税理士に申告書の作成依頼をする際は、報酬費用が発生します。
そのため相続税に関する費用を抑えたいのであれば、相続人だけで申告書を作った方がいいでしょう。
一方で、税理士は節税に関する知識を持っているため、本記事で紹介するケースに該当する場合、節税の観点から申告書の作成依頼をした方がいいかもしません。
目次
複数の土地を所有している場合
相続税は、相続が発生した時点の財産を算出し、納税額を計算することになります。
相続税評価額の計算方法は財産の種類ごとに異なり、特に評価方法が難しいのが土地です。
土地評価は、面積や土地の形状によって補正計算が必要になることがあり、補正計算のミスで評価額が1割以上変わってしまうことも珍しくありません。
土地の補正計算は基本的に評価額を減額させるものですので、補正を行わなければ土地が過大に評価され、相続税を余分に納めることになってしまいます。
非上場会社の株式を保有している場合
相続税評価額の計算で最も難しいとされるのが、非上場会社の株式評価です。
上場株式であれば公表されている株価を用いることになるため、相続人が株価を計算する必要はありません。
しかし非上場株式については株価が公にされていませんので、相続人が株価(相続税評価額)を算定することになります。
非上場株式の評価は、会社の規模や取得した人の立場によって評価方法が違うのが特徴であり、評価方法によって株価は大きく変わることもあります。
同族会社の株式を評価する際は、評価会社の利益や配当などから評価額を算出しなければならず、相続人の方だけで評価額を計算するのは大変です。
また評価誤りによる指摘を受ける可能性も上がりますので、専門家に株式評価を依頼することも選択肢となります。
税務調査リスクを下げたい場合
相続税の税務調査は、申告内容に誤りがあった場合や、申告漏れとなった相続財産がある場合に行われます。
ほとんどの相続人は相続税の申告書を作成したことがありませんので、計算ミスが発生する可能性は高く、相続開始前に出金した手持現金など、申告すべき財産の計上漏れは指摘されやすいです。
似た内容の相続税の申告書が2つ提出された場合、税理士関与がしている申告書の方が申告誤りをしている可能性は低いため、相対的に税務調査を受ける確率は低くなります。
相続人だけで申告書を作成できるケースとは
相続税の申告書作成は、必ず税理士に依頼しなければいけないものではありません。
相続財産の種類が少なく、主な財産が現金・預金の場合には複雑な計算を行うことがないため、相続人だけで申告書を作ることもできます。
また税務署は税収を増やすために税務調査を実施しますので、特例制度を適用することで相続財産の評価額が基礎控除額を大きく下回る場合など、増収が見込めない申告書に対して調査を行う可能性は低いです。
そのため相続が発生しましたら相続財産の種類を把握していただき、財産の種類などから相続人のみで申告書の作成が難しいと判断した場合、税理士へ依頼することも検討してください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)