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市場に大きな影響力を持つGPIF
私たちが支払っている国民年金、厚生年金の保険料はそのまま金庫にしまわれているわけではなく、年金積立金として「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)という組織が運用しています。
10月末、GPIFは運用資産の構成(ポートフォリオあるいはアセットアロケーション)を変更する案を発表しました。GPIFとは、積立金の運用額が100兆円を超える世界最大規模の機関投資家(組織)です。
資産構成の変更は以下のようになります。
国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%、短期資産5%
変更後:
国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%
これを見て、「自分の公的年金は株でも運用されていたんだ!」ということを初めて知る人も多いかと思います。「株なんか危なくてやらない!」と決めている人も、実際はすでに間接的に株に投資しているのです。
これまでGPIFは運用先の大半を「国内債券」にあて(平成16年3月末は68%ありました)、比較的低リスク、低リターンの運用をしてきました。それでも2007年以降の金融危機の際には8%近いマイナスを計上しています。
日本の年金制度は構造的に欠陥があるので、収支を補うために、積立金の運用でよりリスクを取りリターンも狙っていくというやり方に変える必要性も指摘されてきました。また、国内債券に60%集中していることもよろしくないという声もありました。
今回の発表は、金融資産運用している人にとっては後押し材料と考えられています。株式の比率が25%になるまでGPIFが今後さらに株を買い続けるという理屈から、しばらくは株高になることが予想されるからです。(実際にはもう株買いは始まっていると考えられます。株価が高い水準で買うようなことはしないので、下がった時に買って下支えをしてくれると期待されています。)
実際に直接GPIFが株価を上げなくても、今後買い増してくれる期待感からほかの投資家が買いやすい環境になっていることが意味のあることなのです。また、外国債券、外国株式の割合も高めるため今後円を売って外貨を購入することになります。実際、今回の発表後には大きく円安に動き、株価も上昇しました。
もうすでに上がってしまっているのでは?
この発表前時点で、アベノミクスが始まって以来すでに株高、円安になってしまっているのでは? というのはありますが、GPIFが株を買い終えてしまったわけではありません。一時的に高値を警戒する水準ではありますが、下がってもそれは一時的な調整で、今後GPIFが下支えして株高が続く可能性は十分にあるということです。
以前も書きましたが、株価の心理的な水準として日経平均で20,000円という水準はよく言われる数値です。株価はまだ17,000円台なので上昇余地は十分と思います。資産運用をなんとなくやってみたいけど踏み出せなかったという人、まだ間に合う可能性は十分あると思います。
上がるまで待つ
さあ株を買った、と思ったら天変地異や戦争が起こって株価大暴落という可能性も十分にあります。ただその場合は、大きな調整が入ったと考えてむしろ買い増すチャンスとみなすこともできます。その場合日経平均20,000円に達するまでの時間は伸びますが、相場は波なのですからもとの水準に戻り、(時間はかかるかもしれませんが)2万円台達成の希望をかなえてくれるものと思います。
2万円台の大台に乗せ、周りの人がみんな株をやり始めた時点では、短期的に結果を出したい人には高値づかみになってしまうかもしれません。(ビギナーズラックのような経験をはじめにしておくと精神衛生上よいという観点からの話です。長期的に運用をしようと考える場合は、いつ始めてもいいのですが。)
かくいう私も、ほとんど運用に回しているので、リーマンショック時には半分にまで減りました(泣)。しかし今はもとの水準に戻っており、今後金融危機が訪れてもそれでも運用はずっと続けるつもりです。時間が味方をしてくれるので。まだ始めていない人、「まずは始める」ことが大事です。(執筆者:日比野 岳)