国税庁は、令和2年分の路線価等に対する補正対応についての見解を公表しました。
本記事では路線価の補正が適用されるケースと、国税庁が公表した補正対応の内容を解説します。

目次
路線価に対して補正対応が行われるケース
路線価は1月1日を評価地点とし、相続税・贈与税の際に使用する路線価格を全国各地の道路に設定しています。
各年分の路線価は、その年の1月1日から12月31日までに発生した相続税・贈与税を計算する際に使用し、同年中の時価額が変動した地域でも、路線価の金額が変わることはありません。
しかし台風や地震などにより、時価に大きな影響を及ぼす状況が起こった場合、対象地域に土地を保有している人の評価額を低くするために、調整率などの補正処理を行うことがあります。
たとえば令和元年の台風19号により被災した地域の土地を評価する際は、路線価に調整率を乗じた金額が相続税・贈与税の評価額となります。
令和2年1月から6月までの相続・贈与に対する補正はなし
令和2年は新型コロナウイルスの影響で、経済が大きく落ち込みました。
しかし国税庁は、令和2年分の1月から6月までの路線価について、調整率などによる補正を行わないこととしました。
参照:国税庁(pdf)
令和2年になってから地価は下がっているものの、大幅な地価の下落は確認できていないことが、路線価の補正を行わない理由です。
したがって令和2年の相続税・贈与税で土地を評価する際は、すで公表されている路線価(倍率表)をそのまま用います。
令和2年7月から12月の対応は未定
令和2年1月から6月についての対応は公表されました。
令和2年7月から12月の相続・贈与が行われた際の路線価については、今後の地価変動などの状況を判断し、あらためてお知らせするとしています。
相続税の申告期限は、亡くなった日の翌日から10か月以内、贈与税は翌年2月1日から3月15日までに申告しなければなりません。
申告期限までに路線価の補正が決定すれば、その内容に基づいて税金の計算をします。
一方で期限内に申告書を提出し、その後補正対応が公表された際は、評価額の再計算を行い、更正の請求書を提出することで納め過ぎた税金の還付を受けます。

甚大な被害が発生した場合は国税庁の対応に注目すること
令和2年は新型コロナウイルス以外にも、九州地方では7月の豪雨により甚大な被害を受けた地域がありました。
特に被害が大きかった「特定地域」に所在する土地・建物等においては、評価額の減免措置を受けられます。
また相続税・贈与税の申告期限が延長になるケースもありますので、詳細は国税庁ホームページ、またはお近くの税務署へご相談ください。
参照:国税庁(pdf)
災害や大規模な地価変動が起きた場合、国税庁は調整率などで評価額を補正するケースがあります。
補正や救済措置の存在を知らないと、余分に税金を納めることになりますので、申告する前に最新情報をご確認ください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)