
移住先の暮らしを思い描く時間は楽しいものですが、日本側で置いていく手続きは意外に見落とされます。住民票、健康保険、年金、税金。それぞれ届け出る先も考え方も違います。出発前に何を済ませておくか、順に確かめておきましょう。
出国の日が近づいてから慌てた40代の会社員
「渡航の3週間前になって、年金と税金の話が残っていることに気づいたんです。」海外の現地法人へ移ることになった40代の会社員は、住まいの引き払いと荷造りに追われるうちに、役所へ行く日を後回しにしていました。転出届は出せばよいと分かっていたものの、それ以外に何が要るのかを整理できていなかったといいます。
手続きは、住民票を軸に考えると見通しが立ちます。住民票を日本から抜くと、そこにひもづいていた制度の扱いが連鎖して変わるからです。
住民票を抜くと、国民健康保険と年金の立場が変わる
まず住民票です。住民基本台帳法24条は、転出をする者はあらかじめ、氏名、転出先、転出の予定年月日を市町村長に届け出なければならないと定めています。転入の届出が「14日以内」と期限で書かれているのに対し、転出は「あらかじめ」と書かれているのが特徴です。
住所がなくなると、国民健康保険は資格を喪失します。国民健康保険法8条1項は、都道府県の区域内に住所を有しなくなった日の翌日から資格を喪失すると定めています。ただし、国民健康保険の脱退時などは14日以内に市町村の国民健康保険の窓口へ関係書類を提出する必要があります。
年金は逆に、選ぶ余地があります。日本年金機構は、海外に居住することになった方は国民年金の強制加入被保険者ではなくなるものの、海外に居住する日本人で20歳以上65歳未満の方は、国民年金に任意加入できる(厚生年金保険、共済組合等加入者を除く)と案内しています。

税金は「出国の日まで」という期限がある
4つのうち、出国の日までという区切りがはっきり書かれているのが所得税です。国税庁は、国内に住所を有しない、又は有しないこととなる場合に、申告書の提出その他国税に関する事項を処理する必要のために納税管理人を選任する手続きを案内しています。提出時期は、納税管理人を定めたとき又は出国の日までとされています。提出先は納税地を所轄する税務署長です。
出国の日という区切りがあるため、渡航直前に思い出すと間に合わないおそれがあります。日本に不動産の賃料収入が残る人など、出国後も申告が必要な人ほど、早めに決めておきたいところです。
住民票を抜く日から逆算する
海外へ長く住むときの手続きは、住民票を抜く日を起点に並べると迷いません。転出届はあらかじめ届け出るもので、国民健康保険は住所がなくなった日の翌日に資格が切れます。ただし、脱退時などは14日以内に市町村窓口へ関係書類を提出する必要があります。国民年金は対象者なら任意加入という選択肢が残り、所得税は納税管理人の届出を出国の日までに済ませます。渡航が決まったら、まず市区町村の窓口と税務署に行く日を先に押さえておきましょう。


