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固定残業制度と社会保険上の抜け落ちがちな論点とは?

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固定残業制度と社会保険上の抜け落ちがちな論点とは?

給与支給形態のひとつに、固定残業代制度があります。

多くの労働判例で固定残業代制度について争いがありますが、適正な取り扱いをすれば直ちに違法な制度ということは全くありません。

また給与と社会保険は切り離して考えることができず、給与制度の導入や廃止時には多くの場合、社会保険にも何らかの影響が及びます。

そこで、今回は固定残業代と社会保険の関係について解説します。

固定残業制度と社会保険 の関わり

固定残業代とは

固定残業代とは、毎月労使双方で合意した「みなし残業時間数分の時間外労働手当等」を固定的に支給する給与形態のひとつです。

例えば毎月10時間分のみなし残業時間分の手当として、固定的に2万円を支給するなどの支給形態が考えられます。

  • 特に求人を行う場合においては、
  • 何時間分の残業時間をみなすのか、
  • 固定残業代を除いた基本給の額、
  • みなし残業時間を超えて働いた場合は追加で割増賃金を支給する等

を明示しなければならないルールがあります。

固定残業代を廃止する場合

固定残業代は毎月決まった額の支給をしなければならず、かつ、みなし残業時間を超えた労働があった場合は「追加」で割増賃金を支給しなければならないため、人件費が高騰するとの声もあります。

もちろん、一度固定残業制度を導入したら廃止することは不可能ということはありませんが、廃止する場合は(固定残業制度に関わらず)労使合意を得た後に廃止しなければなりません

固定残業制度を廃止する契機として、実際の残業時間数とあまりにも乖離があるということが挙げられます。

ただし、実務上は固定残業制度を廃止または見直す際は不利益緩和のために、経過措置を設けることがあります。

例えば固定残業代と実際の残業の差額を「手当」として補填するケースです。

社会保険

社会保険においては毎年必ず4月から6月の報酬を集計し、その年の9月から適用される標準報酬月額を決定する算定基礎届があります。

その他に固定的な賃金の変動があり、かつ、2等級以上の変動があれば「月額改定届」があります。

例えば、労働時間に比例して支給額が変動する通常の残業代は、そもそも固定的賃金ではなく「非固定的賃金」にあたるため、月額改定届の対象となる固定的賃金にはあたりません。

経過措置として導入された手当が終了し、通常の実労働時間に応じた給与体系になったケースが想定すると、注意点として、労働時間によって変動する賃金は非固定的賃金と解されますが、制度の「廃止」は「賃金体系の変更」にあたるため、月額改定届の対象となります。

労使交渉

月額改定届の注意点

月額改定届はベースアップだけでなく、ベースダウンのケースも契機となります。

また時給から月給への変更(給与体系の変更にあたる)も対象となるだけでなく、手当額の変更も対象となることから、給与計算においても非常に高度な注意が要求されます。

また、変動の契機となった月から4か月目に標準報酬月額が改定されますので、給与計算において当て込む月がミスマッチしてしまうと正しい給与支給額ではなくなってしまいます。

月額改定届にあたるか否かは日本年金機構においても具体的な事例が公表されており、ある程度、類似のケースが収録されています。

給与計算が複雑になるケースも

固定残業制度は影響範囲が広い

固定残業制度は生産性が高く、ほぼ残業が発生しないような働き方をする労働者にとっては、非常にメリットが大きな制度です(毎日定時で帰社しても固定残業代が支給されるため)。

他方、企業側にとっては労務管理の面(労働法上も社会保険法上も)で注意しなければならない点が多くあります。

労働法上も社会保険法上も影響範囲が多く、特に社会保険においては老後の年金にも直結するため影響が大きな論点と言えます。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)


《蓑田 真吾》
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蓑田 真吾

執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾 蓑田 真吾

社会保険労務士 独立後は年金などの社会保険制度、人事労務管理に関する講演活動を行い、また、労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は有効的な社会保険制度の活用、様々な労務管理手法を積極的に取り入れ、企業をサポートしています。 【他保有資格】2級ファイナンシャル・プランニング技能士、労働法務士 等 寄稿者にメッセージを送る

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