夫婦が離婚をする際、財産分与や養育費の支払いが発生することがあります。これらは離婚後の生活を支える重要な要素ですが、一部のケースにおいては、贈与税の課税対象になることがあるので注意が必要です。
本記事では、財産分与と養育費に関する税務上の留意点について解説します。

離婚時の財産分与と贈与税
離婚時に行われる財産分与では、贈与税がかかるケースとかからないケースがあります。
財産分与で贈与税は原則かからない
離婚に伴い財産を受け取った場合、基本的に贈与税は課税されません。これは財産分与が単なる贈与ではなく、婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産の分割や、離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づく給付であると考えられるため、贈与税の非課税対象となっています。
ただし、財産分与で不動産を相手に渡す場合には、分与した側が譲渡所得の課税対象となる点には注意が必要です。
財産分与で贈与税が課されるケース
離婚時の財産分与に対して原則贈与税は課されませんが、以下のいずれかに該当する場合は課税対象になります。
◯分与された財産が過剰である場合
財産分与の額が、婚姻期間中に夫婦が共同で築いた財産の額や、その他の事情を考慮してもなお過剰であると認められる場合、その超過分に対して贈与税がかかります。
◯税負担の回避を目的とした離婚の場合
離婚が、贈与税や相続税の負担を回避する目的で行われたと認められる場合、離婚によって移転した財産すべてが贈与税の対象となります。たとえば、相続税対策の一環として、財産分与で大半の相続財産を相手方に渡した場合には、贈与税の非課税対象から外れます。
養育費と贈与税の関係
離婚によって子どもと別居する場合でも、親には教育費を負担する義務がありますが、状況によっては贈与税が課されることがあります。

親が支払う教育費は原則非課税
扶養義務者が被扶養者に対して支払う教育費は、必要な都度支払われる限り、贈与税の非課税対象です。離婚により子どもと別居したとしても、親は扶養義務を負っているため、教育費を渡しても基本的に贈与税は課されません。
養育費が贈与税の対象となるケース
次のようなケースに該当する場合、教育費として支払ったものでも贈与税の対象になります。
◯養育費を使用せず貯蓄していた場合
贈与税が非課税になるのは、教育費のために支払われる資金に限られます。
養育費の名目で支払われた金銭でも、教育費として使わずに預貯金として積み立てた場合には、贈与税の課税対象となります。
◯養育費を不動産や株式などの購入資金に充てた場合
株式や家屋の購入代金として使用した場合には、教育費として通常必要と認められる以外のものと判断され、贈与税の課税対象となります。そのため、受け取った養育費については、そのまま教育費として使用しなければなりません。
まとめ
財産分与や教育費が贈与税の課税対象になるかは、経済状況や社会通念なども考慮されるため、具体的な金額基準は定められていません。贈与税の課税対象になったとしても、贈与税には110万円の基礎控除額があるため、贈与金額が110万円までなら贈与税はかかりません。
なお、離婚後の財産分与や養育費は高額になることもありますので、実際にお金等のやり取りをする際は、専門家に相談しながら進めることが望ましいです。