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「介護してきたのは私」。何も言わなければ相続は同じ?『寄与分』で取り分が変わることも

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「介護してきたのは私」。何も言わなければ相続は同じ?『寄与分』で取り分が変わることも
「介護してきたのは私」。何も言わなければ相続は同じ?『寄与分』で取り分が変わることも

お盆に実家へ帰り、親の介護や相続の話になった方もいるのではないでしょうか。

「介護してきたのは私なのに、相続はきょうだいと同じなの?」

そんな疑問を持つ人は少なくありません。実際には、介護した人の取り分を増やせる「寄与分」という制度があります。ただし、介護した事実だけで認められるわけではなく、自分から主張しなければ反映されない制度です。さらに、長男の妻など相続人ではない人は「寄与分」ではなく別の制度になり、期限も異なります。制度を知らないまま相続が終わると、介護の苦労を相続に反映できないこともあります。

お盆に集まって、ふと思った「介護してきたのは私」

「入退院の付き添いも、毎日の食事も、ぜんぶ私がやってきたんです。」お盆で久しぶりに実家へ集まった席で、そう口にしたのは、親を長年在宅で介護してきた50代の長女でした。遠方で暮らす兄や弟は、盆と正月に顔を出す程度でした。日々の世話は、近くに住む長女がほとんど一人で担ってきたといいます。

話題が実家の今後や相続におよぶと、長女の胸に小さな引っかかりが生まれました。いざ財産を分けるとき、きょうだいで均等に、というのが自然な流れかもしれません。ですが、何年も親のそばで介護を続けてきた自分と、たまに帰ってくるだけのきょうだいが、まったく同じ取り分でよいのか。そんな思いが、ふと頭をよぎったそうです。

こうした引っかかりに、法律はひとつの答えを用意しています。それが「寄与分」です。介護や家業の手伝いで親の財産を支えてきた相続人が、その貢献を相続の取り分に反映できる仕組みで、まずはその中身から順に見ていきましょう。

寄与分とは。介護や家業で親を支えた相続人への上乗せ

寄与分とは、亡くなった方(被相続人)の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人がいる場合に、その人の取り分を法定相続分より多くできる制度です。民法904条の2に定められており、相続人どうしの公平を図るための仕組みといえます。

対象になるのは、被相続人の事業を無償で手伝ったり、療養看護にあたったりして、財産が減るのを防いだ、あるいは増やした相続人です。日々の介護で入院や施設の費用を抑えたケースは、この療養看護にあたります。ただし、ふつうの親子の助け合いを超えた「特別の」貢献であることが前提で、単に同居していた、たまに様子を見ていた、という程度では認められにくいのが実情です。

イメージをつかむために、簡単な例で考えてみます。仮に遺産が2,000万円、相続人が子ども2人で、片方に400万円の寄与分が認められたとします。まず遺産から寄与分を引いた1,600万円を2人で分けて各800万円、貢献した子はこれに400万円を足した1,200万円、もう一方は800万円です。このように、寄与分はいったん取り分の計算から外し、あとで貢献した人に戻すかたちで反映されます。

実子は「寄与分」、長男の妻は「特別寄与料」

ここで間違えやすいのが、誰が寄与分を主張できるのか、という点です。寄与分を受け取れるのは、あくまで相続人に限られます。今回の長女のように、被相続人の子であれば相続人ですから、介護の貢献を寄与分として主張できます。

一方、相続人ではない親族には寄与分は認められません。よくあるのが、長男の妻(いわゆる長男の嫁)が義理の親を介護してきたケースです。子の配偶者は民法上の親族ではあっても相続人ではないため、以前はどれだけ尽くしても金銭を求める道がありませんでした。

そこで2019年7月1日から、「特別の寄与」という別の制度が設けられました。相続人以外の親族が、無償で被相続人の療養看護などを行い、財産の維持や増加に特別の寄与をした場合、相続人に対して「特別寄与料」を請求できます(民法1050条)。ただし注意したいのが期限です。特別寄与料は、相続の開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始の時から1年を過ぎると、家庭裁判所に申立てできなくなります。寄与分も、相続開始から10年を過ぎた遺産分割では原則として考慮されなくなります(例外や経過措置があります)。特別寄与料の期限はそれよりずっと短い点に気をつけてください。

寄与分の主な5つの型。在宅介護は療養看護型

寄与分は、どんな形で貢献したかによって、実務上おおむね次の5つの型に整理されます。自分のケースがどれにあたるかを知っておくと、主張の見通しが立てやすくなります。

「介護してきたのは私」。何も言わなければ相続は同じ?『寄与分』で取り分が変わることも

長年の在宅介護は、このうち療養看護型にあたります。気になる金額ですが、いくらになるかはケースによって大きく変わります。療養看護型では、介護の報酬相当額に日数や貢献の度合いを掛け合わせて考えるのが実務の目安ですが、最終的な額は相続人どうしの話し合いや家庭裁判所の判断で決まります。民法も、寄与の時期や方法、程度、相続財産の額など「一切の事情を考慮して」定めるとしており、金額を一律に計算できる性質のものではありません。

認められるための要件と、決めるまでの順番

寄与分が認められるには、いくつかの要件を満たす必要があります。第一に相続人であること、第二に被相続人の財産の維持や増加に貢献したこと、第三にそれが通常の助け合いを超える「特別の」寄与であること、そして無償またはそれに近い形であったこと、一定期間続けてきたことです。数日だけ手伝った、報酬をもらって世話をした、という場合は認められにくくなります。

継続した期間について、法律上「何年以上」といった明確な決まりはありません。期間の長さだけでなく、どれだけ手厚く、どのように貢献したかを総合的にみて判断されます。だからこそ、いつからどんな介護をどれくらい行ったかを、日記や記録、費用の領収書として残しておくことが、あとで主張を支える材料になります。

決め方には順番があります。まずは相続人どうしの話し合い(遺産分割協議)で、寄与分を含めた分け方を決めるのが基本です。話し合いがまとまらない、あるいは話し合いそのものが難しいときは、家庭裁判所に「寄与分を定める処分」の調停や審判を申し立てます。この申し立ては遺産分割の手続きとセットで行う必要があり、寄与分だけを切り離して決めることはできません。いずれにせよ、寄与分は自分から主張しなければ、なかったものとして分割が進んでしまいます。

介護の労を、黙って終わらせないために

長年の介護や家業の支えは、黙っていては相続の取り分に反映されません。実の子なら寄与分、相続人でない親族なら特別寄与料と、立場によって使う制度も期限も変わります。まずは介護の記録を手元に整え、相続人どうしの話し合いの場で切り出すことから始めましょう。話がまとまらないときは、家庭裁判所や専門家の力を借りる道もあります。

《編集部》
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執筆者: 編集部 編集部

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