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在職老齢年金のよくある誤解とは?「年収〇〇円以上ならカット」という理解はNGなわけ

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在職老齢年金のよくある誤解とは?「年収〇〇円以上ならカット」という理解はNGなわけ

年金カット法とも表現される在職老齢年金制度は多くの誤解があります。

その中の1つに年金のカットの基準となる報酬があります。

今回は、在職老齢年金の誤解の1つである、年金のカットの基準について解説します。

在職老齢年金のよくある誤解とは?

在職老齢年金とは?

老齢年金は老後の所得保障という性質があり、一定以上の報酬を受けている場合には、年金額が調整される制度上の仕組みが設けられています。

この制度は、国民年金法には設けられていないものの、保険料が「報酬比例」となる厚生年金保険法に設けられている制度であり、老齢厚生年金に適用されます。

端的には、国民年金から支給される老齢基礎年金については、報酬が高いからといって年金をカットするという制度はないと理解になります。

よくある誤解

厚生年金から支給されるといっても、障害厚生年金や遺族厚生年金についてはそもそも支給趣旨が老後の所得補償ではないため、報酬が高いと言う理由で年金額が調整されるような制度はありません

他によくある誤解として、調整されてしまった分の年金は、報酬が低くなったときに戻ってくると考えられているケースがありますが、その時にカットされた年金はその後報酬が下がったからといって戻ってくるという仕組みは存在しません

また、ミスリードとなりやすい点でもありますが、法律上は年金の調整を支給停止と表現しているため、停止された分は戻ってくるのではないかと考えられることがありますが、決してそのような解釈ではありません

次に、在職老齢年金制度で報酬の対象となるものは、あくまで厚生年金に加入している事業所からの報酬に限定されます。

すなわち、複数の会社に勤務しており、複数の会社から収入を得ていたとしても、厚生年金に加入していない会社からの報酬は、在職老齢年金のカットの対象となる報酬には含まれません

注意点としては、労働者の場合、極端に労働時間が短い場合には社会保険の適用対象にならず、未加入でも問題はありませんが、役員の場合は労働時間という概念がないため、報酬を得ている場合には、社会保険への加入義務が生じます。

役員として報酬を得ている場合には社会保険への加入義務が生じる

年収と報酬

年収◯◯◯円などと言う報道は多く見受けられ、豊かさを年収で表現するケースは増えてきている印象です。

年金相談においても、特に経営者の場合、年収◯◯◯ 円以上だと年金がもらえないと考えられているケースにも遭遇しますが、在職老齢年金の考え方としては年収でカットの額が決まるという事はありません

在職老齢年金でのカットの対象となる報酬は、年収ではなく、厳密には標準報酬月額と標準賞与額です。

例えば、年収が1,000万円であったとしても、標準報酬月額はそこまで高くなく、例えば不動産収入や副業収入が高額であったがゆえに年収1,000万というケースの場合には、在職老齢年金によってカットされる年金が全くないというケースも十分に考えられます。

いままで在職老齢年金によってカットされた事はなかったものの、ある年に限ってカットされたと言う相談もあります。

その場合に考えられる1つのケースとして、

業績が向上したために、思いのほか高額の賞与が出た

というケースです。

賞与の場合には支給額の1,000円未満を切り捨て、標準賞与額を算出しますが、標準賞与額も在職老齢年金の制度上の報酬に含まれるため、決算賞与等の額によってはその年に限って、在職老齢年金の影響を受け、年金が全部または一部カットされたというケースもあり得ます。

賞与の影響でその年だけ年金がカットされたというケースもある

年収=在職老齢年金のカットと言う考え方は誤り

標準報酬月額も標準賞与額も、広い視点に立つと年収に直結するものではありますが、厳密な意味では、標準報酬月額と標準賞与額を合わせても必ず年収と一致すると言う事はないでしょう。

よって、年収=在職老齢年金のカットと言う考え方は誤りということになります。

《蓑田 真吾》
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蓑田 真吾

執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾 蓑田 真吾

社会保険労務士 独立後は年金などの社会保険制度、人事労務管理に関する講演活動を行い、また、労務トラブルが起こる前の事前予防対策に特化。現在は有効的な社会保険制度の活用、様々な労務管理手法を積極的に取り入れ、企業をサポートしています。 【他保有資格】2級ファイナンシャル・プランニング技能士、労働法務士 等 寄稿者にメッセージを送る

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