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【年金をもらいながらの働き方】どんな場合に年金が一部減額、または全額支給停止されるのか?

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【年金をもらいながらの働き方】どんな場合に年金が一部減額、または全額支給停止されるのか?

【この記事の最新更新日時 2024年3月6日】

サラリーマンや公務員などの給与所得者が60歳以降も働く場合は、給与と年金額に応じて年金の全部または一部について老齢厚生年金が支給停止されます。

この年金のことを在職老齢年金といいます。

在職老齢年金は「働きながら受給できる年金」となっていますが、簡単に言ってみれば、本来受け取れる老齢厚生年金が働くことによって減額されるということに他なりません。

具体的には、勤務先が厚生年金保険の※適用事業所で、厚生年金に加入している人が60歳以降も働いて老齢厚生年金を受給している場合、老齢厚生年金の受給額と給与の受給額に応じて、年金額の一部または全部が支給停止される制度です。

※適用事業所とは、厚生年金に強制的に加入することが求められる事業所のことで、株式会社のような法人事業所や国・地方公共団体等および従業員が常時5人以上の個人事業所(一部の場合を除く)などが該当します。

年金を もらいながらの 働き方

在職老齢年金の主な要件および留意点

対象者は60歳以上の人で、継続雇用・転職を問わず勤務先が厚生年金の適用事業所であること

労働時間および労働日数が、就業規則に定める一般社員の4分の3以上などの要件を満たせば、適用事業所に勤務する契約社員、パート、アルバイトなども含まれます。

・65歳から支給開始の老齢基礎年金(※経過的加算分も含む)は、この制度の対象外なので全額支給される

※経過的加算を説明する前に、少し長くなりますが60歳台前半(60歳~65歳未満)の老齢厚生年金について述べておきます。

60歳台前半(60歳~65歳未満)の老齢厚生年金について

この期間の年金は「特別支給の老齢厚生年金」と呼ばれ「報酬比例部分」と「定額部分」の2つから構成されています。

報酬比例部分は、厚生年金に加入していた期間(月数)と賞与を含んだ平均月収をもとに計算して支給されます。

この年金は65歳から支給される老齢厚生年金に相当します。

もう一つの定額部分は、厚生年金に加入していた期間(月数)をもとに計算して支給されます。

この年金は65歳から支給される老齢基礎年金に相当します。

そのうち、定額部分と老齢基礎年金は、加入期間や算出方法などが異なることによって定額部分が老齢基礎年金より多くなる場合があります。

その場合、定額部分の金額を保障する目的で、その差額部分は65歳から支給される老齢厚生年金に加算して支給されます。これを経過的加算と呼びます。

なお、特別支給の老齢厚生年金は昭和36年4月2日以降生まれの男性または昭和41年4月2日以降生まれの女性からこの制度がなくなりますので、この年齢に該当する人は、公的年金が65歳になるまで無年金となるため個人的な対策も必要となります。

・ 老齢厚生年金の繰上げ支給および繰下げ支給も支給停止の対象となる

このうち、繰下げ支給については、受給の有無に関係なく支給停止となり、退職後においても支給停止となった金額の還付はありません。

・全額支給停止となる場合は※加給年金も支給停止となる

※加給年金とは、厚生年金に加入している期間が20年以上ある人が、65歳到達時点で、その人に生計を維持されている配偶者や子がいるときに老齢厚生年金に加算される年金のことをいいます。

なお、配偶者は65歳未満、子は18歳到達年度の末日などの年齢制限および所得制限などの要件があります。

・高年齢雇用継続給付※を受けている期間は給付額に応じて年金の一部が支給停止される

高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の雇用継続給付の一つで60歳から65歳未満の給与所得者が失業等の給付を受給せずに雇用を継続する場合、60歳到達時点に比べ給与額が75%未満に低下している状態で引き続き働くとき一定の要件に応じて支給される制度です。

なお、この制度は継続雇用の義務化や就労年齢を70歳まで引き上げる努力義務などの国の方針に伴い、2030年には廃止の方向で検討されています。

・70歳以上の人が、それ以降も転職を含め働く場合は、厚生年金の被保険者でなくなるため保険料の支払いは生じないが、在職による支給停止の対象となる

・請求等の手続きは基本的に勤務先が年金事務所に申請する

なお、申請後の手続きについては、給与額の変動による標準報酬月額の変更や賞与の支給額(月ごとに見直される)を勤務先が年金事務所に届出を行います。

また、退職した場合には、その翌月から老齢厚生年金の減額や全額支給停止が解除されます。

手続きについては、勤務先が届出を行います。

などです。

どういう場合にいくら減額されるのか?

この制度のしくみは、月給と老齢厚生年金(加給年金を除く)の月額の合計額が年金減額基準値以下の場合は年金がそのまま全額支給され、それを超える場合は超えた額の半分が支給停止となります。

2022年3月以前の65歳未満の人の在職老齢年金の計算方法は、月給(47万円)と老齢厚生

年金の月額(28万円)の二つの基準額をベースに計算されていたので少し複雑でしたが、2022年4月以降は、65歳以上の計算式と同じになりました。

さらに、65歳未満の人の支給停止基準額も今年2023年4月からは48万円に改定されています。

支給停止額の計算式は

(老齢厚生年金の月額 (※基本月額)+月給(※総報酬月額相当額) – 48万円)÷ 2

で求められます。

※基本月額は、老齢厚生年金(退職共済)の報酬比例部分の月額

※総報酬月額相当額は、該当する月の※標準報酬月額「基本給+各種手当(通勤手当・家族手当・残業手当等)+該当する月以前1年間の標準賞与額の合計(年間賞与額÷12)

※標準報酬月額とは報酬月額を1等級から31等級に区分した標準報酬月額表の等級に該当する金額をいいます。

例えば、報酬月額が31万5,000円の場合、20等級(31万円~33万)なので、標準報酬月額は32万円となります。

【具体例】

総報酬月額相当額 42万5,000円(標準報酬月額32万円+標準賞与額10万5,000円)

基本月額 15万円

15万円-(42万5,000円+15万円-48万円)÷2

上記のケースの場合でいうと、老齢厚生年金の支給停止額は、月額4万7,500円なので、在職老齢年金の支給月額は10万2,500円となります。

因みに、全額支給停止となる月給相当額(総報酬月額相当額)は63万円以上となる計算です。

いずれにしても、この制度は、月給と厚生年金の月額の合計額が月48万円を超えなければ年金受給額は減りません

「48万円の壁」は、決して家計を圧迫するレベルとはいえませんが、60歳以降の働き方を考える際の一つの材料としてこの制度を知っておくとは大事です。

なお、在職老齢年金の詳細については、勤務先や住所地を管轄する年金事務所または年金相談センターなどに問合せください。

《小林 仁志》
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小林 仁志

執筆者:CFP、1級FP技能士 小林 仁志 小林 仁志

オフィスアセットポート 代表 山梨県生まれ。電器メーカーに入社後本社および米国・シンガポール・マレーシア等の事業所に勤務。在職中は財務経理を中心に総務人事・経営戦略・内部監査等の職種を経験したほか、同社の子会社監査役を務め2011年退任、2012年4月より独立系FPとして事業活動を開始。専門分野においては、特に団塊世代の年金・医療保険・税金等のリタイアメントプランや旅行とお金のプラン、住宅ローンや保険の見直し、株式・投資信託等の資産運用など。 <保有資格>:CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士、総合旅行業務取扱管理者、登録ロングステイアドバイザー(ロングステイ財団)、他 寄稿者にメッセージを送る

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