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返済中の住宅ローン変動金利が「1%」上昇したら返済額はどのくらい増えるか

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返済中の住宅ローン変動金利が「1%」上昇したら返済額はどのくらい増えるか

「住宅ローン変動金利金利が1%上昇したら返済はどのくらい増える?」

「返済中の住宅ローン変動金利が1%上昇したら、返済はどのくらい増える?」

という疑問に対し、シミュレーションを用いて銀行員が解説します。

銀行のホームページなどにもシミュレーションコーナーがあり、誰でも簡単に自分の住宅ローン返済や金利などを試算できます。

シミュレーションの使い方にも、注意点がいくつかあるので紹介します。

返済中の住宅ローン変動金利が 1%上昇したら

返済増加をシミュレーションで考える

前提条件

変動金利・年0.345%で3,000万円・35年返済(ボーナス増額なし)で借りた
5年後に変動金利が1%上昇して1.345%となり、最終回まで返済した

<シミュレーション結果>(単位/円)

初回から5年間の返済額金利上昇後の返済額総返済額支払利息総額
A・5年後に+1%75,83887,58336,080,0416,080,041
B・最終回まで0.35%75,83875,83831,851,7731,851,773
増加額(A―B)11,4754,228,2684,228,268

参照:日銀「知るぽると」

増加額は+1万1,475円で、金利が1%上昇すると1万円以上返済が増加するという結果になりました。

なおこのシミュレーション結果には注意すべき点があり、返済額の増加についても後ほど説明を加えますが、ここでは金利が1%上昇すれば返済も増加するとして、まとめておきます。

金利が1%上昇した場合の利息の差額は、シミュレーションで、5年後に0.345%から1.345%へと1%金利が上昇すると支払利息は4百万円以上だと分かります。

6,080,041-1,851,773=4,228,268

「未払い利息」が起こる可能性はあるのか?

最近目にする「住宅ローンの金利が上がったら?」という記事に多く見受けられるのが、この「未払い利息」という言葉です。

未払利息とは変動金利の住宅ローンにおいて、金利が上昇を続けるなどの理由からローン返済の最終回で金利を支払いきれずに一括して大きな金額を支払う必要があるというものです。

「半年ごとに0.3%ずつ金利上昇が続いたら」

「変動金利の2年目に1%、その後毎年1%ずつ上昇すると仮定」

という前提で、最終回にまとめて金利を支払わなければならないという結論を出しているシミュレーションを見かけることがあります。

しかし「半年ごとに0.3%ずつ」「毎年1%ずつ」など、設定に無理があると銀行員の私は感じています。

現実としてこうした金利水準は考えにくく、実際に金利上昇があった場合でも、金利上昇を加味して最終回返済日まで均等に返済できる返済額にするのが実情です。

一般に銀行公式HPなどに記載されているシミュレーションは、 このように金利上昇後でも未払利息が発生しないように設計されているものが多いようです。

銀行側も、このような急変動がある場合には、随時未払利息が発生しないように顧客に対して、返済途中でローンの組み直しを提案することが考えられます。

変動金利は防御機能があるので「すぐに返済は増えない」

ところで住宅ローンの変動金利には、金利が急速に上昇したときに備えた防御機能があります。
防御機能は

1. 返済額5年間固定方式

2. 返済額125%ルール

という2つです。

1. 返済額5年間固定方式

通常銀行の変動金利住宅ローンでは年2回金利を見直すことになっており、初回返済額から5年間、その次も5年間、その次もというように、たとえ途中で金利の上下動があったとしても、5年間は返済額が変わらないというものです。

住宅ローンの返済額とは「元金」と「利息」の合計であり、住宅ローンで一般的な返済方式である元利均等返済は、元金と利息の合計が毎回同じになるように設計されています

従って5年間返済額は変わらないとは言え、実際には返済額に占める利息の割合が変わっているので、実感として返済額が変わらないだけであり、水面下では金利が上昇していることには変わりありません。

2. 返済額125%ルール

防御機能である返済額125%ルールとは、5年ごとの見直し(上記)によって返済額が以前より増加する場合でも、直前の125%つまり1.25倍を超えないように制限するという仕組みです。

