
お盆で実家に集まると、自然と親の家や預貯金の話になることがあります。「うちは仲がいいから大丈夫」と思っていても、いざ相続が始まると意見が食い違い、話が止まってしまうケースは少なくありません。トラブルの多くは、進め方や期限を知らないことから起こります。よくある揉めごとの型と、家族で揉めないための順番を整理します。
お盆に出やすい「相続の話」は他人事ではない
お盆やお正月に親族が顔を合わせると、実家の今後や親の財産について話題が出ることがあります。普段は離れて暮らす家族が集まる貴重な機会だからこそ、相続の相談を切り出しやすい時期でもあります。
相続をめぐるトラブルは、財産が多い家庭に限った話ではありません。主な遺産が分けにくい実家の不動産である場合や、相続人どうしの連絡が取りにくい場合など、どの家庭でも起こりえます。「うちは財産が少ないから関係ない」と考えず、身近な問題として早めに備えておくことが安心につながります。
よくある相続トラブルの4つの型
相続の揉めごとには、繰り返し見られるいくつかの型があります。自分の家庭に当てはまりそうなものがあるかを、先に知っておくと備えやすくなります。

とくに多いのが、主な遺産が不動産で現金が少ないケースです。家は物理的に分けられないため、誰が引き継ぐか、他の相続人にどう埋め合わせるかで意見が割れやすくなります。親が元気なうちに、家をどうしたいかを聞いておくだけでも、後の話し合いはずいぶん進めやすくなります。
揉めないための正しい進め方
トラブルを避けるには、進め方の順番を知っておくことが役立ちます。相続が起きたら、まず誰が相続人になるかを戸籍で確定します。次に、預貯金や不動産などのプラスの財産と、借入などのマイナスの財産を洗い出します。そのうえで、相続人全員で分け方を話し合う遺産分割協議を行い、まとまった内容を遺産分割協議書にまとめます。最後に、不動産の名義変更である相続登記や、必要な場合の相続税の申告へと進みます。
この順番のうち、特に見落とされやすいのが相続人の確定です。あとから面識のない相続人が判明すると、まとまりかけた話し合いを最初からやり直すことにもなりかねません。早い段階で戸籍をたどり、相続人の範囲をはっきりさせておくことが、つまずきを防ぐ第一歩になります。
見落としやすい期限とお金の目安
相続には、知っておきたい期限とお金の目安があります。まず期限として押さえたいのが、相続登記の申請義務化です。2024年4月1日から、相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務づけられました。正当な理由なくこれを怠ると、10万円以下の過料の対象になります。
この義務化は、施行日より前に発生した相続にもさかのぼって適用されます。施行日前に相続した不動産でまだ相続登記をしていない場合は、原則として2027年3月31日まで(2024年4月1日以降に所有権を取得したことを知った場合は、その日から3年以内)に申請することとされていますので、心当たりのある方は早めに確認しておくと安心です。
お金の面では、相続税の基礎控除が目安になります。基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算し、正味の遺産額がこの範囲に収まれば相続税はかかりません。相続人の人数によって控除額が変わりますので、自分の家庭の法定相続人が何人になるかを確認しておくと見通しが立ちます。
こじれる前に頼りたい相談先
話し合いだけで解決が難しいときは、早めに専門家や公的な窓口を頼るのが安心です。財産の分け方や遺留分など法律面の争いは弁護士、不動産の名義変更である相続登記は司法書士、相続税の申告や試算は税理士が、それぞれ主な相談先になります。
相続人どうしの話し合いがどうしてもまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。調停では、中立の立場の調停委員が双方の事情を聞き、解決に向けた話し合いを手助けします。それでもまとまらないときは、裁判官が判断する審判へと進みます。どの窓口も、こじれてからよりも早い段階で相談するほど、選べる選択肢が多くなります。
お盆は家族で話し始める絶好の機会
相続トラブルの多くは、仲の悪さよりも、進め方や期限を知らないことから生まれます。まず相続人を確定し、財産を洗い出し、全員で話し合うという順番を押さえておけば、多くのつまずきは避けられます。相続登記の原則3年以内の申請や、相続税の基礎控除といった目安も、早めに知っておくほど慌てずに済みます。
お盆は家族がそろう数少ない機会です。相続の結論を出す必要はありませんが、「財産はどこにあるのか」「家はどうしたいのか」といった基本的な情報を共有するだけでも、将来のトラブルを減らすことにつながります。


