「約款を読みましょう」という記事(該当記事)の続編になりますが、今回は保険の申込手続きについてです。数多い書類の意味、署名や捺印、等、あれは一体どういうことをしているのか、皆さんは申込時に自分がしていることの意味をご存じでしょうか。今回は「生命保険の申込までの舞台裏」と称して、保険相談から申込手続きまでの舞台裏を解説します。

ネットから「保険相談」に申込むと…

 では、仮に皆さんがインターネットで「保険 無料相談」と検索して、「保険無料相談」をしているサイトの一つで、保険相談を申し込んだと想定しましょう。この「保険無料相談」をしているのは、リーズ会社といって、保険の集客を保険募集人に代わって代行している「情報商材」を扱う会社のことで、一時期は約50社程度がひしめき合っていたとも言われています。

 ここで扱う「情報商材」とは、例えば「30代ご夫婦が保険の見直し相談をしたい」、「子供が生まれる40代ご夫婦で学資保険を検討している」、「50代独身男性が公的年金だけでは心配で上乗せを検討している」等、具体的に皆さんの相談案件のことになります。

 彼らはそういった不特定多数の「保険相談」をネットを活用したり、アナログながら昔ながらの集客手法を用いて、あちこちから「保険相談」案件を集めてきます。そして、この案件を一件いくらというかたちで(一件数万円程度)、保険募集人の一部がリーズ会社から購入しています。

 そして、その案件を購入した保険募集人から皆さんの元へ電話がかかってくる訳です。基本的に保険会社一社専属の生保レディや直販営業(プランナーとかコンサルタントとか呼ばれている人たち)は、複数社の保険商品を比較推奨販売できないため、殆どのリーズ会社では登録できません。そのため、リーズ会社に登録しているは、保険会社を複数社扱う乗合代理店に勤務する保険募集人ということになります。

 保険相談のコンサルティングの仕方には、各募集人のやり方があるので、ここでは詳しくは述べませんが、保険業法等の一部を改正する法律が、今年5月23日に成立、30日に公布されました。そのため、今後は保険コンサルティングから保険募集手続きまで、今までは「やってはいけない」禁止行為が規制されていたのとは異なり、今後は「しなければならない」観点からの規制がかかります。

 つまり、より消費者保護視点となり、保険コンサルティングの定型化へ一歩踏み出した感があります。(※文末に参考リンク)

個々人に合わせた「保険設計」へ

 さて、コンサルティングの結果、複数社の保険商品が検討価値ありということになったとします。そこで募集人はコンサルティングした内容をもとに具体的な「保険設計」をしていきます。

 具体的には、取扱い保険会社から募集人に対して提供される業務系ソフト(保険設計ツール)を用いて、個別設計をしていくことになります。

 保険は他の金融商品とは異なり、個々の顧客にあわせてのカスタマイズ、いわゆる「設計」が必要となります。保険会社はあくまで保険商品のネタ(素材)を提供しているだけで、個々の顧客に対して、その顧客の特性や要望に合わせて調理(部材組立)をするのは、実際は保険募集人ということになります。

 これは一戸建ての家を買う場合と同じで、ハウスメーカーの家のカタログに載っているのはあくまでその家の最大公約数的な商品特性であり、柱・壁の材質や工法、耐震性能等は同じでも、実際に出来上がる家は、外観デザインや間取り、設備も異なり、建築設計士が個々の顧客の要望にあわせて設計していくのとまったく同じです。

 このコンサルティングによる保険設計は、外資系生保や損保系生保の複数の保険商品を組み合わせて提案するためには必須の手法ですが、公的保障の上乗せが基本である民間保険である以上、公的保障に対する知識が欠かせないのは当然と言えます。

保険申込手続きの流れ

 さて、保険募集人のFPから数社の保険設計書を提示され、それぞれの提案の特長やデメリットを聞いたうえで、最終的にはどの生命保険に申込するか皆さん自身が決めたとします(保険募集人が決めてしまっては、勿論ダメです)。

