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高頻度取引「HFT」の実態と、個人投資家の取れる「予防策」とは

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高頻度取引「HFT」の実態と、個人投資家の取れる「予防策」とは

昨年2018年まで続いた右肩上がりの株式相場、世界中の中央銀行が金利を下げリーマンショックからの景気回復を支え、適温相場(ゴルディロックス相場)と呼ばれていました

しかし日経平均が2万4,000円を超えた昨年10月と12月、今年2月と数日で1,000円を超えるような急下落が発生

取引が10日間もできないGW明けには、トランプ米国大統領のツイッターから急下落が起きましたよね。

フラッシュクラッシュが起きる原因は

この乱高下(フラッシュクラッシュ)が起きる原因はさまざまな理由が挙げられますが、そもそも株の売り買いを行っている主体は誰なのでしょうか?

数分の間で乱高下するのは、売買高の5~7割を占めると言われる高頻度取引「HFT」なしには語れません

ここでは個人投資家では絶対に勝てないHFT取引の現状を知ることで、個人投資家が取りうる予防策をご紹介します。

市況を自動的に判断しながらナノ秒単位でポジションを持つHFT取引の実態

2000年代初頭から始まり今も進化しているHFT取引は、100%儲かる取引とも言われています

その理由は「取引単位の速さ」と「自動的に判断するアルゴリズム」であり、良い面と悪い面が指摘されています。

HFTの意味と驚異的な速さ

HFTとは「High Frequency Trading」の略で、日本語では高頻度取引と訳されています

では高頻度取引とは、どれぐらいの速さを指すのでしょうか?

現在売買を行う単位は秒 → ミリ秒 → ナノ秒となり、「0.000000001秒(10億分の1)」がナノ秒です。

最適化された通信システム、高い演算能力を持つコンピューターを用いて取引執行にかかる時間を極限まで短縮し、個人では絶対にできない取引スピードで利益を出すのです。

その取引を執行する理屈、つまり売買するロジックは人間が考え、アルゴリズムと呼ばれる計算手段や処理手段をコンピューターで24時間、世界中の市場で実行しているのです。

大きなトレンドが発生すると売り(買い)の連鎖が起きる

小口の注文で、少しの価格差から利益を出し、短時間に大量の取引を繰り返すことで利益を積み増す手法がHFT取引です。

ただしテロが発生したり、VIPが死亡したりというネガティブワードが一定量拡散すると、それを感知した売りのアルゴリズムが実行され、急下落が発生する原因にもなっています。

あるアルゴリズムが作動し、一定以上に相場が動いた場合は別のアルゴリズムが作動して自動的に売り(買い)の注文が執行され、どんどん世界中に連鎖して適正価格から離れていくことで起きるのが乱高下(フラッシュックラッシュ)です

HFTとは高頻度取引のこと

HFT取引の功罪

市場が乱高下するといつも犯人のように取り上げられるHFT取引ですが、時間差による市場の歪みや情報格差が縮まり価格変動の幅が平時は小さくなることが知られています。

やはり問題が指摘されるのは、乱高下のスピードが速いことに尽きます

それでは日本では、どんな規制があるのでしょうか?

日本におけるHFT取引の規制について

東証ではアローヘッド(ArrowHead)という取引システムを導入しており、HFT取引業者を積極的に誘致しています。

HFT取引業者はシステム投資に始まり売買アルゴリズム、ネットワーク、データベース、セキュリティなどさまざまな分野において高度な知識と大規模なインフラも整える必要があり、誰もが参入できるものではありません。

2017年の改正金融商品取引法には、高速取引に関する規制として以下の3つが柱として盛り込まれました。

1. 高速取引をする投資家の登録制
2. 高速取引をする投資家への取引記録の作成と保存の義務付け
3. 証券会社や取引所による無登録投資家からの高速注文の取次を禁止し、証券会社が名義人となって代理で売買することを禁止

また今年11月をメドに、東証ではHFT取引に新たなルール改定を予定しています。

現在は連続約定気配の値段で板寄せが成立すると通常取引に戻る仕組みですが、今回の見直しでは、個別株の取引で更新値幅の2倍を超える範囲へ価格が急変動すると、例外なく1分間取引を成立させないようにすることを検討しているようです。

