本記事をお読みの多くの方がつみたてNISAやiDeCoといった非課税制度を活用して積立投資を実践されていることと思います。
積立投資の目的は人それぞれですが、多くの場合が数十年先のための資産形成だと思います。
一番多いパターンが老後生活資金でしょうか。
老後資金用であれば老後を迎えた時にしっかりと資産を取り崩して有意義に活用することが大切になってきます。
30代や40代の方が老後資金準備のために積立しているのはわかりますが、70歳になっても80歳になっても老後資金準備として積立投資をしていてはもはや何のための投資なのかわからなくなってしまいます。
取り崩す必要ないほどの資産が潤沢にあれば問題ありませんが、「取り崩すことが心配だから」という理由で使わなかった場合、後悔することになりかねません。
豊かな老後生活を送るためにも「資産を長持ちさせながら取り崩す方法」を紹介したいと思います。
今現在、将来のために積立投資を実践している方ほど知っておいていただきたい内容になります。
目次
積立は「定額」で行うが、取り崩しは「定率」で行うことが大原則
資産形成期は定額で積立していくことがセオリーとなっています。
いわゆる「ドルコスト平均法」のことですが、毎月一定額を積立投資している方はこれを実践していることになります。
つみたてNISAやiDeCoを活用している方はもちろん、クレジットカード積立もこの部類に入り、長期的な資産形成の王道となっています。
このドルコスト平均法の最大のメリットは「割高な時に少ない口数、割安な時に多い口数」を購入することができることにあります。
株価の動きが読めない中で、どのように動いたとしても低リスクで資産形成ができる方法として初心者から上級者まで人気の手法です。
では実際に老後を迎え、資産活用期に入った場合はどのように取り崩せばよいのでしょうか。
取り崩し方法には大きく分けて2つのパターンがあります。
・ 毎年同じ金額ずつ取り崩す「定額」取り崩し
・ 毎年同じ割合ずつ取り崩す「定率」取り崩し
です。
資産形成期と同様に「定額」で取り崩す方がよいのか、はたまた「定率」で取り崩す方がよいのか。
結論としては「定率」取り崩しが原則となります。
定額取り崩しだと株価暴落時に「安く売る」ことになってしまう
皆さんご存知の通り、株価がどう動くかは誰にもわかりません。
順調に右肩上がりが続けば安心ですが、暴落局面を迎える可能性もあり得ます。
むしろ数年おきに「〇〇ショック」があることを考えると、必ず暴落局面があると考える方が自然でしょう。
定額取り崩しの問題がここにあります。
定額取り崩しはその名の通り毎年決まった金額を取り崩して生活費に充てる方法です。
例えば毎年300万円を取り崩していたとします。
株価が安定している時と下落してしまった時で比較すると、同じ金額を取り崩すために多くの口数を売却する必要が出てきます。
株価が1万円だとして、300万円を得るためには300口売却することになりますが、株価が下落して5,000円になってしまった場合、同じ300万円を得るためには600口も売却する必要が出てきてしまうのです。
つまり資産の「安値売り」になってしまうということです。
人生の長い期間をかけて積立してきた大切な資産を安売りしてしまうのは誰しもが避けたいのではないでしょうか。
対して定率取り崩しだとこの問題を避けることができます。
毎年4%ずつ取り崩すと決めていたとします。
株価が1万円の時は400口、5,000円の時は200口と株価が高い時ほど多くの口数を売却することになり、しっかりと「高値売り」をすることになります。
資産は「安く買って高く売る」ことが大切ですが、定率取り崩しを実践することによって効率的に資産を活用することができているということになります。
株価暴落時は安全資産(預貯金)から使っていく
定率取り崩しを活用することによって安売りを避け、効率的に資産を活用することができる点はわかったが、実際に取り崩す金額が少なくなってしまい、生活費が足りない場合はどうしたらよいのか。
その場合は安全資産、つまり預貯金から使うようにしてください。
多くの場合、総資産が株や投資信託のみということはないはずです。
緊急予備資金としての預貯金も確保していることが想定されます。
資産を取り崩す際、積立投資で増やしてきた株や投資信託などのリスク資産だけではなく、預貯金などの安全資産も含めたトータルで考えることが大切です。
誰しもが大切な資産を安売りしたくないと考えるでしょう。
暴落時に株や投資信託を売却することに不安を感じる方も多いはずです。
そこで活用するべきなのが預貯金です。
資産活用期では資産を守りながら取り崩すことが長持ちさせる秘訣となります。
株や投資信託といったリスク資産のみを取り崩す方法だと暴落時にも資産を売却する必要があり、資産の目減りスピードが上がってしまいます。
ですが預貯金を含めた安全資産からも取り崩す方法を取ることによってバランス良く資産を活用することが可能です。
5年間分ほどの生活費、できれば10年間分を預貯金として確保できていれば安心でしょう。
これが「現金クッション」の考え方です。
老後などの資産活用期にはバランス良く資産を取り崩していくことが求められます。
株価が好調な時は何の問題もなく取り崩すことができるでしょう。
逆に暴落時にはリスク資産のみでなく、預貯金からも現金クッションとして取り崩しを行う。
これが資産を長持ちさせながら取り崩す方法です。(執筆者:FP技能士2級、証券外務員1種 冨岡 光)