 次に具体的な申込手続きに入るわけですが、代理店の規模の大小は関係なく、保険募集人は以下の順番で保険申込手続きに進む筈です(以下は、私の推奨する手順)。

1. 加入意思の確認

 申込に際して、生命保険募集人は、保険設計書の詳細説明を再度し、申込者(契約者・被保険者)の加入意思を確認します。加入意思の確認がとれたら、具体的な申込手続きに進みますが、契約者が70歳以上の高齢者の場合は親族の同席をお願いすることが必要となる場合があります(特に外貨建てや変額保険等の特定保険契約の場合で、株や投資信託同等の市場リスクを有する、金融商品取引法の行為規制の一部が準用される生命保険のこと)。

2. 重要事項の説明を受ける

 まず、契約に際しての重要事項(「契約概要」・「注意喚起情報」)の説明を受けましょう。クーリングオフが可能な契約なのかとか、告知の重要性、保険金が支払われないのはどういう場合か、自殺免責等の免責事項、生命保険会社が破綻した場合どうなるか、等の重要事項の説明を受けます。

 「契約概要」や「注意喚起情報」は、昨今では「ご契約のしおり・約款」冊子に別冊子として挟み込まれているか、冒頭に合本されています。どんな内容か覚えていない方は、約款を取り出し、一度ご確認ください。

 尚、生命保険募集人がこの説明を怠った場合、保険業法300条違反となり罰せられます。

3. 商品概要の説明を受ける

 「ご契約のしおり・約款」をめくりながら、商品概要の説明を受けます。そのとき「契約のしおり・約款」の読み方、どこにどんなことが書いてあるかぐらいは、保険募集人から説明を受け、後々分かるようにしておくのがポイントです。

4. 「意向確認書」の確認と自著

 次に、契約者に「意向確認書」の確認と自著をして頂きます。これは申込者(保険会社が引き受け後、「契約者」となる方)が、保険契約しようとする保険商品が、自分のニーズに合致しているかどうかを確認した証に、契約締結前にそのことを保険会社へ伝えることを意味しています。

 つまり、この保険申込は自分のニーズにあっているので申し込みたいという意思の表明をしてもらう訳です。この「意向確認書」の設問で一つでも「NO」があれば(つまり、ニーズに合致しない)、そこで保険申込は中断となり、再度ふりだしに戻り、コンサルティングが必要になります。

5. 「申込書」への署名・捺印

 「申込書」への署名・捺印。契約者・被保険者自身の署名・捺印が必要です。家族であったとしても、契約者・被保険者以外の第三者の代筆は不可です。なぜなら、第三者の代筆が可能ならば、詐欺や犯罪に利用されかねない商品性があるからです。保険会社には筆跡鑑定人がいますから、代筆はすぐばれます。

 それに申込書類は普通はマイクロフィルム化されて保管されますから、保険金請求時に代筆がばれてしまえば、保険金はまず支払われないでしょう。つまり、契約違反と言うことになる訳です。当然これを見過ごしていた保険募集人担当者は罰せられます。

 尚、「契約概要・注意喚起情報」や「ご契約のしおり・約款」等の重要書類の説明を受けたときに、「申込書」もしくは別紙に署名か捺印をします。これは、これら書類の説明を受けた上で受領したことを意味します。

6. 「告知書」の設問に回答する

 「告知書」にて、保険会社が質問する設問に正確にありのままに答えます。「告知書」は同じ保険種類でも各社各様の質問内容です。「告知書」書面に書かれている告知方法の注意点は記入前に確実に目を通しておいてください。

 また記入後は写しを保管して下さい。告知すべきかどうか判断に迷う場合や告知後に告知もれに気付いた場合、告知に関して保険募集人の説明や言動に疑問が生じた場合等は、各社「告知お問い合わせ窓口」というフリー・ダイアルがあるので、そこへ連絡してください。

 保険募集人は契約媒介者であり、告知事項の受領権はありません。保険契約の当事者は、保険会社と申込人(契約者・被保険者)となりますので、その点はお忘れなく。

 保険種類や保険金額によっては、「告知書」による告知だけではなく、健康診断書や人間ドックの写しを提出する必要があったり、医師による診査や告知が必要な場合があります。尚、告知者は保険会社から見れば、加入条件がある程度等しい申込者を選択する手段でもあり、これを専門用語では「逆選択」と言います。

