ご存知の通り、日本は実質ゼロ金利の状態が15年以上続いている。

 ふりかえってみると、日本銀行が誘導する政策金利(ごく短期の銀行間の資金貸し借りの際に適用される金利)が事実上ゼロ金利となったのは1999年2月のことであり、その後2000年8月に一旦、ゼロ金利が解除されたもののその後景気が回復しなかったため、2001年3月にゼロ金利政策を再開するとともに、量的金融緩和の導入に踏み切ったのである。

 要は、金利をゼロ水準にしても、一向に資金需要が高まらないため、市中に出回るお金の量自体を増やす「量的」金融緩和政策を導入し、現在に至っているということだ。

各国の長期金利は過去最低水準 提案したい資産運用とは

 先般、スイス中央銀行が、自国通貨であるスイスフランの対ユーロ為替レートを1ユーロ=1.2スイスフラン水準に維持するユーロ買い・フラン売りの為替介入の継続を断念したため、スイスフランがユーロはじめ主要各国の通貨に対して暴騰した。この報道は欧州為替市場を中心に世界の金融市場に激震を与えた。

 このスイスフランショックの影響を受けた日本の個人投資家もいたのではないだろうか。かつての日本同様、自国通貨高と長期のデフレ懸念に苦しんでいるスイスは、為替介入とともにマイナス金利を導入しても事態の解決には程遠い状況が続いている。ギリシャをはじめとする南欧諸国の債務問題に端を発したユーロ危機発生から、ユーロ圏の投資家が金融資産を安全通貨と目されるスイスフラン建て資産へ移す大きな流れが、スイスフラン高の背景にあるのは容易に想像ができる。

 スイスの例は極端かもしれないが、先進主要国はどこも低インフレ状態に悩んでおり、ユーロ圏に至ってはデフレ状態に陥っているため、各国の長期金利(10年国債の利回り)は過去最低水準にまで下がっている。主要先進国の長期金利(日本時間1月27日における市場実勢利回り)は以下の通りだ。

●日本10年国債 0.261%
●ドイツ10年国債 0.396%
●英国10年国債 1.505%
●イタリア10年国債 1.577%
●米国10年国債 1.820%
●豪州10年国債 2.574%

 日本の長期金利0.2%台(1/20取引市場では、新発10年物利回りが一時0.2%を割れた)が突出して低いが、ドイツ10年国債利回り0.4%割れという低さも驚きである。また、欧州債務問題の中心国の一つだったイタリア国債利回りが、米国債よりも利回りが低いことは信用力の観点からみれば異常な低金利だと言えるだろう。豪州10年国債利回りの2.5%台は先進国の中では比較的高いといえるだろうが、同国はかつて長期金利が6~7%の高金利国であったことからすると隔世の感がある。

 先進主要各国の長期金利が軒並み歴史的低水準となっている中、国債(先進国のソブリン債券を指し、新興国の国債や低格付け社債等は含めない)で運用しても金利収入で得られるリターンは非常に低く投資妙味がないため、リスクを取って株式や新興国債券、さらには不動産(上場不動産投信・リート)へ積極的に投資資金を振り向けていくべきだと考える個人投資家は多いと思われ、まさに「貯蓄から投資へ」というこれまでの日本政府の方針にも沿っているといえるだろう。

 さらには、GPIFによる公的年金積立金運用における運用方針の変更(国債中心の運用から、国内外の株式への投資比率を高める運用方針への変更)も、このリスク選好の流れに合致している。

 しかしながら、長期金利が過去最低水準まで下がった状況下であり、また日本を含め先進各国がインフレ目標2%程度を掲げている中にあっても、原油価格をはじめとする資源価格は大幅な下落を続けており、いまだ底打ち感が出ていない。つまり、政府や中央銀行は低インフレ(ディスインフレ)状態から脱却を図り、安定的かつ適切なインフレ経済へ戻す政策を推し進めているにも関わらず、賃金は総じて上昇せず、原油価格下落という消費生活にとって大きな追い風が吹いても、いっこうに需要が伸びてこない。つまり個人は消費を増やそうとしないし、企業も投資を積極的に増やそうとしないのだ。

 そこで、筆者はあえてリスク選好に逆行した資金運用を提案したい

 アベノミクスのもと、日銀は量的金融緩和政策を継続しているが、人為的な円安誘導から輸入物価は上昇(コストプッシュ・インフレ)している反面、原油価格の大幅下落の影響もあり、今年4月の消費税増税の影響を除けば、物価上昇は1%前後の水準に過ぎない。よって、現時点では、資産運用に際し、インフレ傾向が継続すると想定し、株式等のリスク性商品へ積極的に投資をするのは得策ではないかもしれない。

 さらに、昨年来各国でテロが頻発しており、ウクライナや中東エリア・イスラム国での地政学的リスクはいまだ燻っており、ひとたび再燃すれば、投資環境は一気にリスク回避モードにもなりかねないことを踏まえると、積極的な投資を継続するよりは、当面は資産を保全するスタンスをとることが賢明だ。少なくとも投資金額全体の2~3割、できれば5割程度を安全性の高い金融商品で資金の保全を図りたい。

資産保全に向いている金融商品とは

 では、資産保全する手段としてどの金融商品が良いだろうか?

 筆者は過去のFPコラム「子どもが生まれたら、学資保険に加入!」はもう時代遅れ?」において、10年物個人向け国債を活用した教育資金準備を提案している。その理由は、適用利率は長期金利に連動するため、足もとでは、2月発行の10年物変動金利型の利率が、年率0.20%(税込)で低いものの、かりに将来長期金利が上昇することになれば、それに連動して、適用利率も上がるため、インフレリスク(金利上昇にともなう)にある程度は対応できる。購入後1年経てば、中途換金ができ元本割れもない。資金をほぼゼロ金利の普通預金にそのまま寝かせておくよりは、十分ましだといえよう。

 尚、今年から個人投資家が購入可能になった「物価連動国債」もインフレ対策に有効であるが、現時点では一部の証券会社(みずほ証券・SMBC日興証券)で1000万円からの販売を富裕層向けに想定しているのみなので、一般の個人がより小口で購入できるようになるのは来年以降になりそうだ。

 物価連動国債とは、元金額が物価(消費者物価指数=コアCPI)の動きに連動して増減する国債であり、インフレによる資産の目減りを防げることが最大のメリットであるが、インフレ予想を反映して発行時の価格が著しく高かった場合、償還時にそれまで受け取った利息収入を含めても投資元本を下回る、つまり元本割れが起きることがあることには注意が必要である。

日本で最も金利の高い定期預金

 最後に、実質ゼロ金利状態の日本において、最も金利水準の高い定期預金を提供している金融機関について紹介しておこう。それは、SBJ銀行である。詳細はHPを参照してもらいたいが、SBJ銀行は、Shinhan Bank Japanの略で、韓国の大手金融機関である新韓銀行を中核とする新韓金融グループの日本現地法人だ。このSBJ銀行が、5年物で金利0.55%という好条件の定期預金を提供しているのだ。

 大手銀行ではないし、そもそも外国の銀行であるため知名度もないので、信用力に問題があるのでは? と不安に思われるかもしれないが、預金額1000万円までなら日本のペイオフ制度の対象になり、万一この銀行が破たんした場合でも、元本とその利息は国によって保障される。日本の長期金利が年率0.26%程度である今、その2倍以上の0.55%の利回りが得られる5年物定期預金は、当面のお金の預け先、すなわち資金の保全手段として十分検討に値するだろう。(執筆者:完山 芳男)