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各年の状況に応じて「年末調整、確定申告、住民税申告」を使い分けよう

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各年の状況に応じて「年末調整、確定申告、住民税申告」を使い分けよう

例えば個人事業主については、1月~12月の事業収入の合計額が確定したら、その翌年の2月~3月頃に税務署などで、確定申告(自分で所得税を計算したうえで、その金額を納付する制度)を実施します。

この後に年収などのデータは、税務署から個人事業主が住んでいる市区町村に送られ、それを元にして各市区町村は、1年分の住民税を計算します。

つまり確定申告が実施されると市区町村は、年収などのデータを把握できるため、事業収入があった年の翌年3月頃までに、住民税申告(市区町村に前年の年収などを申告する制度)を実施する必要はないのです。

また住民税の計算結果は毎年6月頃に、個人事業主に送付されるため、その金額を納付書などによって、一括または分割で納付します。

一方で会社員(正社員、パート、アルバイトなど)については、1月~12月の給与収入の合計額が確定するのを待つのではなく、勤務先は1月以降に支払う給与から、概算の所得税を控除します。

また年内最後の給与が支払われる段階になると、1月~12月の給与収入の合計額が確定するため、勤務先は1年分の所得税を計算するのです。

この1年分の所得税と、1月以降の給与から控除した概算の所得税の合計額を比較し、前者の方が多かったら勤務先は、追加で控除を実施します。

一方で後者の方が多かったら勤務先は、取り過ぎた分を従業員に還付します。

このように勤務先が従業員に代わって、所得税の過不足を精算する手続きが年末調整であり、これを受けた方は原則として、確定申告を実施する必要はありません。

年末調整が終わった後に勤務先は、住民税の計算に必要な年収などのデータを、各従業員が住んでいる市区町村に送るため、原則として住民税申告も実施する必要はありません。

また住民税の計算結果は年末調整が実施された年の、翌年5月頃に勤務先に送付され、それを元にして勤務先は給与から住民税を控除するため、毎年6月になると控除額が変わるのです。

年末調整、確定申告、住民税申告」を使い分けよう

確定申告を実施するとお得になる3つのケース

会社員に対して課税される所得税は、次のような手順で計算する場合が多いのです。

(A) 1月~12月の給与収入の合計額-給与所得控除=給与所得

(B) 給与所得-所得控除の合計額=課税所得

(C) 課税所得×税率-税額控除の合計額=所得税

こういった仕組みのため、例えば次のような状況が生じた時には、その翌年以降に確定申告を実施すると、お得になる可能性があります。

(1) 住宅ローン控除の対象になる住宅を購入した

所定の要件を満たす住宅を購入した時には、(C) に記載した税額控除の一種である、住宅ローン控除を受けられます。

この住民ローン控除は年末調整で受けられますが、控除を受ける最初の年だけは確定申告が必須になるのです。

(2) 支払った医療費が高額になった

一定額以上の医療費を支払った時には、 (B) に記載した所得控除の一種である、医療費控除を受けられます。

また扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除などの所得控除は、年末調整で受けられますが、医療費控除は確定申告を実施しないと受けられないため、この手続きが必要になるのです。

(3) 年末調整の書類に記入漏れがあった

その他の所得控除としては、生命保険の保険料を支払った時に受けられる、生命保険料控除があります。

またiDeCo(個人型の確定拠出年金)の掛金を拠出した時に受けられる、小規模企業共済等掛金控除があります。

これらの所得控除は年末調整で受けられますが、勤務先に提出した年末調整の書類に記入漏れがあって、控除を受けられなかった場合には、確定申告で控除を受けるのです。

以上のようになりますが、こういった税額控除や所得控除を受けると、給与から控除された所得税が還付されるため、お得になるというわけです。

また所得税の還付を受けるための確定申告(還付申告)の期限は、これらが生じた年の翌年1月1日から5年になるため、混雑している2月~3月頃に実施しなくても良いのです。

確定申告を実施する必要がある3つのケース

会社員は原則として確定申告の必要がないのですが、例えば次のような状況が生じた時には、その翌年に確定申告を実施する必要があります。

(1) 年収が2,000万円を超えた

1月~12月の給与収入の合計額が2,000万円を超えると、年末調整はできないからです。

(2) 副業の所得が年間で20万円を超えた

雇用されない内職などの副業の場合、1月~12月の収入の合計額から、その収入を得るために使った必要経費を差し引いたものが、年間の所得(雑所得)になります。

こういった副業による給与所得以外の所得が、年間で20万円を超えた場合には、確定申告を実施する必要があります。

(3) 生命保険の満期保険金や解約返戻金を受け取った

一時金で受け取った生命保険の満期保険金や解約返戻金は、一時所得として取り扱われる場合が多いのです。

また満期保険金や解約返戻金から、これらを得るために支払った保険料と、特別控除額の50万円を差し引いたものが、一時所得になるのです。

ただ (2) に記載したように、給与所得以外の所得が20万円以下なら、確定申告の必要はありません

そのため満期保険金や解約返戻金から、支払った保険料を差し引いた段階で70万円以下の場合、ここから特別控除額の50万円を差し引くと20万円以下になるため、確定申告を実施しなくても良いのです。

なお配偶者控除の対象になっている妻が、満期保険金や解約返戻金を受けった場合、その年だけは妻の所得が上がるため、一時所得の金額によっては、夫が配偶者控除を受けられない場合があります。

もし要件を満たしていないのに、夫が年末調整で配偶者控除を受けていた場合には、確定申告で夫の所得などを訂正する必要があるのです。

以上のようになりますが、 (2) や (3) に記載したように、給与所得以外の所得が20万円を超えなければ、確定申告の必要はありません。

しかし20万円を超えなくても、住民税申告は必要になるため、所得税と住民税でルールが違うのです。

住民税申告だけは実施した方が良いケース

年の途中で会社などを退職し、その年の12月まで無職だった場合、年末調整を受けていないため、自分で確定申告を実施して、所得税の過不足を精算する必要があります。

退職した年の翌年も無職だった場合には、収入を得ていないため、確定申告の必要はなくなります。

また住民税申告の必要もないのですが、配偶者の扶養に入っている場合などを除き、住民税申告だけは実施した方が良いのです。

その理由としては市区町村が、収入の状況などを把握できないため、次のような恩恵を受けられない場合があるからです。

・ 国民健康保険の減免、国民年金の免除

・ 住民税非課税世帯を対象にした給付金(商品券)

・ 保育所などの保育料の減免

・ 高額療養費制度の自己負担限度額(負担する医療費の上限)の引き下げ

無職の場合には住民税申告の際に、収入などを記入する必要がないため、書類の記入は簡単に済むと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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