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まだまだ存在する「過払い金」 時効消滅のタイミング、10年超えていても請求できる意外なケースも紹介

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まだまだ存在する「過払い金」 時効消滅のタイミング、10年超えていても請求できる意外なケースも紹介

過払い金返還請求のブームが過ぎてずいぶんたち、今ではもう過払い金は存在しないと思っている方も多いのではないでしょうか。

たしかに、以前は大量に発生していた過払い金も、2010年に改正貸金業法が完全施行されたことによって新たな過払い金は発生しなくなっています

しかし、過去に発生したにもかかわらず、請求されないまま眠っている過払い金はまだまだ存在します

過去に借入れをしたことがある方は、本当に過払い金が残っていないのかを1度確認してみてはいかがでしょうか。

まだ請求できる

まだまだ巨額が眠っている過払い金

まずは、毎年どれくらいの過払い金が(元)債務者に返還されているのかをデータで見てみましょう。

消費者金融業者やクレジットカード会社など貸金業を営む業者の多くが加入している「日本貸金業協会」が現在公表しているデータを集計すると、以下のようになります。

参考元:日本貸金業協会

年度    利息返還金
2010年度   8,628億円
2011年度  7,262億円
2012年度   4,698億円
2013年度  3,591億円
2014年度  3,256億円
2015年度   2,990億円
2016年度   2,316億円
2017年度   2,275億円
2018年度   1,568億円(予測)

年々減少しているのは事実ですが、それでもいまだに年間1,500億円以上の過払い金が全国で返還されています

利息返還金」というのは実際に返還された過払い金のことです。

返還されないまでも元本に充当された「過払い利息」はこの表に含まれていません。

さらに、過払い金が発生している人のうち、実際に請求して返還を受ける人は一部だと考えられるので、まだまだ巨額の過払い金が眠っていることがわかります

過払い金がなくならない理由

過払い金は10年で時効消滅することをご存じの方も多いでしょう。

法定金利を超える金利で利息を払いすぎることによって過払い金が発生し、発生した過払い金は業者の不当利得として返還を請求ができます

この返還請求権は10年で消滅時効にかかります。

貸金業者の金利の変遷

ヤミ金などの違法業者や悪質業者は別として、現在では正規の貸金業者は法定金利内でしか貸付を行っていないため、新たな過払い金は発生しなくなっています。

しかし、多くの貸金業者は2000年ころまでは約40%の金利で、2006年ころまでは29.2%の金利で貸付を行っていました

利息制限法の上限金利は20%なので、多額の過払い金が発生していたのです。

とろこが、2006年に法定金利を超える利息の返済を原則として無効とする最高裁判決が出たことから、その後は多くの貸金業者が貸付金利を法定金利内に引き下げました。

2010年には刑事罰を定める出資法の上限金利が利息制限法と同じ20%に引き下げられたため、それ以降は法定金利を超える金利で貸付を行う正規の業者は完全になくなりました

それからすでに年数が経過しているので、今ではもう過払い金はほとんど残っていないと考える人が多いのです。

しかし、すべての過払い金が時効消滅するまでにはまだまだ時間が残っています

時効期間がスタートするのは最後の取引のときから

過払い金が時効消滅するのは「発生したとき」から10年ではありません。

「最後の取引」(正確には、その翌日)から10年です。

たとえば、2006年より前から借金をして返済を続けていた人が2010年に完済した場合、2019年の時点ではまだ過払い金が時効消滅していないので返還を請求ができます。

このようなケースに該当する人がどんどん減ってきているのも事実ですが、よくみれば返還請求できる過払い金が残っている人はもっとたくさんいます

過払い金の返還を請求できる意外なケース

まだ請求できることもあるんだね

いっけん過払い金が時効消滅したようにみえても、実は法的に返還請求が可能なケースもあります

完済後に再度借入をした場合

例えば2006年にそれまでの借金をいったん完済して、2008年に再度借り入れて取引を続けているようなケースがあります。

このような場合は、前の取引と現在の取引を一連のものとして、2006年までに発生していた過払い金の返還を請求できるのが原則です。

ただし、貸金業者は2つの取引は別であり、過払い金はすでに時効消滅していると主張してきます。

そのため、このケースで過払い金を取り戻すためには裁判が必要になることが多いです。

完済から再度の借入までの空白期間が長かったり、再度の借入の際に新たな基本契約をしていると、裁判でも取引の連続性が否定される可能性が高くなります。

このような場合は弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

時効消滅した過払い金を現在の借金と相殺する場合

すでに時効消滅した過払い金が蘇るケースもあります。

民法第508条では、時効消滅した債権でも消滅する前に相殺できる状態になっていた債務がある場合には、時効消滅後でも相殺できると定められています。

例えば、2006年にそれまでの借金を完済し、2015年に同じ業者から再度借り入れたとします。

2006年までに発生していた過払い金は2016年に時効を迎えましたが、その時点では新たな借金と相殺が可能な状態になっています

この場合は、現時点において2016年時点の借入元本と過払い金を相殺できます

その結果、現在の借金の元本が減りますし、その後の返済状況によってはあらたに過払い金が発生する可能性もあります。

2006年以前に借入をしたことがある方は要確認

2010年以降の借入では過払い金は発生しませんが、それ以前、特に2006年以前に借入をしたことが1度でもあれば、まだ返還請求できる過払い金が残っている可能性があります。

該当する方は、1度確認してみることをおすすめします。(執筆者:川端 克成)

《川端 克成》
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川端 克成

約15年間弁護士をしていましたが、人の悩みは法律だけでは解決できないことに悩み続けて、辞めてしまいました。現在はフリーライターとして活躍中です。読んで役に立ち、元気が出るライティングをモットーに、法律問題に限らず幅広いジャンルで執筆しています。これまでの人生では、ずいぶん遠回りをしてきました。高校卒業後は工場などで働いて二部大学に入り、大学卒業後も工場で働いて司法試験の勉強をしました。弁護士を辞めた後も工場で働きながらライティングの修行を重ねました。そんな人生経験にも基づいて、優しい心を執筆を通じてお伝えするのが理想です。 寄稿者にメッセージを送る

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