例えば最初の5年間の返済額が10万円の人なら、金利が急上昇した場合でも次の5年間の返済額は12万5,000円、 つまり125%が上限となります。

しかしこちらも、返済額の上限の設定しているだけであり金利は変更になっている点に注意が必要です。

住宅ローンには二つの防御機能があるため、今回のテーマのように金利が1%上がったとしてもすぐに返済額が増加することはありません。

具体的に例示するなら、最初の5年間は金利がどれだけ上昇しても返済額が上がらず、次の5年間に移る際、金利上昇を加味して返済額を組み直した場合でも最初の125%、1.25倍以上には返済額が増えません

前述のシミュレーションは金利上昇によって返済がどのくらい影響を受けるのか?と言う10を理解しやすくするためシンプルに計算したものです。

住宅ローンシミュレーションの限界について

住宅ローンのシミュレーションにはある程度の限界があります。

例えば借り換えの提案で使うシミュレーションでは、 変動金利で今よりも低金利に切り替えをして最終回まで金利が変わらなかったら、という前提条件で支払金利の軽減されるメリットが計算されています。

変動金利なら借り換えしても金利が最終回まで変わらないということはなく、 このことは今より何パーセント金利が上がったら利息の総支払額がいくらになるのか?という試算も、同様に前提条件に無理があることは否定できません。

変動金利の防御機能などもあり、新規でローンを借りる人が返済額を計算したり、自分で他の銀行に借り換えた場合をシミュレーションしたりする場合にも、 一定の限界はあるということを理解した上で考えるようにしてください。

金利上昇局面に備えて準備すること、注意すべきこと

金利上昇をにらんで他への借り換えを考える人がいるかもしれません。

たとえばいま変動金利の人が他の銀行に変動金利で借り換えをしても、金利が上昇して返済が増えるというリスクは何も変わりません

変わるのは目先の金利であって、金利動向によっては借り換えをしたメリットが吹っ飛んでしまうこともあり得ます。

借り換えが駄目だということではなく、目先の数千円でも返済が減ることにメリットを感じ、変動金利のリスクは変わらないとご自身で受け止められるならいいと思います。

安心を求めて固定金利に変更を考える人もいるでしょう。

固定金利にすれば間違いなく金利は高くなり、当然返済額も増えます

この一点だけをとらえれば、まだ変動金利は上昇していないのに、「自分で金利を引き上げた」ことになります。

固定金利に変えたことで得る安心感と、毎回の返済額増加を見比べて納得できるかを慎重に考えるべきだと思います。

特に銀行で住宅ローン商品によっては、変動金利から固定金利に切り替えることができないものもあります。

切り替えたあとには変動金利に戻すことが不可能な物もありますので、ご自身の住宅ローンの内容についてはしっかり確認をしておいてください。

「固定金利の協力セールス」には注意

新築や建売など、住宅ローンをこれから組むことを考えている人は「固定金利の協力セールス」には注意が必要です。

ハウスメーカーの担当者や建売物件などの不動産営業マン、あるいはローンを取り扱う銀行員も同じですが、金利上昇が不安になる局面ではどうしても固定金利を強く押す担当者が出てきます。

銀行の場合は、安心感を前面に打ち出しローンを獲得したいという意識が働く場合が多く、本来銀行員が住宅ローン金利を誘導するようなことはあってはならないのですが、現場ではこのような場面もあり得ます。

いっぽうの営業マンの人たちの場合は、その時その時住宅ローンも「売れ筋」を 推してくるもので、 こちらも固定金利の強力セールスには気をつけたいところです。

この点は「金利が上昇してしまうので、早く家を建てましょう!」という宣伝文句も同じで、いずれにせよ住宅ローンの金利はご自身で考え、選択すべきものです。

そのために、溢れる情報の中から自分に有益なものを見つけ出し、しっかりと決断するようにしてください。(執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)

《加藤 隆二》
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執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二 加藤 隆二

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。 寄稿者にメッセージを送る

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