年ですが、贈与税の時効については6年と、国税より1年長いです。
贈与税の時効期間が長いのは、贈与の実態を把握するのに時間を要するなど、贈与税特有の性質が関係しており、相続税調査のタイミングで贈与税の調査を実施することもあります。
ちなみに贈与税に関する規定は「相続税法」に定められており、「贈与税法」という法律は存在しませんので、贈与税についての条文を確認される際はご注意ください。
意図的な税金逃れの時効は7年
計算誤りなどにより、納税額を少なく申告していた場合の時効期間は5年(贈与税は6年)ですが、脱税行為により税金逃れをしていた場合には、時効が7年になります。
時効が7年に延長されるケースとしては、
・ 申告内容を偽ったり不正の行為などにより税金逃れをした場合や、
・ 不正還付を受けた場合
です。
贈与事実を隠したり、贈与した金額を意図的にごまかしたりすると、贈与税の時効は6年から7年に1年延長となります。
贈与税の時効が成立しないケース
贈与税は、法定申告期限から6年(7年)経過すると時効を迎えますが、税務署は贈与行為自体を認めないことがあります。
贈与行為は、贈与者と受贈者が贈与することを互いに認識した場合に成立し、贈与事実があった年分の贈与税の課税対象となります。
しかし贈与者が勝手に受贈者の銀行口座を作成してお金を積み立てていた場合には、受贈者は贈与を受けたことを知らないため、贈与行為は成立せず、贈与税の申告義務も生じません。
贈与税の時効までの期間は申告期限からカウントしますので、贈与事実が無ければ時効が成立することはなく、贈与者が積み立てた預金は「名義預金」として、相続税の課税対象となります。

脱税が絶対に推奨できない理由
知識として脱税について説明しましたが、脱税を推奨することはありません。
納税は国民の義務との理由もありますが、コスパで考えても脱税を行うのは割に合わないです。
税務調査で脱税を指摘された場合、本税に加えて加算税と延滞税を支払うことになりますが、無申告だった場合の重加算税の税率は40%と高額です。
脱税が見つかったら税負担が40%増となるリスクを負うのであれば、特例制度などを活用し、合法的に節税した方が現実的かつ合理的といえます。
税務署は一時の過ちであっても許すことはありませんので、税金の支払いを少なくする際は、脱税ではなく節税する方法をご検討ください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)