これにより乱高下のスピードが、制限されると見込まれます

個人投資家が取りうる予防策とは

個人投資家が取りうる予防策

投資のプロと個人投資家との格差は、情報量に加え取引手法のスピードにも広がってきました。

では個人投資家が取りうる予防策、フラッシュクラッシュが発生した後の対応策とは、何ができるのでしょうか。

個人投資家が取りうる予防策

既に株式運用(または投資信託)資産を保有している場合の予防策としては、次の対策が考えられます。

売り指値は入れておく

取引時間中にいつも売買注文ができるとは限らないので、個別株を保有している場合は売り指値を入れておきましょう

買値で入れておくことも一つですが、20%下がった株価で継続して指値を入れておくこともできます

しかも毎日手続きする必要はなく、数日間先まで指値を有効にしておけば、手間も省けるでしょう。

投資信託は上場ETFで購入しておく

銀行等で購入できる投資信託は非上場につき、日経225連動型であっても終値でしか取引ができません

その場合、日中の乱高下に対処できず、指値で売り(買い)もできません。

1つの商品で分散投資ができることが投資信託のメリットですが、非上場型の場合は指値ができず取引時間中の取引ができないことはデメリットですね。

その対処法として、同じまたはそれに近い投資手法を取っている上場投資信託「ETF」で購入すれば、個別株と同じく売買が可能です。

ETFファンドの時価総額や日々の売買高が小さいものには気を付ける必要がありますが、国内に上場しているETFは226本ありますので、投資対象が一致するものは多いと思います。


フラッシュクラッシュが発生した時の対応策

次に株式相場の急激な乱高下、特に急下落を起こすフラッシュクラッシュが発生した後の対応策を考えましょう

ここでは個別銘柄ではなく、日経225等の株価指数を考えます。

急下落した場合、まずは一呼吸置いてから投資を始めましょう。

下がり切った底のタイミングは、その時には分からないものです。

2番底もあり、後からそうだったと判断されるからです。

そこで個人投資家には、底から上昇した「底付近」で投資することをお勧めします

そのコツは、「一呼吸置く」ことです。

その一呼吸置く時間に、いくつか確認しておきたい株式そのものの価格以外の項目があり、それらを総合的に判断して(または専門家に相談して)投資を始めて欲しいのです。

納得できる投資につながります

(1) VIX指数が下がったか?

急下落が発生した時は、VIX指数が20を超えて上昇します。

実際の株価とは逆の動きをし、その指数が下がり出さないことには底を打ったとは言い難い状況です

VIX指数自体は米国株価を反映した指数ですが、日本株式市場との連動性は高く、日本株式相場を反映した日経VIを参考にすることも一つです。

(2) ラッセル2000は上がったか?

これも米国小型株の株価を反映した指数ですが、米国(それに連動する日本)株式相場の先行指数として、参考にしましょう

大型株より乱高下が大きく、日本にはまだトラックレコードがある小型株指数が存在しないので、ラッセル2000が上昇することも底を見分ける指数の一つです

(3) 為替の円高は止まっているか?

世界的に株価が下げ止まったとしても、為替が円高になっていると日本株式だけ上昇しないことがあります

絶対的な為替水準ではなく、円高傾向が止まったかを確認する必要があります

(1)(2)(3)ともに1日だけの動きではなく、急下落した後を数日間観察する必要があります

この「一呼吸」置くことが、納得できる投資につながるでしょう。

(1)(2)については、こちらも参考にしてください。


以上(執筆者:中野 徹)

《中野 徹》
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中野 徹

1970年生まれ。大学卒業後、銀行・証券・保険と金融3業態全てにおいて勤務経験を持ち、実務経験を踏まえた客観的なアドバイスに強みを持つ。お金にまつわる専門知識を分かりやすく、販売側の都合を排除したポイントを解説していきます。趣味は料理とアメリカンフットボール観戦。 <保有資格>プライベートバンカー(シニア) 寄稿者にメッセージを送る

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