こんにちは! 国際フィナンシャルコンサルタントの荒川 雄一です。さて、今回は、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立を含め、着々と世界経済への影響力を増してきている中国の外貨準備について、みて行きましょう。
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中国の外貨準備とその影響
さて新興国の中でも、もっとも影響力があるのは、言うまでもなく中国です。その中国においても、外貨準備に“異変”がおきています。
今まで、自国通貨「人民元」の急騰を防ぐために、中国は大量の米ドルを中心とする外貨を増やしてきました。そして、その大量な資金で購入していたのが、米国債です。
それまで米国債の保有高で圧倒的1位だった日本を抜いて、2008年8月からは「世界一の米国債保有国」となりました。結果、米国も中国に一目置かざるを得なくなったわけですが。
しかし、中国はここにきて、方向転換を図りました。
昨年秋口から6カ月連続で米国債を売却し、今年2月には154億ドル(約1.85兆円)の米国債を放出しました。その結果、中国の米国債保有額は1兆2237億ドルとなり、1兆2244億ドルを保有する日本が、首位に返り咲くこととなったのです。
「中国を抜いて、1位に返り咲いた!」
ということ自体は、何となく気持ちがよい気もしますが、経済面においては、楽観視できる状況ではありません。
今回、中国が“米ドル(国債)離れ”を決意したのには、大きく2つ理由があるのではないかと考えています。
中国が米国債を売却した理由
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一つ目は、
中国の経済成長率に陰りが見え始めたことです。
一時は、2ケタ成長を誇っていた中国経済も、このところ7%を維持するのも難しい状況となってきました。この中国の景気減速により、中国国内からは、資金流出が起こり始めています。
中国は、元の急落を防ぐために、3月に“米ドルを売って元を買う”といった、今までとは全く逆の介入を行いました。
もう一つの理由は、従来のような「アメリカ(米ドル)依存体質から脱却したい」という思惑が考えられます。逆にいえば、基軸通貨米ドルに対して、元の国際化を推し進めたいという“強い意志”の表れと言えます。
その流れが、今回注目を浴びているアジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立であると共に、400億ドルの資金で創設したシルクロード基金と言えるでしょう。そして、それらの資金源は、まさに今まで中国が蓄えてきた米国債を活用しているのです。
投資という観点からみれば、今後、米国内の金利上昇により、下落する可能性がある米国債を売って、これからますます成長余力のあるアジア各国のインフラ投資へ資金を回すといった「投資戦略の転換」を図ったといえます。
そして、投資による資金回収を行うだけではなく、アジア内での確固たるイニシアティブを獲得することによって、最終的に“人民元の国際化”を果たしたいという中国の思惑が強く感じられるのです。
中国の「米国債保有合戦の離脱!?」により、首位に返り咲いた日本ですが、最近の安倍首相の言動を見ていると、経済面だけでなく、政治・外交・防衛面においても、米国に急接近を図っています。まさに、「運命共同体」を目指しているようです。
米国から距離を置いて自立(覇権)を目指す中国と、米国と運命を共にしようとする日本。果たしてどちらの選択が正しいのか。個人的には、米国に同調するだけではなく、“日本らしい道”を探すべきだと思うのですが。
外貨準備から、色々なことが見えてきます。今後も、ウォッチしていきたいと思います。(執筆者:荒川 雄一)