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期間限定で年金が増える「在職定時改定」を利用できる人とできない人

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期間限定で年金が増える「在職定時改定」を利用できる人とできない人

国民年金から支給される老齢基礎年金を65歳から受給するには、次のような期間などを合計したものが、原則として10年以上必要になります。


・ 国民年金の保険料を納付した期間

・ 国民年金の保険料の納付を免除、または納付猶予された期間(学生納付特例の期間も含む)

・ 厚生年金保険に加入した期間

・ 国民年金の第3号被保険者(厚生年金保険に加入している方の被扶養配偶者のうち、20歳以上60歳未満の方)であった期間


このような老齢基礎年金の受給要件を満たした方のうち、厚生年金保険に加入した期間が1か月以上ある方は、厚生年金保険から支給される老齢厚生年金を65歳から受給できます。

前者の老齢基礎年金は2060歳までの40年の間に、公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料の未納期間や、国民年金の保険料の納付を免除された期間などが一度もないと、満額を受給できるのです。

この老齢基礎年金の満額は、勤務先から受け取った給与がいくらであっても、2022年度は一律で77万7,800円(1か月あたり6万4,816円)になります。

一方で後者の老齢厚生年金は、勤務先から受け取った給与(月給、賞与)の平均額や、厚生年金保険に加入した月数で金額が決まるため、人によって大きな違いがあるのです。

具体的な金額を知りたい場合には、ねんきん定期便(毎年誕生月に送付される)や、ねんきんネット(パソコンやスマホなどから自分の年金記録を調べられるサービス)を、利用してみるのが良いと思います。

「在職定時改定」を利用できる人とできない人

厚生年金保険には70歳になるまで加入する

国民年金に強制加入するのは60歳までになりますが、老齢基礎年金の受給要件を満たせない方や、満額の老齢基礎年金を受給できない方のために、60歳以降に任意加入できる制度があります。

それに対して厚生年金保険は60歳で終わりではなく、例えば次のような方は、70歳になるまで強制加入します

(A) 正社員として働いている方

(B) 4分の3基準を満たしている方

1週間の所定労働時間(契約上の労働時間)および、1か月の所定労働日数(契約上の労働日数)が、同じ事業所で同様の業務に従事している正社員の4分の3以上あると、4分の3基準を満たします。

(C) 201610月に始まった新基準を満たしている方

パートやアルバイトとして働いている方は、従来は4分の3基準を満たした時だけ、厚生年金保険に加入しておりました。

しかし201610月から新基準が始まったので、次のような新基準の要件をすべて満たした時にも、厚生年金保険に加入するのです。

1週間の所定労働時間(契約上の労働時間)が、20時間以上である

・ 賃金の月額(残業代、通期手当、賞与などは含まない)が、8万8,000円以上である

2か月超に渡って雇用される見込みがある

・ 学生ではない(通信制、夜間、定時制の学生などは加入対象になる)

・ 従業員数が101人以上(202410月以降は51人以上)の会社、または社会保険(健康保険、厚生年金保険)への加入に対して労使の合意がある、従業員数が101人未満の会社で働いている

60歳以降も厚生年金保険に加入している場合、60歳未満と同じ方式で算出した厚生年金保険の保険料を、引き続き納付する必要があります。

厚生年金保険の保険料は原則として、給与の金額に比例して増えていくため、給与の金額が高いほど負担が重くなるのです。

これをデメリットに感じる方がいるかもしれませんが、給与の金額が高いほど、また厚生年金保険に加入した月数が長いほど、老齢厚生年金の金額が増えるため、リタイアした後の収入が安定するのです。

老齢厚生年金が年に1回増える在職定時改定

厚生年金保険から支給される老齢厚生年金を受給できるのは、上記のように原則として65歳からになります。

このタイミングで支給される老齢厚生年金は、65歳までに勤務先から受け取った給与(月給、賞与)の平均額や、65歳までに厚生年金保険に加入した月数によって、金額が決まるのです。

65歳で老齢厚生年金の受給を始めた後も、厚生年金保険に加入している場合には、その月数や給与の金額の分だけ、65歳の時点よりも老齢厚生年金は増えます。

ただ老齢厚生年金が増えるのは、次のようなタイミングになるため、65歳以降も退職しないで働き続けた場合には、70歳になるまで金額が増えるのを、待つ必要があったのです。


・ 退職して1か月が経過した時

70歳になった時


こういった改定の仕組みが、就労意欲の低下などを引き起こしていたので、20224月に在職定時改定という制度が開始されました。

そのため基準日(毎年91日)に、厚生年金保険に加入している方については、前年9月から当年8月までの加入記録を加えて、老齢厚生年金の金額を再計算するのです。

また再計算した後の老齢厚生年金は、当年10月(実際に金額が変わるのは10月分が支給される12月)から支給されます。

これにより6570歳までの期間限定になりますが、特に手続きをしなくても、老齢厚生年金が年に1回増えるため、70歳になるのを待つ必要がなくなったのです。

在職定時改定を利用できる人とできない人の具体例

在職定時改定を利用できるのは、6570歳までの間に厚生年金保険に加入している人になるため、就業中であっても加入していない人は、在職定時改定を利用できません。

また次のような人についても、在職定時改定を利用できないため、対策を考える必要があるのです。

(1) 老齢年金の受給開始を繰下げしている人

原則として65歳から支給される老齢年金(老齢基礎年金、老齢厚生年金)の受給開始を、1か月繰下げ(先延ばし)するごとに、これらの金額が0.7%の割合で増えていく、繰下げ受給という制度があります。

65歳以降も年金以外の収入を確保できる方の中には、繰下げできる年齢の上限(現在は75歳)を目標にして、繰下げ受給を利用する方がいるかもしれません。

こういった時に注意すべきなのは、老齢年金の受給が始まるまでの待機期間中は老齢厚生年金を受給していないため、厚生年金保険に加入している場合であっても、在職定時改定を利用できない点です。

ただ老齢基礎年金だけを繰下げして、老齢厚生年金は65歳から受給すれば、待機期間中でも在職定時改定を利用できるため、片方だけを繰下げするというのは、対策のひとつになると思います。

(2) 老齢厚生年金の全部が支給停止になっている人

60歳以降も厚生年金保険に加入している場合、「月給+直近1年の賞与の総額÷12」と、「老齢厚生年金(加給年金などは含まない)÷12」の合計が、47万円を超えてしまうと、老齢厚生年金の一部が支給停止になります。

また両者の合計が47万円を超えるほど、支給停止になる老齢厚生年金は増えていき、最終的には老齢厚生年金の全部が支給停止になります。

こののような仕組みによって、老齢厚生年金の全部が支給停止になっている人は、在職定時改定によって老齢厚生年金が増えても、その増額分を受給できないので、実質的に在職定時改定を利用できません。

また在職定時改定によって老齢厚生年金が増えることで、6570歳までの間に47万円を、超えてしまう場合があります。

こういった点を不安に感じる方は、ねんきんネットを活用して、老齢厚生年金が支給停止にならない給与の目安額を試算し、その範囲内で働くという対策を、実施してみるのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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