
夫婦で買ったマンション、親子で出し合って建てた家。名義が複数人になっている不動産は、何をするにも全員の判子が要ると身構えがちです。ただ民法は、したいことの中身ごとに必要な同意を分けています。自分のやりたいことがどの段に入るのかを、条文に当てて確かめてみてください。
同意の集め方は3つの段に分かれている

いちばん軽いのが保存行為です。雨漏りの補修のように現状を保つ行為は、ほかの共有者に相談しなくても1人で進められます。252条5項がこれを認めています。
真ん中が管理行為で、252条1項は「持分の価格に従い、その過半数で決する」と定めています。頭数ではなく持分の割合で数える点が要注意です。3人で持っていても、1人が持分の3分の2を持っていればその人の意向で決まります。
いちばん重いのが変更です。251条1項は、他の共有者の同意がなければ共有物に変更を加えられないとしたうえで、括弧書きで「その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの」を除いています。この括弧書きは2023年4月1日に施行された改正で入った部分で、法務省の資料も、共有物につき軽微な変更は全員の同意が不要で、持分の過半数で決定できると説明しています。
過半数で貸せる期間には上限がある

252条4項は、過半数で設定できる賃借権などの期間をこのように区切っています。上限を超える契約を結ぶなら、全員の同意が必要になります。空き家を借家として貸したい場合も、民法上は「建物の賃借権等は3年を超えないもの」という枠に入るかを見ます。
ただし、建物賃貸借には借地借家法による更新や定期建物賃貸借の規定があるため、「3年以内」と書けば常に足りるわけではありません。期間満了で確実に終わる貸し方にしたいなら、定期建物賃貸借など契約類型も確認してください。
費用の面も条文に定めがあります。253条1項は各共有者が持分に応じて管理の費用を負担すると定め、同条2項は、1年以内にその義務を果たさない共有者がいるときは、ほかの共有者が相当の償金を支払ってその持分を取得できるとしています。
連絡が取れない共有者がいるときの道
同意を集めようにも、居場所の分からない共有者がいると話が止まります。この場合に備えて、変更については251条2項、管理については252条2項が裁判所の裁判という道を用意しています。共有者が他の共有者を知ることができない、またはその所在を知ることができない場合は、変更・管理のいずれでも裁判所を通す道があります。期間を決めて催告しても賛否を明らかにしない共有者がいる場合に、ほかの共有者の持分の価格の過半数で管理事項を決められるのは252条2項の内容です。
それでも先に進まないときは、256条1項が各共有者にいつでも分割を請求する権利を与えています。ただし、5年を超えない期間であれば、分割をしない契約をすることもできます。協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、258条により裁判所へ請求でき、現物を分ける方法、誰かが持分を取得して代金を払う方法、競売による方法が定められています。
やりたいことを条文の段に当てる
共有名義でも、動き出せる場面は思ったより多くあります。まず自分のやりたいことが保存、管理、変更のどの段にあたるかを見極め、次に持分の割合を登記事項証明書で確かめてください。段と割合が分かれば、誰に声をかければ足りるのかが決まります。全員に頭を下げに行く前に、そこを整理するほうが早く進みます。


