年金受給者も現役世代と同様に、一定の所得があれば確定申告が必要となります。
在職中の場合は職場で年末調整をおこなってもらい、年間で納めるべき税の清算が行われます。
他方、医療費控除など、年末調整では対応できないものについては、別途確定申告が必要です。
今回は年金受給者の方が多く気にされる「年金受給者の確定申告」について解説します。
目次
年金の課税対象
年金は税法上「雑所得」に分類され、所得税の対象になります。
まず、年金には大きく分けて3つの種類があります。
- 老齢
- 障害
- 遺族年金
の3種類であり、このうち、「障害」と「遺族」年金については非課税となります。
これは国民年金から支給されるもの、厚生年金から支給されるもの、いずれも非課税です。
また、障害や遺族年金と合わせて支給される「年金生活者支援給付金」も同様に非課税です。
すなわち、所得がこれのみ(例えば障害年金のみ)という場合は、申告の必要がないということになります。
社会保険上の収入と税法上の収入
「障害」と「遺族」年金については非課税ですが、これはあくまで「税法上」の話です。
例えば配偶者や子供の扶養に入るという場合、収入要件(年収130万円未満)がありますが、この収入要件には「障害」と「遺族」年金も含めて考えることになっています。
年金収入以外に収入のある方
例えば不動産収入など、障害年金以外に所得がある場合、確定申告は必要です。
年金のみが収入の方
例えば老齢年金のみを受給しておられ、かつ、
- 年齢が65歳未満である場合は受給額が108万円以下、
- 年齢が65歳以上である場合は受給額が158万円以下
の場合、所得税を支払う必要がありません。
この額を超えてくると、超えた分に対して所得税が発生し、源泉徴収が行われます(年金から所得税が天引きされて振り込まれます)。
ただし、この天引きされている額は概算額ですので、現役時代の年末調整のように毎年、年末に清算手続きをしてもらえるわけではありません。確定申告をして清算をする必要があります。
確定申告不要制度
年金受給者となれば、多くの場合、年齢的にもご高齢という場合は少なくありません。
そこで、確定申告不要制度という制度があり、次の2つの要件を満たした場合に確定申告が不要になるという制度です。
- 公的年金等の受給合計額が400万円以下
- 公的年金等にかかる雑所得以外の所得が20万円以下
2. については、生命保険の契約に基づき支払われる個人年金や満期返戻金を指しています。
注意点
確定申告は不要であっても住民税は申告が必要となる場合がありますので、市区町村に確認するようにしましょう。
なお、確定申告した場合は税務署から地方自治体にデータ送信がされますので、改めて住民税の申告をする必要はありません。
また、毎年確定申告の対象外になっていたとしても、
- 生命保険の満期返戻金を受給した
- 個人年金が支払われた
などといった事情があった場合は、今年も対象にならないなのかを確認しておくことをおすすめします。
理由として、「雑所得以外の所得金額が20万円以下」に該当しない可能性があるからです。
他には、
- 一定額以上の医療費を払った
- 災害や盗難に遭った場合、
所得税の還付対象となる場合も考えられます。
このような場合には、還付を受けるために確定申告をする必要があるので、あわせておさえておきましょう。
特に大きな手術をした場合などは「医療費控除」の対象になる可能性があります。
各税金の相談先
相談先は、
- 所得税については税務署
- 住民税については地方自治体
- 年金関連については年金事務所
となります。
特に何が雑所得にあたるのか、また、源泉徴収票を紛失したというケースも出てくるかもしれません。
また、確定申告にも期限がありますので、スケジュールには余裕をもって行うようにしましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)