
子どもを連れて家を出たものの、来月の生活費のあてがありません。別居でまず直面するのはお金の問題です。ただ、家計が別々になっても、夫婦には生活費を分け合う義務が残ります。何がどこまで含まれ、金額はどう決まり、話合いがまとまらないときはどこへ持ち込むのか。動き出す前に確かめておきましょう。
実家に戻った30代の女性が、家を出た直後につまずいたこと
「家を出る決心はついたのに、来月の保育料をどう払うかで手が止まってしまって。」未就学の子どもを連れて実家に身を寄せた、パート勤めの30代の女性です。夫の収入で回していた家計から離れたとたん、手元のお金は一気に心もとなくなりました。
押さえておきたいのが、別居しても夫婦であることは変わらない点です。民法は夫婦に同居し、互いに協力し扶助する義務を課したうえで(752条)、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」と定めています(760条)。これが婚姻費用で、別居中の生活費も含まれます。
裁判所はその中身を、衣食住の費用のほか出産費、医療費、未成熟子の養育費、教育費、相当の交際費まで含む、およそ夫婦が生活していくために必要な費用と説明しています。
金額の目安になるのは家庭裁判所の算定表
気になるのが、いくら請求できるのかという点です。条文にあるのは「資産、収入その他一切の事情」までで、計算式は書かれていません。実務で目安に使われるのが、家庭裁判所が公表する算定表です。現行版は令和元年12月23日公表で、夫婦のみ、子ども1人から3人まで、子の年齢(0~14歳と15歳以上)で表が分かれています。
受け取る側と支払う側の年収を突き合わせて読みますが、当てはめる収入は働き方で拾う場所が違います。

読み取れるのは標準的な月額で、しかも子ども全員分の合計です。調停や審判では、この目安を参照しつつ個別の事情も踏まえて検討されます。別居に至った経緯も「一切の事情」として判断に影響することがあります。
決め方は話合いが先、まとまらなければ家庭裁判所へ
まず動くのは当事者同士の話合いです。金額と支払方法を決め、そのとおり支払われているなら、裁判所の手続は要りません。
まとまらないとき、相手が応じず話合いそのものができないときは、家庭裁判所へ婚姻費用の分担を定める調停または審判を申し立てます。申立先は相手方の住所地の家庭裁判所か、当事者が合意で定めた家庭裁判所です。費用は収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手で、郵便料は裁判所ごとに異なります。
そろえる書類は、申立書とその写し、夫婦の戸籍謄本、源泉徴収票や確定申告書の写しといった収入関係の資料、事情説明書、進行に関する照会回答書です。調停でまとまらず不成立となれば、そのまま審判に移り、裁判官が一切の事情を考慮して判断します。
動き出すタイミングが結果を左右する
婚姻費用は婚姻が続いている間の話で、離婚が成立すればそこで終わり、以後は養育費として決め直します。いつの分から分担するかも話合いや審判で決まるため、別居を決めたら請求の意思を早く形にしておきましょう。進め方は家庭裁判所の案内で確認でき、暮らしの立て直しは自治体の相談窓口、争いが大きければ弁護士に相談を。