7. 第一回保険料の支払い手続き

 担当者が現金領収することもあれば、保険会社指定の口座への振込や、初回口座振替、デビットカードやクレジットカードによる領収もあります。いずれにしろ、第一回保険料の支払いは、保険契約に対する加入意思表示の一つでもありますので、契約者ご本人が行う必要があります。振込の場合、銀行やコンビニATMに行くのが面倒だからと言って、保険募集人に立替をお願いして、振り込ませたりするのはダメです。

 以上、生命保険申込手続きのプロセスを解説しましたが、何となくお分かりいただけたでしょうか。昨今ではIT技術の進歩により、タブレット端末で申込手続きをクローズできるようになった保険会社もありますが、上記で必要となる書類が簡略化されたり、省略されたわけではありません

 ネット生保の申込手続きや通販による申込も基本的には同じような書類を画面上や書面上で、契約者本人なり被保険者本人が内容確認・チェック(通販は署名・捺印)しなければなりません。また、自動車保険や火災保険等の損害保険の申込手続きも基本はいっしょですが、異なる部分もあります。

契約内容を把握しておく大切さ 保険金の請求漏れや時効にも注意

 それと、保険は保険金請求してみて、初めて商品として使われるわけですが、その保険金請求のトリガーは誰でもない契約当事者である契約者なり被保険者、または保険金受取人です。ですから、この3者は少なくともその契約がどういうものなのか知ってなければいけません。

 というのも、保険には保険金請求に時効があり、例えば、保険金を請求できるのにし忘れた場合、通常、保険金請求権は3年間請求が無ければ消滅します。大半の保険会社がそれを約款に記載しています。

 これはあくまで原則で、あとからでも請求はできるかも知れませんが、保険会社は約款の時効権の項をたてに、保険金支払いを拒否することは可能でしょう。ですから、保険会社は「保険金の請求もれありませんか?」と「契約内容のお知らせ」に印刷したり、別紙を入れたりして、注意を促している訳です。

 「請求の時効」。こういうことも申し込み時点でちゃんと保険募集人から聞いてないといけません。あと、ネットや通販で加入する場合は、「契約のしおり・約款」等で重要事項を自分が確認しておかないといけないのは当然と言えます。

 対面募集で加入した方であっても、「契約のしおり・約款」は、加入後でも折に触れて見ておきましょう。どういうときに保険金が支払われ、どういうときに支払われないか規定されています。不明点あれば担当者に確認しましょう。

 例えば、医療保険に加入してるのに、帝王切開後、保険金がでるとは思わず、保険金請求してなかったとか(正常分娩とは異なり、異常分娩は「治療」の扱いとなることから、通常は入院も手術も保険金給付対象です)、入院しないと保険金がでないと誤解して、外来で皮膚のちょっとした切開手術を受けたのに保険金請求しなかったとか(手術給付金は入院中手術と外来手術で給付倍率を変えている商品もあります)、喧嘩をして相手を殴り、指先を複雑骨折してメスを使った手術をしたが、原因が原因だから請求しなかったとか(手足指の手術は手術給付金がでる保険商品とでない保険商品があります)、生命保険に加入していたお父さんがリストラを悩んだ挙句、自殺したが、3年間の自殺免責を本人含め家族の誰もが知らなかったとか(「注意喚起情報」に記載されていいますが、自殺免責期間は保険会社によって異なる場合あります)、等、実際に見聞きしたケースは枚挙に暇ありません。

 保険は契約です。署名や捺印する書類はどれも契約書類です。そのことを申込時点で忘れないよう心がけて下さい。書面に了知や自覚がないまま、署名や捺印をすることは避けてください。

 それと年に一回は保険会社から「契約内容のお知らせ」が届くはずです。こんなことをする業界、あまりないですよね。例えば、自動車を買ったとして、「貴方はこういう車を買いました」なんて通知、毎年来ないですよね。家を買ってもそうですよね。つまり、それだけ保険会社も契約者が自身の契約について無知にならないように、常にリマインダーをかけている訳です。ですから、年に一度くらいは、約款を紐解くなり、担当者を呼びつけて自身の保険契約の再確認をするなりしてみてはどうでしょうか。(執筆者:伊藤 克己)